「絆」 〜LOVE〜



翔太はジュニアサッカーチームに入ってから、練習ばかりしてる。最近話したのって
いつだったかなぁ?
近くに住んでるのに、全然会ってない。学校の廊下ですれ違っても、友達と話してて
声をかけづらい。
想っているのに届かない。そばにいてほしいのに会えない。なんてそこまでじゃないけど、
なんだか西野カナの歌詞みたいだなぁ・・・。

公園のベンチでぽつんとひとりすわってると、目の前を高校生のカップルが通りすぎた。
何年後かのあたしたちも、あんなふうになれてたらいいのに。
あたしだけがひとりぼっちな気がして、ものすごく淋しくなった。

幸せって平等じゃないよね。

すると、あっちから背の高い高校生のおにーちゃんがやってきて、となりのベンチにすわった。
ぼーっと空を見上げた後、今度は下を向いてしまった。
なんかつらいことあったのかな。あったんだろうな、きっと。

「あーもー、ちきしょー」
おにーちゃんがつぶやいたから、あたしはちょこっとおにーちゃんの方を見た。

「なんかさぁ、不公平だよな。誰にも必ず朝は来るとか、平等とかっつったって、
 全然平等じゃねーし」
おにーちゃんもあたしの方を向いて言ったから、「はぃ」と小さく答えた。

「幸せってなんだろうね?」
「え・・・?」
「オレ、もうわっかんねー!!」
「あたしもわかんない・・・」

あーあ、とふたりでそろってため息をついてしまった。

「で、君はなんでうなだれてるの?」
おにーちゃんがたずねてきたから、あたしは翔太の話をした。
話したいのに話せない、会いたいのに会えない・・・って西野カナみたいな。
あ、そうだ、ママの名前も『夏菜(かな)』だ。(^^ゞ

「そっかぁ、えと、何ちゃん?名前」
「美羽です」
「みうちゃん。携帯とかはまだ持ってないよね?」
「はい、ママがまだダメだって」
「じゃさ、手紙とか書いてみたら?」
「手紙〜??」
「話しかけにくいんだったら、手紙書いてポストに入れとくの」
「えーーーー?!」
「えぇ?!って、よくね?その方が伝わるって!!」
「いまどき手紙って・・・」
「そーゆーのに時代とか関係ないの!!」
「そう・・・ですか?」
「あ、ちょっと待って・・・ぴぴぴぴぴ、まさきどっとこーむ!!」
「それって・・・志村どうぶつ園の・・・?」
「あ、オレもまさきだから。(笑)ごめんごめん。クリスマスイブだからさ、プレゼントに
 手紙添えて渡しちゃおう作戦〜!!」
「でも、クリスマスはどっちかというとプレゼントもらう方で・・・。あたしイブが誕生日なんです」
「え?うそ?!オレも!!」
「そうなんですか?」
「クリスマスイブと誕生日一緒だから、プレゼント1個しかもらえなくて。やっぱ平等じゃねーよなー」
「そうですよね・・・」

長々と話して、結局またふたりでそろってため息をついてしまった。


すると、あっちから見覚えのある背の高さの子が、あたしの方に向かってきた。

「翔太・・・」
「こんなとこで何してんだよ?」

おにーちゃんは、「あ?あぁ!!」と言いながら、翔太とあたしの顔を交互に見た。
「ほら、カレシ迎えに来てくれたじゃん!なんだかんだ言ってこのシアワセモノ!!(>▽<)」

「誕生日の主役がいなきゃダメだろ?みんな待ってるよ。もちろんオレも・・・・・・」
「翔太・・・・・」
「おにーさんはおジャマみたいなんで・・・」
おにーちゃんが立ち上がって帰ろうとした。

「あ、おにーちゃん!すてきなお誕生日とイブをすごしてね」
「おぅ♪美羽ちゃんもね!バイバイ☆」
「バイバイ・・・」

翔太と歩き出そうとしたら、背中から「ちょっとー!まさきーーーーーっ!!」って言う
大きな声がした。

「あんたどこフラフラしてんのよ?!」
「だって、ねーちゃん、オレの肉まん全部食っちゃったじゃねーかよ!!」
「どうせケーキ、誰よりも多く食べるでしょーが?!それに今夜はお鍋だって
 言ったでしょ!!」
「ええー?!ハピバ&メリクリに鍋ぇぇ〜〜〜?!」
「寒いんだから早くしなさいよ!また熱出るよ?!」
「ハイハイ、帰りますーーーーーー」

おにーちゃんの苦悩って、平等じゃないって言ってたのって、肉まんのことだったの??
あたしは振り返ってクスッと笑った。おにーちゃんも、こっちを見て照れ笑いをした。

「なに笑ってんの?」
翔太がまゆをひそめながらあたしを見た。
「なんでもない」
「それよりあの男、誰?」
「やだ、ヤキモチやいてんの?」
「バカか。不審者だったらあぶねーだろ!」
「不審者って失礼だよ。(^_^;)でも心配してくれたんだ?」
「まぁ一応」

一応・・・か。それでもいいや。翔太と少しでも長く同じ時間をすごせたら、
それだけでいいや。

あれ、なんか今、声が聴こえた気がした。

『この世に生を受けたということは、幾多のLOVEの巡りあわせに他ならないのです。
 あなたはまさにその賜物であるということを、そしてあなたがお生まれになった
 今日という日が、どれほど尊い日であるかということを、どうかお忘れなきよう』

って言う影山さんの声が。

影山さんも今頃、お嬢様のお供でバカンス、豪華客船で船上クリスマスパーティ
やってるのかな?
(後日談:この日はケーキ屋さんでケーキを売るお手伝いをしてたって、翌日影山さんから
      聞いてびっくりしたけど(^_^;)、1日遅れのバースデー&クリスマスプレゼントも
      いただいちゃった♪影山さん、ありがとう☆)

「ほら、急いで帰るぞ」って、翔太があたしの冷たい手をにぎった。
「うん」って、あたしもそっとにぎり返した。

いつのまにか、空から美しい白い羽が舞い降りてきた。ママが話してくれた、
あたしが生まれた日みたいに。

無数の雪と同じくらい、翔太とあたしの手の中には、たくさんのLOVEがつまってる。(*^_^*)





勝手にすぺしゃるさんくす:相葉様、影山様

勝手にすぺしゃるさんくすツアー:「LOVE」