「僕とあたしの未来 48」



夏休み直前。あたしはしょーちゃんとバーゲンに出かけた。
3連休だからどこも混んでる。暑い。けれど幸せ♪o(ToT)o

「このストラップかわいいな☆」
ハートのチャームのついたピンクのケータイストラップをあたしが手に取って見ていたら、
「それ?」と、しょーちゃんがのぞきこんだ。

「こうやって文字パーツ入れられるんだって」
「へぇ〜。なんて文字入れるの?」
「え・・・」

パーツを選ぼうとしてたあたしの手が止まった。

「やっぱり今日はいいかな・・・」
「せっかく見つけたのに?こういうのも巡りあわせだからさ」
「じゃ、あたし選んでるから、しょーちゃんは別のとこ見てていいよ?」
「なんで?」
「え・・別に深い意味はないけど・・・(^_^;)」

パーツを選ぶトレイの上に、さくらモチーフ、S・H・O、ハートを並べて、
顔から火が出そうになるあたし。

「さくら?S・H・O・・・ラブ?ですね?お客さま」
「確認しなくていいから!(>_<)」

しょーちゃんは時々いじわるだ。(=_=)

レジに持っていくと、しょーちゃんがおさいふを出した。

「しょーちゃん、いいってばー!」
「そのパーツを選んでいただいたからには、ぜひこのわたくしが!!」
「自分で買うよー!」
「いえ、わたくしが!!」

しょーちゃんは時々、言葉遣いが超丁寧になる。(=_=;)

「お客様・・・」と、レジのおねーさんが半笑いでこっちを見てた。

「あ、おいくらですか?」と、結局しょーちゃんが払ってしまった。
なんだかいつも申し訳ない気がする・・・。


「そろそろお昼かぁ・・・なに食べる?」
腕時計を見ながら、しょーちゃんが言った。
「なんでもいいよ〜。でもどこもすごく混んでそうだね」
「じゃ、そこでもいい?」
しょーちゃんが指さした先には、立ち食いそばのお店が・・・。
「え?(^_^;)」
「じょーだん(^^ゞ」

しょーちゃんは時々、おちゃめなじょーだんを言う。
でもホントは、しょーちゃんが好きなおそばなら、立ち食いでもなんでもいい。
せめてせめてトッピングくらいはおごらせて?!


なんて、お店を探しながらぶらぶらしていたら、ディスプレイされてる浴衣が
ふと目にとまった。

「あー、なんかこの浴衣、しょーちゃんに似合いそう☆」
「そう?このとなりの浴衣は、君にぴったりって感じだよ。
 浴衣かぁ・・・子供のとき以来着てないかも?着物はあるんだけどね」
「着物?!しょーちゃん着るの?!」
「あぁ、母が茶道と華道を嗜んでるもんで・・・付き合わされるんだ」
「そ、そうなんだ・・・」

まさかしょーちゃんちって、なんかの家元?!そんなのまさきから全然聞いてない!(>_<)

「もしかしておうちに茶室とかあるの?」
「茶室なんていえるもんじゃないけど、こじんまりとした和室はあるよ」
「おうちにおっきい門とかあるんじゃ・・・?!」
「そんなたいしたものじゃないよ。古い日本家屋だから木戸があるくらいだって」

日本家屋・・・木戸・・・ご立派な玄関・・・長い廊下・・・代々受け継いだ
書籍でいっぱいの風格ある書斎・・・豪華なリビング・・・お手入れの行き届いた
見事な日本庭園・・・着物姿のきれいなお母様・・・想像がどんどんふくらんで、
メーター振り切れそう。(@_@;)

「浴衣で花火大会なんていいね。一緒に浴衣で見に行こうか?」
「あたし・・・浴衣持ってないの・・・」
「なら、これすごくいいんじゃない?試しに着てみれば?」
「でも・・・」
「僕も試着してみる。すみませーん、これとこれ、試着したいんですけど?」
「しょーちゃん・・・」

やっぱりしょーちゃんとあたしじゃ違いすぎるのかな。分相応じゃないのかもしれない。
しょーちゃんにはもっとお金持ちのかわいい女の子の方が似合ってる。
そう思ったら涙がにじんできて、しょーちゃんがぼやけて見えた。

