「僕とあたしの未来 8」 あ?!もしかして目覚ましかけ忘れた??しまった!!大幅に寝坊だぁーっ!! 遅刻スレスレの時間じゃないか!?! ゆうべ、録っておいて全然見てなかった「サラリーマンNEO」を一気に 見たせいか? そういえば昨日、日曜だってのにあまりにヒマで、TATSUYAで借りた 「ザ・クイズショウ」も一気に見たんだった・・・。 あ、「バーテンダー」返しに行かないと、延滞料金取られる! そんなことを言ってる場合じゃない!早くしたくしないとっ!! ネクタイがぁぁ・・・急いでる時に限って・・・あぁ、こんな時、 「ほら、ネクタイが曲がってる」とか言って、直してくれる彼女がいたらなぁ・・・。 なんて妄想してる場合でもない!早くしたくしないとっ!! ちょっと黒くなりかけてるバナナを一気食いした後、口にハブラシを突っ込んで 磨いてたら、一度だけオエッてなった。(-_-;) これ始まったらオヤジの始まりって、大野先輩が言ってたっけ・・・。 駅までの道を、これまた一気に走る。走るのだけは得意な俺は、小学校からずっと かけっこは1等ショウ、いや、翔、あれ?もとい、一等賞だった。 その電車、ちょっと待ったーーーーーーーっ!! 危うく滑り込んだ電車は、潤特急、あ、いや、準特急で、俺の降りる駅には 止まらない・・・。 誰かー止めてー・・・・・。俺はドアにへばりついたまま、心の中で叫んだ。 悲しい気持ちで降りる駅を通り過ごし、やっと止まった駅であわてて引き返した。 駅からの道をまた走り、どうにかこうにか会社の入ってるビルのエレベータまで たどり着いた。 が!なかなか来ねぇ・・・あぁもう階段で駆け上がるしかない! なんでオフィスが5階にあんだよー?! 5階のフロアに足を踏み入れた時は、もう足がへろへろになってて、後ろから ひざカックンされたら、このまま顔面から倒れ込む・・・って思ってたら、 やるヤツがいんだよな、これが。(=_=) バタム・・・(倒)いったあぁぁぁーーーーーーいっ!! 振り返ると、職場の同僚の相葉が笑ってた。 「おまえは小学生か?!」 「いやー、いーぐあいにカクカクしててさ、やらずにはいられなかったわけよ♪ それより、すんげぇギリギリじゃねぇ?いつも時間には正確な櫻井が、 どーしちゃったわけ〜?」 「単に、目覚まし時計をかけ忘れただけだよ」 俺は立ち上がりながら、スーツの汚れを払い落とした。 やっとデスクにつくと、「おはようございます」と、うちの課の一輪の花、君が コーヒーを持ってやってきた。 「櫻井さん、今朝バナナ食べました?」 「え?うん・・・けどなんで?」 「ここに・・・バナナのかけらが・・・」 そう言いながら、君の細い指が、俺の口角に触れた。 俺は赤面したまま絶句した。 なんで?鏡ミタ、いや、見ただろ?!なんで気づかねんだよ?!俺っ!!(>_<) てか、君が細い指で、上品なネイルの指で、俺のバナナのかけらを・・・ 取った・・・・・・・・・・・・。 「櫻井さん、いつもきりっとしてるイメージなのに、案外・・・ふふっ」 君は笑いながら口を押さえた。 朝からこんな出だしだったから、午後一取引先でのプレゼンじゃ、噛みまくるは、 資料がどっか紛れこんで頭真っ白になるは・・・。(-_-;) 唯一のラッキーは、君が機転を利かせて、自分の資料をすぐに渡してくれたこと。 これでうちのプレゼンが通らなかったら・・・考えると胃が痛い。(-_-;) が、そんな心配も取り越し苦労だったようで、うちのプレゼンが・・・通った!! 我が課の一輪の花は、勝利の女神様だったぁぁぁ♪ 当然夜は、打ち上げの会が急遽行われることになり、俺と相葉は、居酒屋の予約を まかされた。 君が「調べときましたよ」って、居酒屋のリストを出しておいてくれたのは、 ものすごく助かった。 ちょこっとしゃれた居酒屋のいちばん奥の個室で、打ち上げの会は始まった。 「かんぱーい♪」と、相葉はやたらハイテンション。俺は時々、テーブルのすみっこに すわってる君を、ちらっと見ていた。 「ほらほら、全然飲んでないじゃない?」と、相葉が俺のカラのグラスに ビールをつぐ。 ホント、こういう席でおまえは楽しそうに飲むなぁ。 ムードメーカーだけど、陰でこっそり努力してるとこは、絶対に見せない。 俺にとって、大切な同僚だし、これからもずっと一緒に仕事していきたい、 そんなヤツだ。 宴もたけなわ、課長もすっかり出来上がっちゃって、上機嫌でカラオケを歌ってる。 「おい、そこの若いの二人も歌え!ほら、うちの娘が好きだっていう・・・・・ なんだ・・?