「僕とあたしの未来 61」



頭が痛かった。息苦しくてたまらなかった。眠れてなかった。
想えば想うほど、その年月がつづくほど、自分の想いに押しつぶされそうになって。
なのに、君の『上から目線の俺様』的なとこが垣間見えた時、なんとなく許せなくて、
そんな自分も好きになれなくて、ゼンブゼンブあきらめてしまおうって思ってた。

さっきまで。
久しぶりに君の姿見るまで。

懐かしいみんなと一緒に過ごす、年に一度の夏祭り。

君が、ちょっとカッコつけてもったいぶって(るようにしか見えない)、「よ」と手を上げた。
こころなしか口角がちょこっと上がってるとこは、保育園の頃から全然変わらない。

「みんなは?」
「まだ来てない」
「なんだ、今年もオレが一番乗りかよ」
「あたしが先に来てたんだからね」
「オマエ今年の幹事だろ?幹事はノーカウント」
「なんなの?その法則」

子どもの頃からムカつく小生意気さ加減って、こういうとこ。
(って同い年なのに小生意気って・・・(^_^;))

「あいつ最近来ないけど、元気?」
「あいつってあの子のこと?」
「オマエ仲よかったじゃん」
「うん。でも最近めっきり連絡減っちゃって・・・」

あの子が君のこと好きなの知ってたから、なんとなく連絡しづらくなってた。
あたしも女としての小ズルさ、こんなに持ってたんだって、あらためて気づく。

君の口からあの子の話が出るとは思ってなかった。いや、出るとは思ってなかった
わけじゃない。
君があの子の気持ちに気づいてしまったらどうしよう?

あたしが君を嫌いになれたらラクなのに・・・なんて・・・
嫌だ。あきらめたくない。無理だ。絶対に嫌いになれるわけない。
そんな簡単なものじゃないんだね、嫌いになるってことは、あきらめるってことは、
好きになること以上に。

たとえ君が本当はイジワルで、めんどくさくて、短気で、気難しい奴だとしても、
その君のダメダメなとこまで見ていたいって思った。(ボロクソ言ってるな(^_^;))
理屈じゃなくて、ただ心から願う気持ち。

「みんな来ないから、先行ってない?腹減った」
「二人で?」
「なんか不満そうだな?」
「別にそういうわけじゃないけど」

本当は飛び上がりたいほどうれしいクセに、素直に口に出せないあたし。

タコ焼きとアメリカンドッグを食べながら、ボロいベンチに二人で座る。
ただそれだけなのに、なんて贅沢で幸せな時間なんだろう。

「オマエのやたらうまそうなんだけど?一口いい?」
君があたしのアメリカンドッグをほおばる。

「代わりにこれひとつやるよ」
君があたしの口に、あ〜んとたこ焼きを運ぶ。

この場面だけを切り取って見たら、君とあたしは確実に彼氏彼女だろう。
なんてことが少しでも頭の中をよぎったとたん、視界が急にぼやけて涙がにじんだ。

この時が過ぎたら、たぶんまた1年後にしか会えない。

「あのさ・・・」あたしは思わず口に出していた。「今度どっか出かけない?」
ほんの少し『意外』って顔をしたけど、君は「いいよ」と答えた。

君はあたしの問いかけの中に『みんなで』っていう言葉を見出して答えたのか、
それとも、あたしと『二人で』という意味にとらえたのだろうか?
あたしは怖くて、その先を自分からはたずねられずにいると、君は「ふ・・・」と
言いかけた。

「ふ?」と君に問いかけた時、みんなが合流して、結局その先は知ることができなかった。


君はいったいなんと告げたかったんだろう?



短い夏はあっという間に過ぎ、木枯らしという冬の知らせが届いた今日、突然君から
連絡があった。
「たいへん遅くなりましたが、夏祭りの時の写真送ります」というメール。

添付ファイルを開いて見ると、かわいいフレームに縁取られたあたしがいた。
なんでそんな大口開けて食べてるとこ撮ってんのよー?!そんなのが何枚も。
その中に、一段とかわいいフレームに縁取られたあたしの、どこを見るでもなく笑ってる
画像が入ってた。
いつの間にこんなの・・・。

「追伸。そのきらきらフレームのオマエ、いちばん写りがよくて、オレ的にイチオシです」
「いちばん写りがよくて、って、そういう余計なひとこと付け足す態度、改めなさいよね?!
 <(`^´)>」
即返信しながら、「オレ的に」の言葉に、頬が熱くなった。

今度はタイトルに「ふ」と書かれたメールが送られてきた。
まさか、あの時の言葉の続きなの?

「不確かな未来の僕らだけど、ともに歩んでいこう」

は?なにこれ?

「なにJ−POPの歌詞みたいなこと言ってんのよ?!(笑)」と送り返した。

「二人でどっか出かけような、今度は」と、即言葉が返ってきた。
あの日の「ふ・・・」は、「二人で」の「ふ・・・」だったの??

「そうだね、二人でどっか行こうね」とだけ、やっと返した。

その言葉が君にとってどれだけの意味を持つのか、今のあたしには怖くて問い返せない
くらい重いけど、いちばん欲しくてたまらない言葉だった。

すると、今度は携帯が鳴った。

「もしもし」
「ごめん、はじめから電話すりゃよかったな」
「そうだね・・・」
「・・・なんか・・・照れるよな」
「・・・・・うん・・・・・」

息が苦しい。鼓動まで君に伝わってしまいそう。
電話の向こうの君は、いったいどんな顔をしているの?

なんとなく重い空気が流れたのを汲み取るかのように、君が口を開いた。

「あ、明日も早いだろ?」
「うん・・まぁ」
「じゃ、またね。オヤスミ」
「うん。写真ありがと。おやすみ☆」

たった2、3分の会話が、あたしには10年分くらいに感じられた。


二人で目指す日々は、いつかやってくるのかなぁ?君にもあたしにもまだわからない。
でもこれだけは言える。

未来は不確かであっても、君とあたしの今は、確実につながってる。





なんとなく勝手にすぺしゃるさんくす : 櫻井翔様(T_T)/~~~