「僕とあたしの未来 47」



気づくといつも同じ電車に乗ってる君。名前すら知らない。
ただ、バッグには苗字らしきイニシャルのチャームがぶら下がってる。
S・・・さ、し、す、せ、そ。うぅん、名前の方かもしれない。
それにそのチャーム、彼女からのプレゼントだったりしたらどうしよう?
なんて思うと胸が苦しくなる。

時々友達らしき男の子が、途中から乗ってきてしゃべってる。

「ゆうべMステ見た?」「部活で遅くなったけど、ギリギリ見れた」
「AKB出てたな」「おまえ誰推しだったっけ?」「特にいねぇよ」
 
ごくごくふつーの男の子の会話。

友達と一緒じゃない時は、たいていひとりで音楽聴いてる。
女の子と一緒じゃないのが、あたしの唯一の救いなんだ。

どこの高校なんだろう?制服見て学校調べられるほど、
記憶力よくないし。(-_-;)


ある日たまたま君が、帰りも同じ電車に乗ってきた。同じ駅で降り、
同じ出口から出た。
もしかして近くに住んでるの?

今まで駅で一緒にならなかったのが不思議なくらい。
こんな近くにいたなんて。
あたしのオートフォーカスは、今までいったいどこに合っていたの?
君を見つけられずにいたなんて。

君はこの町のどこかに住んでる。そう思うだけでこの町が
いとしくなる。

すぐそばに君がいるような気がして、いつもは歩かない道を
歩いてみた。
君の家がすぐそこにあるかもしれない。思わず表札を見てしまう。
イニシャルだけじゃ見つけられるはずないのに・・・。

あたしはいつも君の姿を探してる。

すると、通りの向こうに見覚えのある姿が、こっちに向かって
やってきた。
自販機の前ですれ違う。
その時間がスローモーションのように感じられ、思わず立ち止まって
しまいたくなる。

からだが熱い。

気持ちを悟られないように、なんでもないフリをして通り過ぎる。
切ないけれどうれしくて、ふと笑みがこぼれてしまった。
たぶん誰にも見せたことのない最高に幸せな顔。 

何気ないふりして振り返ってみた。遠くなる君の背中。

いつか君はあたしの存在に気づく?
あたしは君に話しかけられる?

先のことなんて全然わからないけれど、あたしは君のことを
想いつづけるだろう。

たぶんこの先ずっといつまでも・・・。







勝手にBGM : aiko 「ドレミ」