「僕とあたしの未来 51 真夏の特別篇」 「遠いところをよく来たねぇ」 「おばあちゃん、久しぶり〜」 「しょーちゃん、また大きくなっちゃって。お友達もこんにちは」 「私たちまでお世話になってしまって、すみません・・・」 「いやいや、にぎやかで楽しくていいねぇ。まぁ上がり〜」 「おじゃまします」 まさきとあたしは、しょーちゃんのおばあちゃんちに遊びに来た。 冬は空っ風が吹いて寒く、夏は最高気温を記録したりする、としょーちゃんから 聞いていたけど、昼間は川風が吹いたりして、さほど暑さが気にならないな。 蝉は東京とは比較にならないほど、せわしなく鳴いている。 「お昼は食べたかい?おやきもとうもろこしもあるよ。食べりい」 「おばあちゃんのおやき、おいしいんだよ。二人も食べて?」 「じゃ、いただきます」 「うわっ、懐かしい、この味♪」 「やっぱ、おばーちゃんの味っていいよねぇ〜、しょーちゃん」 「まさき、こぼしてるよ。あんたいくつになってもこぼすんだから」 「ねーちゃんも口のはしっこにくっつけてるよ。しょーがねーなぁ」 「うそっ(@_@;)」 「なんつって〜♪」 3人の様子を、目を細めてうれしそうに見ているおばあちゃん。 あたしにもいつかこんな日が来るのかなぁ? 「今夜は花火大会行くのかい?」 「行きたいなぁって思ってるけど、やっぱり混むよねぇ?」 「そうだぃねぇ、あそこの花火大会はいつも混むんだぃね。それとここらへんは 夕立が多いだろ?降られないといいんだけど」 「うん、様子見てから行くことにする」 「流れ星が見えるとこに行きたい」と言っていたしょーちゃん。 結局どこに行くかなかなか決まらず、「じゃ、みんなでおばあちゃんち行こう」 ってことになった。 ペルセウス座流星群、毎年夏恒例の天体しょー、いや翔、あ、ショー。(^^ゞ 極大は12日の深夜。空模様が気になる。 「川原でも散歩しよっか」としょーちゃんがあたしに言った。 「うん」とあたしは答えて、「まさきは?」と振り返ると、 まさきは奥の和室で大の字になって、ぐぅぐぅ寝ていた。 「まさきもサトシくんみたいにどこでも寝れるんだなぁ」としょーちゃんが笑った。 まさきを置いて、しょーちゃんとあたしは川原を歩いた。 「小さい頃、川原のそばの水たまりにおたまじゃくしがいてさー」 「うん」 「もうすんごいうじゃうじゃで・・・ちょっと気持ち悪かった」 「そんなにうじゃうじゃいたんだ?(^_^;)」 「それから魚釣りもしたなぁ。1回川に落っこっちゃって」 「大丈夫だった?」 「浅かったから大丈夫。でもしばらく川に近寄らなかった(^^ゞ」 川面が鏡みたいに輝いてきれい。 輝いたのは鏡でも太陽でもなくて君だ、なんてうたがあったな。 もしもそんなことしょーちゃんに言われたら、きっと倒れてしまうだろう。 夕方になってだんだん雲行きが怪しくなってきて、ついに雨が降り出した。 「あー、降ってきたわ〜(>_<)」まさきが空を見上げながら言った。 「東京でも花火大会行ったし、まぁいっか」 「それはしょーちゃんとねーちゃんだろ?オレは見てねーっつの!」 「あ、そうだった、ごめんごめん(^^ゞじゃさ、軒下で花火やる?」 「そうだね、やろっか」 二人の会話は、いつ聞いててもほほえましい。(^_^;) 「お風呂沸いてるから入り〜」と、おばあちゃんが呼びに来た。 「はぁ〜い♪」と、なぜかまさきが返事して、「しょーちゃん一緒に入ろ!」と 言った。 「なんで〜?一人ずつ入りゃいいじゃん」 「まぁそう遠慮しないで。しょーちゃんとオレの仲じゃない?」 「ご遠慮します」 「なんでよー?!あ、そっかそっか、わりぃ、しょーちゃんはねーちゃんと」 「言わせねぇよ!!」 「我が家、ですか??」 二人の会話は、いつ聞いててもほほえましいとは限らない。(=_=) 山菜のてんぷらと、みょうがやねぎの薬味を添えたおうどんと、畑のきゅうりやトマト、 とうもろこし、茄子のお味噌汁・・・・・おばあちゃんの作るごはんはものすごくおいしくて、 あたしはただ運んだり、洗いものを少し手伝うだけで申し訳なかった。 