「絆」 〜秋空の下の決心〜 空が蒼く高くなった。 秋らしい雲がところどころに浮かび、流れてはちぎれてゆく。 あれから2年もの月日が経つんだなぁ。 観覧車の中で、人生の大きな決心をしてから。 今日は、彼のお気に入りのワゴンで公園までやって来た。 彼の仕事は平日休みだから、土日ほどではないだろうけれど、ピクニックの親子連れやら ベンチで昼寝と決め込む人など、けっこういるのね。 芝生も広く木々の緑も浴びられるから、この辺りの人たちは、こうやってつかの間の自然を 感じにここにやって来る。 芝生の上にシートを広げてすわるより、じかにすわる方が土の感触が伝わって、なんとなく 心地よい。 私は美羽をひざの上に抱っこしたまま、彼の隣りに腰を下ろした。 「今日はホンマに気持ちええなぁ。陽もあったかくて」 「そうだねー」 「たまにはええね、ぼーっとするのも」 「うん」 「なんて、ワシはいつもぼーっとしとるけどな」 「うん」 「そこ!肯定するとこやないやろ?!」 「あははっ」 このたわいのない会話(ボケとツッコミ?)が、おだやかな気持ちをもたらしてくれるのだ。 「おじいちゃん、おばあちゃんになっても、ここでこんなふうにしてるかな?」 「しとるやろ、きっと」 「おじいさん、いい天気ですねぇ、とか?」 「ばあさんもシワが増えたなぁ、とか?」 「シワはよけいじゃあっ!」 「ハハハ!!」 そっと彼の肩にもたれた。彼ももたれ返す。 美羽は私の腕の中で眠っている。 静かな秋の日の深い決心。 幸せでいようね。 |