「僕とあたしの未来 60 〜5年後〜 」



急激な気温上昇。あたしの気分は少々・・・なんて韻を踏んでる場合じゃなくて。
外回りにはきつい季節になってきたなぁ。

高校時代、あたしのカテキョーだったあんたが、この会社に就職したのは知ってた。
だからあたしも受けた。
でもまさか採用されて、しかも配属先があんたと同じ営業になるなんて・・・。

フロアには成績のグラフが張り出されている。
あんたは目下トップを独走中。あたしは下から数えて3番目。
なんで社会人になっても、成績に苦しめられんの?!

コーヒーのカップを片手に成績表をぼんやり眺めていたら、「お疲れです」と
あんたが戻ってきた。

「お疲れさまです・・・」
あたしは一応挨拶した。

「何?元気ねぇじゃん」
あんたはネクタイを若干緩めながら言った。

「別に・・・」
「あ、またなんかやらかした?」
「・・・・・」
「それとも、あまりの成績の悪さに自暴自棄状態?」
「あんたね・・・っ!!・・・・・・・そうです」
「素直じゃ〜ん、気持ちわりぃ」
「・・・・・・・」
「おまえつくづくダメダメな奴だな!!」
「・・・・・・・」
「世の中、簡単に渡れると思うなよ?!」
「・・・・・人が落ち込んでるとこをグサグサと!!ムカつく!!」
「やっぱ全然変わってねーな」

毒吐きながら笑った顔に、ちょっと焦った。

「どっちがだよ?!あんたその毒吐きでよく成績トップになれるね?」
「おかげさまで」
「どんだけ人騙してんの?」
「騙してるなんて人聞きの悪い・・・営業テクのひとつって言え」
「世の中、簡単に渡ってんじゃねーよ!」
「・・・アハハハ」
「何がおかしいの?!」
「やっぱ全然変わってねぇなって思って。いや、いい意味で」
「語尾にいい意味でってつければいいってもんじゃない!!」
「・・・よしよしよし」
「何がよしよしだよ?!」

そう答えながら、よしよしよしって頭を撫でられて、またまた焦った。

「あれぇ、もうこんな時間だ。お疲れで〜す!」

あんたはジャケットを羽織って、帰りかけた。

「ちょっとひとりで勝手に終わんないでよ?!」
「なに?帰ってほしくないって?」
「・・・・・・・」
「ばーか!10年はえーんだよ!!」

あんたこそ全然変わってないじゃん。いったい何年待てばいいの・・・?

「ほら、今日はおごってやるから。元気出せ!」
「・・・うん」
「あとで請求するけどな」
「!!」

でも・・・あとで請求するってことは、この先もしばらくは一緒ってこと
だよね・・・?(*^_^*)




勝手にすぺしゃるさんくす : 吉本先生・・・お疲れさまでした。(ToT)