「僕とあたしの未来 56 〜3日遅れのバレンタイン〜」 ふだんゴロ寝してても風邪引かないあたしが、インフルエンザにかかった。(>_<) しかもものすごく大事な時にーーーっ!! ダイニングテーブルの上で、チョコの材料広げて奮闘してたら、まさきがやってきた。 「ねーちゃん、バレンタインは先週終わったけど?」 「んなのわかっとるわぃ!イヤミか?!」 「いくら風邪引かねぇってからさぁ、コタツに片足つっこんだだけで、なんもかけずに ハラ出して、ついでにヨダレもたらして寝てたらさー、そりゃインフルもしめしめって やってくるってもんよ?」 「そんなカッコして寝てないっつの!!」 「半目だったし。ほら、志村どうぶつ園のワオキツネザルのコハクみてーに」 「半目なんかで寝てないよ!!」 あぁもう、まさきが来ると邪魔するだけで、なんにも進まない。 そう、あたしは気合込めて今年もバレンタインチョコを作るつもりでいた。 なのに、先週の三連休初日に、見事インフルエンザにかかり、バレンタインチョコを 作れなかったのだった。 もちろん、大好きなしょーちゃんに手渡せてもいない・・・。 やっとお医者さんからも登校していいという許可が下りたので、こうしてチョコを 作れているのだ。 「そういや、しょーちゃん、家族と長野に温泉旅行行ったって」 「そうなんだー、いいなぁ・・・」 「おみやげ持ってそろそろ来んじゃね?」 「え、うそ?!まさきあんたまさか??!?」 「さっき電話しといた」 「って・・・チョコまだできてないんだよ?!なんで勝手に呼ぶのよ?!」 「だっておみやげ持ってくからって、こないだ言ってたし・・・ちょうどいっかなって 思って。あ、そか、ねーちゃんにはおみやげよりも、しょーちゃん本体の方がでっけー プレゼントだもんな?ひゃっひゃっひゃっ(笑)」 「まさきっ!!o(>□<)o」 どーしよ・・・まだ半分しか出来上がってないのに・・・。 あたしはダイニングテーブルの上で、必死になってチョコペンで文字を書いた。 しょーちゃんが来ると思うと、よけい手が震えて上手く書けない。 でも一文字一文字に想いをこめた。そしたらしょーちゃんに気持ちだけは届くような 気がして。 バレンタインカードも用意できずじまいだったので、ハートのレターセットに 想いを綴った。 「君に届け」って念じながら。あれ?「君に届け」ってどんなマンガだったっけ? 「ねーちゃん、また何個も作ったの?!」 「だって失敗したら困るから・・・」 「去年もおんなじこと言ってなかったっけ??」 「いいの!今年は去年より簡単に作れるようにしたから」 「手抜き〜?」 「手抜きじゃない!!(=_=;)」 「これ、1個もらっていい?」 「ダメ!!」 「オレにはねーのかよ?!って、CMあったけど、その通りだよ!?」 「インフルっていう非常事態だったから、あんたの分用意するヒマなかったの!」 「えーーーーー?!この中の1個でいいんだからさぁ?」 「ダメ!!失敗したら困るから!!バレンタインは、きっちり渡すまでがバレンタイン です!!」 「遠足の先生みてーじゃねーかよ?!」 まったく油断も隙もありゃしない。 チョコペンメッセージはどうにか書けた♪うん、まぁまぁじゃない? こないだテレビで見た、なんとかっていうタレントのチョコよりは数段マシな出来だと 自負してる☆ さて、これをラッピングして・・・。 奮闘中にピンポンが鳴った。ひょぇー!!しょーちゃん?!ぎりぎりセーフ!! 「おじゃましまーす」 「どぞどぞ、こちらへ」 「まさきってば、なんでダイニングの方に・・・(>_<)」 ダイニングテーブルの上には、ラッピングの残骸がまだ散らかっていた。 「やだ、すぐ片付けるね」 「へー、ラッピングの材料って、いろんなのがあるんだね?」 「あんまり見ないで・・・。高級なもんじゃないんだから・・・」 「そーそー、ねーちゃん、100均とか近所のスーパーとか某生協で買ったもんばかり だから」 「・・・まさき・・・(怒)」 「僕さぁ、ゴディ○とか高級なチョコもおいしいんだろうけど、あんまりよく わかんないんだよね。それよりこういうラッピングとか一生懸命やってくれるの、 なんかじーんとする・・・」 「しょーちゃん・・・・・・・・・・・・(@_@)」 「おやおやおや、いい雰囲気になってきましたよ??これはわたくし引っ込んでないと ヤバイですね?それでは・・・・・」 まさきはダイニングを出て、♪かーけぬーけろ〜♪とかハナウタを歌いながら、 だだだっと二階へ駆け上がって行った。 う・・・なんだか言葉が出てこない・・・。久々にしょーちゃんの顔見たせいかな・・・。 「あ、これ、長野のおみやげ」 「ありがとう・・・あ・・・これ、遅くなっちゃったけど、バレンタインのチョコ・・・」 「ありがとう♪インフルエンザ大丈夫だった?具合悪いだろうから、電話遠慮して たんだけど」 「うん、大丈夫。熱はけっこうすぐ下がったし」 「そっか、よかった」 うぅ・・・また高熱が出そう・・・。あたしはやっぱりしょーちゃんの笑顔に弱い。 あたしは、この笑顔に何度救われて、何度幸せな気持ちを感じたことだろう。 「どうしたの?なんか顔赤いよ?」 「うん、ちょっとエアコン効かせすぎかも・・・暑い・・・(^_^;)」 「また熱ぶり返したわけじゃないよね?」 しょーちゃんがあたしのおでこに手を当てた!! か、神様というかお医者様というか、神々しく見える・・・☆ 「大丈夫、熱はないみたいだね」 「うん・・・」 「あ、チョコ開けてもいいかな?」 「どうぞ」 包みを開く時のしょーちゃんの顔は、まだ少年のように見える。っていうか、 高校生なんだから少年か・・・。(^^ゞ 「今年もストレートだね(*^_^*)」 「はい、すみません・・・」 「いつもありがとう・・・」 「うぅん・・・」 しょーちゃんの手があたしの髪に触れた。先月ちょっと切りすぎちゃって、やっと 伸びてきた前髪を、あわてて押さえた。 しょーちゃんの手のひらが、あたしの頭をそっと包んで、自分の胸元へと引き寄せた。 速くなる鼓動。息づかい。体温。すべてがいとしく伝わってくる。 あたしはしょーちゃんと同じ時代に生まれて、しょーちゃんという存在を知ることが できて、なんて幸せ者なんだろう? 涙がこぼれるほどうれしいよ・・・。 まさきは気を遣ってるのか、一向に階段を下りてくる気配はない。 おひさまが傾き、ほんの少しだけ日が翳り始めたダイニングの片隅で、 ふたつの影がひとつになった。 勝手にすぺしゃるさんくす : 櫻井翔様、相葉雅紀様。 |