「絆」 〜あたたかいひかりのようなうた〜 毎年すこしずつ早くなるクリスマスデコレーション。 私は美羽を連れて、そんな街中を歩いていた。 駅前で、寒い中こごえそうになる手を温めながら、 ギターを奏でつつ歌ってる女の子を見かけた。 かなしくてせつないのに、人のこころをあたたかくするような歌。 私と美羽は立ち止まって、そのきれいな歌声に耳をかたむける。 いつしか周りには人だかりができていた。 ニット帽からのぞいた小さい顔、細い指、華奢なからだからは 想像できないようなくらい、力強い声。 でも繊細できれいで泣きたくなるような声。 人の足を止めるくらい、こころに響いてくる曲。 「おねーちゃん、おうたじょうずだね」 美羽が私を見上げて言った。 「お歌、好きなんだね」 私は答えた。 女の子は、歌い終わった後、恥ずかしそうに笑った。 周りの人々が一斉に拍手した。美羽も一生懸命手を叩いていた。 私は、なぜか湧き上がる涙をこらえるのに必死だった。 音楽は人のこころをやさしくしたり、力づけたりする。 「ママ、かえろう?パパがまってるよ」 「そうだね、パパが待ってるね」 パパはおこたできっと寝てるね。風邪引かなければいいけど。 あたたかいひかりのようなうたを聴いて、からだもこころも 温かくなった。 パパが待ってる灯りのともったおうちに帰ろう。 BGM : 中村中 「友達の詩」 |