「どしたの?」
半分泣き顔になってるあたしを見て、しょーちゃんが心配そうに訊いてきた。
「あたしこんな豪華なのは・・・」
そう言ったあたしを見て、しょーちゃんはすぐに店員さんに言葉を返した。

「すみません、また今度見させていただきますね」
そう言って、あたしの手を取り、その場を去った。

「ごめんね、しょーちゃん・・・」
「大丈夫だよ。(^_^)それにね、いいこと思いついたんだ」
「いいこと?」
「たぶん浴衣なら、父や母が着なくなったものもきっとあるからね」
「え・・・」
「もうすぐ夏休みだし、今度うちおいでよ?」
「あたしが?!おうちに?!」
「うん、そんな堅苦しく考えずに、遊びにおいでよ」
しょーちゃんはうれしそうに笑った。

「さ、なんか食べよ♪」
しょーちゃんはあたしの手を引っ張って、「じゃ、空いてたらここにしない?」と
カフェに入った。

おいしそうに食べるしょーちゃん。もぐもぐおいしそうに食べるしょーちゃんの姿が、
あたしはものすごく好きだ。
でもあたしは、なんだか緊張のあまり、少ししか食べられなかったんだけどね。


ひょんなことから、しょーちゃんのおうちにお邪魔することになってしまった。

着てくものどうするの?!バーゲンに行ったから少しは買ったけど、やっぱり清楚な
感じのものがいいよね?
白いブラウスに紺のスカート?それじゃ制服みたいじゃない?!

結局無難なものしか思いつかないまま、かわいめな襟の白いブラウスと、
紺のエアリーなスカートに、ちょこっとレースのついたソックス、
ぺたんこバレエシューズを合わせた。

「よし!行くぞ!あたしっ!!o(>_<)o」
気合を入れてドアを出ると、しょーちゃんがお迎えに来ていた。

ひょぇぇぇぇーーーーーーっ!!(@_@;)

「初めてだとわかりづらいだろうと思って、迎えに来ちゃった(^^ゞ
 でもお車でお迎えとかじゃないからね。そんな運転手とかいるような
 うちじゃないから。公共の交通機関と徒歩でまいりますゆえ」
「はい」

乗りなれてる電車も、しょーちゃんと一緒だと景色が違って見える。

駅から5分。閑静な住宅街の中に、しょーちゃんのおうちはあった。
やっぱり想像以上にご立派な門構え。(@_@;)
インターフォンからは、上品な女のかたの声が聴こえて・・・出てきてくださったのは
やっぱりお母様だった。

「いらっしゃるの楽しみにしていたのよ。とってもかわいらしいかた・・・うちの子には
 もったいないくらい」
「とんでもないです!!」と、あたしはぶんぶんと首を振った。
「ささ、どうぞ・・・」

お母様に案内され、しょーちゃんに付き添われ、あたしはおうちに足を踏み入れる。

広々とした和室に広げられた、いくつかの浴衣のつつみ。

「ごめんなさいね、このような古いもので申し訳ないわ。お気に召していただけると
 うれしいのだけれど」

広げられたつつみには、黒地に上品な花模様、淡いピンクに濃いめの花、紺地に朝顔など、
選ぶには贅沢すぎる浴衣が・・・。

「僕は、父が着てたこれがいいかなって思って」
しょーちゃんが言った先には、この前お買い物の時見たのとほとんど同じ、
縦縞の入ったシックで大人っぽい浴衣。それをしょーちゃんがささっと羽織ると・・・

うわぁー・・・似合う、似合いすぎて、素敵すぎて、倒れそうになる。

「これ、どうかな?」
「すごく似合ってる!!素敵!!」
「ありがとう(*^_^*)」

「あなたにはこちらはどうかしら?」
お母様があたしにすすめてくださったのは・・・黒地に上品な花模様の浴衣。
「ちょっと羽織ってごらんになって?」
「はい・・・」
しょーちゃんがあたしを見つめる中、あたしはその浴衣を羽織ってみた。