ゆっくりとお風呂をいただいて、さっぱりしたとこで、再びおばあちゃんの 「すいかはどうだいね?」。 「もうおなかいっぱいです」とあたしは笑った。 「しょーちゃんの小さい頃ってどんな子だったんですか?」 あたしはおばあちゃんに思いきって訊いてみた。 「もうあのまんまだよ。かわいくて優しい子」 「ですよね(^^ゞ」 「でも一人で泊まりに来た時、夜トイレに行くのを怖がってたねぇ」 「そうですか(^_^;)」 「しょーちゃんのこと好きかい?」 「はい・・・あ・・・(@_@;)」 「あの子をよろしくね」 「・・・はい・・・」 あたしは小さくなって返事するのが精一杯だった。 縁側で3人で花火をした。まさきは花火を持って庭を走っていた。 (よい子はマネしないでね) 背はでっかいくせして、いつまでも子どもっぽいんだから。(^_^;) と思ったら、しょーちゃんが扇風機の前で、「わぁぁー」と声を出して 喜んでいた。 ふたりとも小学生か???と時々思うことがある。(^^ゞ 「おふとん、この部屋でいいかね?」 「おばーちゃん、オレやるから!ここに敷いちゃっていいのね?」 「あら、ありがとねー。お友達もいい子で、しょーちゃんは幸せだねぇ」 わりとおばーちゃん子のまさき、お年寄りにけっこう人気がある。(^_^)b 和室にほいほいほいとまさきが敷いたふとん3つ。 「何気に3つ並べちゃったけど、別に深いことなんて考えなくていいよねぇ〜?」 「深いことってなんだよ?」 「そりゃーさ・・・・・」 「・・・・・なんなんだよ、その間はー(=_=)」 「まぁいいじゃない、ね?しょーちゃん!去年の夏すごいことになってたなんて オレ言わねーから!大丈夫!!(~o~)v」 「おまえなぁーーーーーっ?!」 いいよねー、ふたりだけで通じ合う会話ばっかりしちゃってさ。 あたし全然入り込めないじゃない。 部屋のはしっこでちょっとうじうじしてたら・・・「おおっしっ!枕投げやんぞ♪」 まさきが立ち上がった。 「まさきー、修学旅行じゃないんだから、さ!」 しょーちゃんがまさきに投げつけた。 「おら、ねーちゃんも参加しろ、よ!」 枕があたしの顔面直撃。 「ちょっとー!痛いじゃないのよ?!このー!!」 まさきに向かって投げたはずの枕が、ひょこっと下げたまさきの頭上をかすめて まっすぐしょーちゃんに当たった。 「あ・・しょーちゃん、ごめん!」 「相変わらずストレート投げるね〜?僕からのストレートも受け取って〜?」 きゃー☆受け取ってって言われたら・・・・・とデレッとしたのもつかの間、 しょーちゃんのストレートもあたしの顔面を襲った。 「おやおや、にぎやかだこと(^_^)」 おばあちゃんが襖を開けたので、3人は先生に見つかった生徒のように 直立不動になった。 「外、雨上がったようだねぇ。しょーちゃん、流れ星がどうとか言ってただろう? 見えるんじゃないかね?」 「え、ホント?」 「見る見る見る!」 サンダルをつっかけてしょーちゃんとまさきが庭に出て行き、あたしも後を追った。 ところどころ薄雲が空を横切ってゆくけど、明るい星はよく見えるほど、空模様は 回復していた。 「うわ、けっこう見えるー☆ペルセウスは明日の夜半極大になるけど、今夜もこれなら 少し見えるかもね?」 「え?ぺるせうす?きょくだい?・・・ってなに?」 「ペルセウス座の方から放射される流星群のこと。極大ってのは、流れ星が出現する 数が、明日の夜中ピークだってこと」 まさきのすっとぼけた問いにも、しょーちゃんは丁寧に答える。 「じゃ、おばあちゃんは先に寝るからね。戸締りしっかり頼んだよ?」 「はい!おやすみなさい、おばあちゃん」「おやすみなさい」「おばーちゃん、 おやすみなさーい☆」 午後11時半過ぎ、3人で庭に出て、空を見上げた。 「北東の方角・・・あっちか。まだ放射点がそんなに高くないから見えにくいかなぁ?」 「どんくらいの数見えんの?」 「極大時で、観測状態がよければ1時間に数十個くらい?」 「そんなに見えるの?」 「まぁ、今夜のこの感じだと、せいぜい1時間に5〜6個ってとこかな」 「よし!ぜってー見てやる!」 まさきは鼻息が荒い。 30分経過。