翔太から電話が来た。公園で待ってるだって。 こんな寒い日に公園?なんだろ? 「ママ、行ってきます」 「気をつけて行ってくるのよ」 「はーい」 あたしは今年初めてのダウンジャケットを着て、外に出た。 ここに越してきてから何年もたって、近所のおうちも どんどん変わってく。 ♪かわらない〜まちーなみ〜♪※なんてうたがあったけど、 誰のうただったかな? うちのお隣にも、おっきいおうちができた。 お姫様が住んでそうな家。 どんな人が越してくるんだろう?きっとお金持ちなんだろうな。 公園のすみっこに立ってる子がいた。翔太だ。こんな寒いのに、 また薄着でポケットに手つっこんで立ってる。 「そんなカッコしてたら風邪引くよぉ?」 「だいじょぶ」 「だいじょぶって、鼻出てるし。しょーがないなぁ」 「ティッシュくらい持ってるよ!」 「だったらふきなよ?!」 翔太はしっかりしてるようで、どっか抜けてる。かっこいいのか かっこ悪いのかわかんない。 でも女子にはけっこう人気あるみたいなのが、ちょっとムカつく。 「で、なんなの?」 あたしはちょっと強気に言ってみた。 「これ・・・」 翔太は袋を差し出した。 「ちょっと早いけど、バースデー&クリスマスプレゼント」 「早すぎるよー?!」 「いや、うち23日から旅行に出かけちゃうからさ」 「開けてもいい?」 「うん」 小さなリボンのくっついた、ふつーの本屋さんの袋の中から 出てきたのは、絵本だった。 「青い鳥」の絵本。 「ほら、美羽、このイラストレーター好きだろ?」 「うん!ありがとう♪」 青い鳥は、とおくとおくじゃなくて、すぐ近くにいた、って話だよね。 このイラストレーターの絵がすごくきれいで、大好きなんだ。 翔太はそのこと、ずっと覚えててくれたんだね。 「ありがとう、大切にするね♪」 「うん」 翔太は照れたように笑った。あたしは翔太の笑った顔が好きだ。 プレゼントを大事にかかえて家に帰ると、ママが待ち構えたように 聞いてきた。 「翔太くん、なんだって??」 「教えなーい」 「何よ〜?」と、ママはやたらうれしそうだった。 そっとページを開いてみた。きれいな青。 青、あたしがいちばん好きな色。空、水、宇宙から見た地球。 そして誰かが飼ってた大切な鳥の色。 今夜はこれをだきしめて眠ろう・・・。 ピンポンとインターフォンが鳴った。 「ごめん、美羽、出てくれない?手が離せないの」 ってママが言うから、あたしはそのままドアを開けた。 「山丘様のお嬢様でいらっしゃいますか?はじめまして。 わたくしお隣に越してまいりました、宝生家の執事で、 影山と申します。お父様かお母様はいらっしゃいますか?」 「はい・・・」 あたしは玄関からママを呼んだ。 「ママー!!おとなりのひつじのおじさんだって!」 (お、おじさん・・・?ってつぶやくおじさんの声が聴こえたような?) 「失礼ですが・・・山丘様のお嬢様、わたくしは羊のおじさんでは ございません。(^_^;)執事というのはですね、あの国民的アニメ・ ちびまる子ちゃんでいうところの、花輪くんの家のヒデじいで ございます」 「あ、そっかー!わかった♪」 「美羽。そんな大声出さないの。インターフォンに出てから ドアを開けるように、すぐにドアを開けちゃだめって、 いつも言ってるでしょ?それにひつじって・・・」 ひつじさんの姿を見たママが一瞬黙った。 「これはこれは、山丘様の奥様でいらっしゃいますか? はじめまして。わたくしお隣に越してまいりました、 宝生家の執事で、影山と申します。ご挨拶が遅くなりまして 申し訳ございません。主が多忙ゆえ、執事のわたくしが 主に成り代わりまして、ご挨拶にまいりましたことを お許しください」 「はぁ、それはご丁寧に・・・」 「それと、こちら、ご挨拶のおしるしに・・・ お口にお合いになりますかどうか定かではないのですが・・・ わたくしの作りましたローストビーフでございます。 よろしかったらお召し上がりくださいませ」 「ママ!!ローストビーフだって!!そんなの食べたこと ないよね?!♪」 「美羽・・・(^_^;)まぁ、そんな高価なものをいただくなんて・・・ かえって申し訳ないですわ」 (あれ?ママったら『ないですわ』だって!ぷぷっ(笑)) 「いえいえ、料理はわたくしの単なる趣味でございます。 どうぞおおさめください」 「ではありがたくちょうだいいたします」 「美羽ー!!玄関で何騒いどるん?」 パパが寝グセ頭のまんま、廊下を歩いてきた。 あー、なんか恥ずかしいよぉー!!(>_<) 「これはこれは、山丘様でいらっしゃいますか?」 「ハァ・・・」 「はじめまして。わたくし、お隣に越してまいりました 宝生家の執事で、影山と申します。本日は、多忙の主に 成り代わりまして、ご挨拶にまいりました」 (ひつじさん、おんなじこと言うの3回目だよね?(^_^;)) 「あのー、失礼ですが・・・山丘様、どちらかでお会いしたことは ございませんか?」 「いや・・・初めてやと思いますけど?」 「そうですか・・・わたくしの思い違い・・・ですね。 失礼いたしました。あぁ、とんだ長居をしてしまいました。 今日はこれにて失礼いたします。 今後ともどうぞよろしくお願いいたします」 「こちらこそよろしくお願いいたします。 ご丁寧にありがとうございました」 3人そろって頭を下げたら、ひつじさんはもっとひくーく 頭を下げてから帰ってった。 「わーい!ローストビーフだ♪ローストビーフだ♪」 「美羽はゲンキンやなー(^_^;)」 「せっかくだから、今晩ローストビーフいただこうかしらね」 「ママのおかずとはずいぶん違うね」 「うるさい!(=_=)」 「でもさぁ、あのひつじさん、ちょっとかっこいいよね☆」 「美羽には翔太くんがいるでしょ?」 「翔太は翔太、ベツ!!ひつじさんみたいな人もいいなぁ☆」 「そうねぇ、ママももう少し若かったらねぇ・・・(*^_^*)」 「二人とも何言うてんねん?!(-_-メ)」 振り返ると、パパがちょっとにらんで立ってた。(^_^;) 「さ、夕飯のしたくしたく・・・」 ママはあわててキッチンに引っ込んじゃった。 あたしは・・・翔太から早いバースデー&クリスマスプレゼント もらっちゃったし、かっこいいひつじさんにも会えたし、 なんかものすごく幸せだぁ♪ 青い鳥が幸せを運んできてくれたのかなぁ? しあわせはすぐそばにあるんだね。 BGM : aiko 「ずっと」 ※aiko 「三国駅」の歌詞です すぺしゃるさんくす : あいこ、茂さん、毒舌執事・影山(^_^;) そして幸せの青いインコ・ピーちゃん |