「絆」 〜さあ 休日はどこへ行こう?〜


「行ってこいよ」と言われて、出かけることにした。いつも頼りになるダチ。
去年もヤツが美羽を預かってくれて、夏菜と二人で出かけたんやった。


「どこ行こか?」
「うーん、特にないなぁ」
「張り合いないやっちゃなー!」
「だって、急に言われたって・・・」
「今度の休みはどっか行こうって、こないだから言うとったやないか!」
「なんで怒ってんねん?!」
「オマエがはっきりしないからや!」

せっかくの休日が、口ゲンカで始まってもうた。


「あー、なんかおいしいもの食べたい・・・」

夏菜がぼそっと言うた。

「それ、それや!行こ行こ!!」
「どこへ?」
「中華食いに横浜。その後観覧車!」
「えー?今からー?そんなに長い間、美羽のめんどう見てもらったら
 悪いよ」
「大丈夫やて!ヤツとは長い付き合いやから、ワシの性格も
 ようわかっとるし」
「・・・うん・・・」


夏菜と二人で電車に乗るのは、ほんま久しぶりやな。
出かける時は車か、電車じゃいつも美羽が二人のひざの上におって、
マシンガンのようにしゃべくる美羽の相手するだけでたいへんやった。


観覧車・・・ワシらにとっては想い出の場所。
ワシが夏菜と一緒になりたいと思ったのも、美羽を連れて乗ったのも、
この観覧車やった。
その前に中華中華!


「ここ、うまそうやないか?」
「でも・・・高そうだよ?」
「ほんじゃ、もうちょっと見てみるか、庶民的なとこ(^_^;)」


初めて二人で中華街来た時は、ぶたまん食って、その後試食のお菓子
食うただけやったなぁ。
それと・・・これこれ!!


「夏菜さん、こんなん似合うんとちゃいますかぁ?」

ワシは、真っ赤なチャイナドレスを手に取った。

「それ、めっちゃイヤミなんですけど?こんなサイズが入ると
 思っとんのかー?!」
「・・・はい・・・・・」

ワシはおとなしく、チャイナドレスを元に戻した。


だんだん陽が傾き始めた。アカン、めっちゃきれいな夕陽、観覧車で
見たいんや!!


「夏菜!中華は後!!観覧車行かな!!」
「えー、おなかすいたよー」
「美羽みたいなこと言うて!しょーもなー!!」


ワシは角の店でぶたまんを2個買うて、1つ夏菜に渡した。
・・・あん時と同じやんか・・・?


平日の観覧車はそんなに混んでないから、ちょっと待っただけで
すぐ乗れた。
夏菜は、まだ食いかけのぶたまんを手に持っとる。ムード感ゼロ。(-_-;)


そんなにええ天気やないけど、オレンジとグレーのマーブル模様の空を
見上げて、夏菜が言うた。

「やっぱりここから見る夕焼けはきれいだね」
「そうやな。想い出の場所やし」


向かい合わせにすわっとった夏菜が、ワシの隣りにすわった。
少しロマンティックムード漂ってきたか?

ワシはそっと夏菜にキスをしようとした・・・ら・・・。

「ちょっと待って!ぶたまんの味がするよ?」

ロマンティックという文字が、ワシの頭の中でガラガラと音を立てて
崩れた。

「ぶたまんでもなんでもええやないかいっ?!」

ワシは半分ムリヤリ夏菜にキスをした。けど、夏菜のからだから、
力が抜けていくのがようわかった。

夏菜は「えへへ」と照れ笑いをしとる。ワシもなんや照れ臭くなって、
一緒に笑った。

でも、とりあえずキスの前に、ぶたまんはやめとくべきやな。

夏菜とのロマンティックになるはずのキスは、やっぱりぶたまんの
味がした。(^_^;)





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