「僕とあたしの未来 76」



5年間付き合った彼と別れた。
もっとも2年前くらいから馴れ合いの関係になっていて、すでに終わっていたような
気がする。
いつの頃からか、彼の心は他の人のものになっていた。
気づかないフリ、なんでもないフリ、オトナのつもりでいたけど、ダメだった。

あたしの5年間はなんだったんだろう?
そう思ってしまうと、今までの自分を全否定してしまうことになるから、
せめて幸せだった日々だけ、記憶の隅っこに残しておこう。

別れたのにつらい。苦しくてたまらない。手元に思い出を残しておくと
見るたびつらくなる。
そう、残しておいてはダメなんだ。思い切って全て捨てることにした。

何もかもゼロになった。むしろマイナスかもしれない。
それでも苦しい想いからは解放された気がする。

人生において、何もかも手に入るなんてことは、たぶんきっとない。
何かを無くして初めて、心に少し隙間ができて、すんなり入ってくるものがある。
生きることってそんなくりかえしなのかもしれない。


そんな中、ある人から便りが届いた。癖があるけど、性格がよく表れてる
丁寧に書かれた文字。
昔、ほんの少し気になってたけど、特に何事もなく終わってしまった人。

「お元気ですか?先日、久しぶりに懐かしい仲間で集まりました。
 ずいぶんと長い年月が経ち、他のみんなとも会いたいねという話になり、
 ご連絡させていただいた次第です。
 よろしかったら今度みんなで会いませんか?懐かしい話に花を咲かせましょう」


桜の花びらが1枚、便箋の間に挟まれていた。


ほんの少しの隙間に、すんなり入ってきた人。また前を向けるかな?あたし。





勝手にBGM :  「Daylight」