「絆」 〜 10 YEARS 〜



娘の美羽が生まれてから10年が経った。長かったようで、あっという間のようで。
あの日の朝、薄暗い空にきれいな白い雪が羽のように舞っていたのを思い出す。
美しい羽のように・・・だから美羽と名づけた。

美しい羽のように・・・とはうらはらに、パジャマ姿で髪がこんがらかったままの
美羽が、「ママ、おはよう・・・」と起きてきた。

・・・・・・・・・。
「早く顔洗って、着替えてきちゃいなさい!!」
「なぁに?ママ・・・なに怒ってんの?わけわかんない」

ぶつぶつ言いながら、美羽は出て行った。


キッチンで朝食の用意をしていると、ピンポンとインターフォンが鳴った。

「こんな朝から誰かしら?」とインターフォンに出ると、
「お休みのところ朝早くから申し訳ございません。お隣の影山でございます。
 実は今夜は当家でパーティがございまして、山丘様宅にうかがえないゆえ、
 こんなに朝早くおうかがいしてしまいました。お許しください」
「はい!少々お待ちください!」

うわ、影山さんだ!!(>_<)と、あわてて玄関の鏡をのぞきこんで、
身だしなみをチェックしてから、ドアを開ける。

「どうなさったんですか?」
「今日は美羽様のお誕生日だとうかがいまして」
「あらやだ、美羽、なんか言ってました?」
「あたしは24日が誕生日だから、いっつもクリスマスと誕生日が一緒で、
 サンタさんからもらえるプレゼントも1個なの、と・・・」
「あの子ったら・・・(^_^;)」
「わたくしの友人も本日誕生日で、同じようなことを申しておりました。(^^ゞ」
「そうなんですか(^_^;)」 
「それで、差し出がましいと存知上げつつ、わたくしからもささやかなプレゼントを
 美羽様に・・・と思いまして」
「そんな、申し訳ないです」
「いえいえ、たいしたものではございませんので、ご安心を。
 こちら、わたくしが焼きましたクッキーと、庭にひっそり咲いておりました
 冬薔薇でございます。美羽様のようにそれはそれは可憐でございましたので、
 ぜひ美羽様にと摘んでまいりました。どうぞお受け取りくださいm(_ _)m」
「まぁ、いつもご丁寧にありがとうございます。m(_ _)mさっそく美羽を呼んで
 まいりま・・・」

「あー!!ひつじさんだっ♪」

美羽、せっかく影山さんが美羽様と呼んでくださってんのに、なんなのよ?
その登場のしかたは?!?!(>_<)
まぁ、パジャマ姿じゃなかったのが、唯一の救い。(=_=)

「美羽、影山さんがね、美羽へプレゼントをくださったのよ」
「うわー!!ひつじさんありがとうっ♪これはなに?開けてもいい?」
「どうぞ、お開けくださいませ」

あぁぁー!!きれいにラッピングされてたのを、そんなアバウトな開け方で!(>_<)

「おいしそうなクッキー!!それになんてかわいいバラ・・・☆彡
 ひつじさん・・・いえ、影山さん、ありがとう☆☆☆彡」
「美羽様に喜んでいただけるとは、この影山、ありがたき幸せ・・・」

「ねぇねぇ影山さん」
「はい、なんでございましょう?」

腰を低くした影山さんのほっぺに、美羽がちょこんとキスをした。
おおおおおおおっ!!!な、なんてストレートなっ!?!?

「美羽様は、かなり大胆でいらっしゃいますね」
「そう?えへへへへ(*^_^*)」
「それでは、よきお誕生日とクリスマス・イヴをお過ごしください」
「うん!ありがとぉー!!影山さ〜ん♪」
「ありがとうございました」

私は最後に挨拶するのがやっとだった・・・。我が娘ながら・・・親の面前で・・・
恥ずかしいっ。(*^_^*)

「なんや?朝っぱらから。またお隣さんか?」
またも寝癖頭で、パパがのそのそやってきた。あー、影山さんに見られなくてよかった。
その姿も、娘のキスシーンもね。激怒しそうだし。(^^ゞ

「じゃーん♪」
パパがおもむろにポケットからメガネを取り出して、かけてみせた。

「あ!!影山さんとおんなじメガネ!??ちょっとそれ、高かったんじゃないの?!」
「たいしたことあらへんよ、いや、たいしたことはございません。この程度のことで
 ごちゃごちゃおっしゃるようでは、奥様もケツの穴がちいそうございますね」
「だまらっしゃいっ!!」
「あ、夏菜、なんや、そんなん高く・・・いやホンマはちょい高かったか・・な?
 でも・・・ほら、ボーナスも出たことやし・・・」

私はパパを引っ張ってリビングに引っ込んだ。

美羽は玄関から庭に回って、まだ影山さんの姿を見送っていた。

あと10年で、美羽はどんなレディに成長するんだろう?ちょっぴり楽しみで
ちょっぴり淋しい気も、なんとなくする。

みなさまも素敵なクリスマスを・・・。





BGM : aiko 「瞳」


すぺしゃるさんくす : あいこ、茂さん、影山さん、相葉さん