「絆」 〜Love and Peace〜


ある晴れた休日の朝、新聞を広げていると、世の中は悲しいできごとばかりで、
時々鬱屈とした気分になってくる。

ふとワシは口に出してみた。

「なぁ、ワシが死んだらどうする?」
「え?」
何言ってるの?といった顔つきで、夏菜がワシをのぞき込んだ。

「そうねー、高いところの電球が取り替えられないし・・・ちょっとした買い物の時、
 美羽を見ててもらえないし・・・」
「そんなコトかいなっ!?」
ワシが憤慨しとったら、夏菜がニヤッと笑った。

「じゃ、私が死んだらどうするの?」
切り返しよったぞ?

「そうやなー・・・うーん・・・って、そんなん考えたないわー!」
「言い出したのはあなたの方でしょー?」
確かに、と苦笑いしてもうた。

「私だって同じだよ。考えたくもない。想像するだけで怖い」
穏やかな顔つきの中に、昔見たことのある憂いを帯びた悲しみがこぼれとった。
「ごめん・・・ヘンなこと言うて・・・」

世の中の情勢のせいやろか、ふだんアホなことばかり言うとるワシでも、さすがに生きることを
マジメに考えたりしとる。
長生きせなアカンなー、こいつらのために。

「あなただけが頼りなんだからね」
夏菜がうれしいことを言うもんやから、思わず顔がにやけてもうた。
「さ、○○ドラッグまで付き合ってくれる?お1人様1つ限りなの、ティッシュペーパー」
「ワシはティッシュレベルなんかぁぁぁっ?!?!」
「何言ってるの、あなたが花粉症でたくさん使うからでしょ?さ、早く行こ!!」

なんやー、せっかく感動しとったとこやったんにー!
そう思いつつも、美羽をベビーカーに乗せて、「はよしいやー」なん言うとるワシ。

桜のつぼみが少しずつふくらんできた。空気は冷たくても、陽射しはすっかり春の明るさや。
ベビーカーを押すワシの腕に、夏菜がそっと腕を絡ませてきた。
こういう何気ないひとときが幸せっちゅーもんなんやなぁ・・・。

Love,Love,Love,Love Love and Peace! あれ?こんなんどっかで聞いたことあるような?(笑)