ナントカっていう・・・・・」 「課長、アラシ、じゃないですか?」と副課長が横で耳打ちしてる。 「そうそう、アラシだかなんだか、歌って踊れ!!」 「はい・・・」と、渋々立ち上がる俺。 「さー、張り切ってまいりましょー♪」と俺の腕を引っ張る相葉。 あぁ、女子社員の黄色い歓声もない。あるのはおっさんの低いダミ声ばっか。(-_-;) 「櫻井さん、頑張って♪」 お、君の声援が飛んだ。 「えー?なんでぇ?俺もいるんすけどぉ〜?」と、相葉が不満そうに言った。 「相葉さんも・・・かっこいいですよ☆」 付け足したように君が言っただけなのに、相葉は「はぁ〜い♪」と手を振り、たちまち 機嫌を直した。 1曲終わって、軽く汗ばんだ俺は、「あっちー!」と上着を脱いだ。 「あ、くしゃくしゃになっちゃうから、かけときましょうか?」と、君が俺の 上着を取って、ささっとハンガーにかけた。こういうしぐさ、ドキッとする・・・。 「なんかさぁ・・・」相葉が俺にからみ出した。 「彼女さぁ・・・櫻井にばっか優しくね?」 「そんなことないでしょー?!相葉さんにだって優しいでしょー?」 「いやいや、俺にはわかる!彼女は櫻井にだけ優しい!!こらぁ!さくらいっ!! ちょっと顔がいいからって・・・ずるいよっ、おまえ!!」 「おまえ飲みすぎじゃね?」 「そんなに飲んでないっすー!!おかわり〜♪」 そう言ったかと思うと、突然寝転がり、くーくー寝始めた。 そこらへんに脱ぎ散らかした相葉の上着を、そっと相葉にかける君。 ほら、おまえが気づいてないだけなんだよ!みんなに優しいの!! すると君が「課長、私そろそろ・・・」と言った。 「あぁ、そうだな、愛しいナイトがお待ちだもんな。いや、お疲れさん!!」 「お先に失礼します・・・」と言い残して、君は座敷を出て行った。 愛しいナイト・・・?って、まさか・・・結婚してんの?! そんな話聞いたことない!! 俺は思わず居酒屋を飛び出し、階段を下りて通りまで出た。 駅の方に向かって歩いてる君の背中に、思わず声をかけた。 「あ・・あの・・・」 「・・あ、櫻井さん・・・なにか?」 「あのー・・・愛しいナイトって・・・・・・もしかして旦那さんのこと?」 「え?やだ!アハハハハ」 君が笑い出して、俺はなんだか拍子抜けした。 「実は私・・・子どもがいるんです・・・」 「子ども?!」 「あんまりみなさんには大々的に言ってないんで、課長くらいしか事情は知らない んですけど、私バツイチで・・・。子どもはまだ5歳なんですけど、いつも実家で 面倒をみてもらってるから、少しでも早く帰ってあげたくて・・・」 「バツイチって・・・君、まだ若いでしょ?!」 「まぁ・・若気の至りというか・・・」 君は照れ笑いをし、俺は呆然とした。 「子どもがいるから、仕事も頑張れるんです。でも時々思う・・・この子には やっぱりお父さんは必要かな?って」 俺は返す言葉がなかなか見つからなかった。 「あの・・・櫻井さん・・・・・・マスオさんになってくれます?」 「へ?」俺はものすごくマヌケな返事をしてしまった。 「なんてね・・・今の、忘れてください!今日はお疲れさまでした!!」 そう言って、君は駅までの道を駆けていった。 今、何気なく君が口にした言葉・・・あまりにさらっと言われて、聞き返すヒマも ないくらいだったけど・・・。 マスオさん・・・て・・・?ことはぁ?まさかの?!逆プロポーズ?!?! いや、櫻井、待て。おまえは酔ってるだけだ!! 「ちょっと、しょーちゃん!しょーちゃんてばぁ!!」 「うぁぁっ!びっくりしたぁ!!」 いつの間にか、ベロベロになって寝てたはずの相葉が、俺の後ろに立ってた。 「しょーちゃん、水臭いでしょ〜?俺としょーちゃんの仲じゃない? 彼女から逆プロポーズってどーゆーことよ?」 「おまえ、どっから見てたんだよ?!」 「しょーちゃんが彼女おっかけて下りてった後から」 「ずっと?」 「ん、ずっと」 「・・・・・・」 「で?どーすんの?マスオさん」 「そりゃ・・・・・受けて立つよ!」 「それでいいわけね?いきなり一児の父だよ?」 「うん」 「よし!よく言った!!それでこそしょーちゃん!!やっぱあんたはすげーよ!」 そう言ったかと思うと、またもその場にふらふらと座り込む相葉。 こらー、相葉ー!寝るなー!! 俺は相葉をよっこらしょとおんぶして、階段をのぼった。 マスオさんか・・・・・。 俺、君のマスオさんになれっかな・・・?? いや、なってみせま翔、あ、いや、しょー!! よぉっし!明日からもがんばろーーーーーーーーっ!! 勝手にすぺしゃるさんくす : 櫻井さん&相葉さん |