「あら、肩も丈もぴったりね。あつらえたみたい。よくお似合いになってよ?」
浴衣に合わせた帯まで軽く巻いてくださった。

「そうですか・・・?・・・どう?しょーちゃん・・・」
「・・・・・・・」

しょーちゃんは答えない。え、似合ってないのかな・・・。

「あ・・・いい!!すごくいい!!それがいいーっ!!」
「まったくもう、この子ったら・・・あなたにこの浴衣が似合いすぎて、
 見とれちゃってたのね。こんなかわいいお嬢さんに着ていただけるなんて、
 わたくしの浴衣も幸せものだわ」
「そんな・・・ありがとうございますm(_ _)m」

「超似合うぅ〜!!」と、しょーちゃんはまだテンションマックス気味。(^_^;)

「花火大会はいつだったかしら?」
お母様が訊いてきた。
「確か今月末の土曜だったよね?」
「うん・・・」
「じゃ、その日の昼間、着付けしましょうね。似合う下駄もご用意しておくわ」
「着付けまで・・・ありがとうございますm(_ _)m」
「あなたは・・・自分で着れるわよね?着物で慣れてるんだから」
「まぁね」

おやつに水羊羹とお茶までいただいてしまった。


「おじゃまいたしました」
あたしは玄関で挨拶をした。
「なんのおかまいもしませんで・・・それじゃ来てくださるの楽しみにしていますね。
 うちの子も大喜びだと思いますから。ね?」
お母様がしょーちゃんをひじでつついた。
しょーちゃんは・・・照れくさそうに笑った。

この夏も楽しい日々がやって来そうな予感・・・。(*^_^*)



家に帰って、まさきに文句を言う。

「ちょっとあんた!しょーちゃんちがあんなにすごいおうちだなんて、あたしになんにも
 言わなかったじゃない?!」
「えー?そーだっけぇ?」
「茶道華道の家元かと思ったわよ!」
「似たようなもんじゃね?確かしょーちゃんのお母さん、お琴も弾けるって聞いたこと
 あるよ?」
「・・・・・・・」

だめだ、聞けば聞くほどすごすぎる・・・。あたしは大丈夫なんだろうか?


「あ、しょーちゃんからメール来た。ねーちゃんの浴衣姿、超楽しみ♪だって!」
「うそぉ〜(>_<)」
「へー、しょーちゃんて自分で着物とか着れんだ?じゃ、着せてあげるのもできんのかな?」
「・・・・・・・・・・」
「ねーちゃん今、超エロいこと考えただろ?!」
「な、なにがっ?!」
「浴衣脱がされても、しょーちゃんが着せてくれるから大丈夫☆とかって。ぷぷっ!」
「んなこと考えるわけないでしょっ!!」
「そりゃー、花火大会楽しみだねぇ♪ねーちゃん(爆)」
「まさきっ!!(怒)」


果たして、どうなることやら・・・。





後日談。


しょーちゃんのお母様は、浴衣を着付けてくださった上、髪飾りとかヘアスタイルも
おしゃれにしてくださった。

「あ、ちょっと待って・・・」と、ほんのりメイクまで。
「さくら色がとてもお似合いよ?」と、にっこり微笑むお母様。

肌の上に乗ったさくら色のせいなのか、しょーちゃんが見つめているからなのか、
頬がちょっぴり色づいて見えた。

「うぉぉっ!いいっ♪」
またもしょーちゃんはマキシマムテンションだった。(^_^;)


天候にも恵まれ、赤青緑黄紫の大輪の花や、次々と上がる鮮やかなすずらんのような
スターマインが、空を彩った。

しょーちゃんとあたしは手をつないだまま、ずっと空を見上げていた。
時々横を見ると、しょーちゃんもあたしを見ていたりして、ものすごく恥ずかしいけど、
とてつもなく幸せだった。

花火を見た後、近くのファミレスに寄って、少し食べて、しょーちゃんは家まで
あたしを送ってくれた。
もちろんまっすぐ家まで。だって健全な高校生ですもの☆

でも・・・家に帰る途中にある公園の片隅で、しょーちゃんの背に合わせてあたしが
ちょっと背伸びをしたことは、誰にも内緒なのです・・・・・。(*^。^*)







勝手にBGM : やっぱりaikoの「花火」(^^ゞ


勝手にすぺしゃるさんくす : 浴衣姿の櫻井様☆(*^_^*) by ひみあら
                  & 御村くん☆ by 山田太郎ものがたり