小さく光った尾の短いのがひとつふたつ・・・やっと見えただけ。 今夜はもう無理かも・・・?なんて思ってた矢先、「あ!」と3人で同時に 声を発した。 「おっきいのが流れたー!!」 「すごく光ってたねー!」 「すげーでっけーの!!初めて見たぁ♪あそこらへんをスッと」 そう言うまさきの指差す方角と、しょーちゃんとあたしの指差す方角が違ってた。 「うそ、オレひとりだけ別のやつ見てたの??ふたりはおんなじ流れ星見て? なんでオレだけ別のなんだよ?」 「そんなこと言っても・・・」 「はいはい、おふたりはおんなじ流れ星一緒に見ちゃって、やっぱりお幸せって ことね?はいはい、オレはもう寝ますよ」 「まさき、なにスネてんの?」 「そうだよ、もうちょっと一緒に見ようよ?」 「いいですいいです、寝ますわ。あとはおふたりでよろしく・・・オヤスミ!」 「まさき・・・」 しょーちゃんと一緒におんなじ流れ星見れたなんて、ものすごく幸せだけど、 まさきが妙にスネるもんだから、しょーちゃんが「僕たちも、今夜はもう寝ようか」と 言った。 「うん、そうだね。また明日見よう」とあたしも答えて、おうちに入った。 和室に戻ると・・・まさきが部屋の隅っこに固まって座っていた。 「なにしてんの?まさき」 「・・・・・見た・・・・・・!!」 「うん。流れ星見れてよかったね」 「そうじゃなくて・・・・・」 「??」 「なんか見ちゃいけないもんを見ちゃった・・・・・」 「見ちゃいけないもん?なんだそれ。まさきー??」 「・・・・・・・」 「あ」と、しょーちゃんとあたしは何か思い当たった。 まさきには小さい頃、あたしたちには見えないものが見えた時期があった。 その話は、まさきもしょーちゃんにけっこう話してたから、しょーちゃんもすぐに 気づいた。 「まさき、何を見たの?」 しょーちゃんがまさきに訊いた。 「おじさん・・・こーんなちっこいおじさん!!」 「ちっこいおじさん・・・って・・・今巷でウワサの?こないだ本屋で見たとか言う あれ?」 「なにそれ?」しょーちゃんが若干びくっとしながら訊いてきた。 「なんか小さいおじさんの目撃談の本。写真も載ってるんだって」 「写真?ウソだろー?!」 「でもホントに歩いて・・・・・」 まさきの言葉がとぎれた。まさきの視線の先を見ると・・・床の間にちょこんと 小さなおじさんが座ってた。 「ぎゃぁぁぁぁーーーっ!!出たぁーーーーーーーっ!!」 3人で30人分くらいの大声で叫んだもんだから、おばあちゃんが「どうしたん?」と 起きてきた。 「おばぁ・・ちゃん・・・ちっこいおじさんがあそこに・・・・・」 しょーちゃんがおそるおそる指差した先の床の間には、もうちっこいおじさんは いなかった。 「おや、いたかい?」 「おばあちゃん、びっくりしないの?」 「まぁ、この辺りじゃみんなよく見かけるんだぃねぇ」 「僕、子どもの頃からおばあちゃんちに遊びに来てたのに、全然見たこと なかったよ?!」 「世の中には不思議なこともたくさんあるんだよ、しょーちゃん。だから生きてる ことは楽しいんだぃね」 「含蓄のあるお言葉・・・」あたしは冷静につぶやいてしまった。 「とにかく!もう寝よう!!おばあちゃん、電気つけたまま寝ていい?!」 「いいよ・・・(笑)おやすみ」 「おやすみなさーーーーーーい!!」 3人でふとんをできるだけくっつけて、ひっつきあって肌掛けを頭からかぶって、 寝た。 「朝、全裸だったらごめん!!(>_<)」と言うしょーちゃんに、 「もうなんでもいい、許す!!」と答えるまさき。 去年の夏のできごとが容易に想像できた。確かに非常事態だから、あたしも許す。(-_-;) 明日、また流れ星が見れたら、絶対に願おう。 どうか、ちっこいおじさんには二度と会いませんように。 あ、もっと大切な願いごと・・・・・いつかしょーちゃんの・・・・・・・・・ やっぱり恥ずかしいから、あたしの心の中にとどめておくことにする。(^_^;) 勝手にすぺしゃるさんくす : USO!?ジャパンの頃の相葉様、櫻井様 「小さいおじさん」の著者様 今は亡き、彩音の群馬のおばあちゃん |