「絆」 〜美羽ちゃん、大暴れの巻〜
今年もまた、クリスマスイブがやってきた。
朝からケーキを作ろうとしているのだけれど、今年は去年よりもさらに目が離せない。
作る、どころではないのだ。

「ママ!みうもーーーーっ!!」
そう言って、ケーキ作りをいっちょまえに手伝おうとする。
「ありがとうね。でも、美羽にはまだちょっとむずかしいんじゃないかなぁ?」
「やーーーっ!!やう(やる)ーーーーーーーっ!!!」
「はいはい・・・」

トホホな気分で泡立て器を渡すと、キャッキャ言いながら、ボールの中をかき回している。
いや、美羽にはドロ遊びと同じ感覚なのかもしれない。
あぁ・・・周りにボタボタたれて、どんどんケーキの素が減ってゆく・・・・・。

「美羽たん、ありがとうねー、今度はママがやるね」
「やーーーーっ!!もっとぉぉぉっ!!」
「ママにもやらせて?ね?」
「んもーーーっ!!」

美羽は怒りながら、バタバタと奥の部屋に走って行ってしまった。

はー・・・・・。恐るべし、2歳児よ。まるで怪獣みたいだわ。


とりあえず美羽はちょっとほっておいて、この間にケーキ作りを進めてしまおう。

集中してやったせいか、オーブンに入れるまで、割と短時間でできた。
一安心・・・と思ったとたん、やけに静かな美羽が気になり始めた。
この静けさ。なんだかいやな予感がする。

奥の部屋にあわてて走ってゆくと・・・・・
そこは一面の銀世界・・ではなく、ああっ!!!・・・・・・・・・(呆然)

「美羽ーーーーっ!!」
私はへなへなとその場に座り込むかの落胆を覚えた。

「マーマ!きれいでと〜(きれいでしょ〜)?」

この部屋で何が起こっていたか・・・。説明するのも悲しいくらいだ。
どうやら寝ている部屋の片隅にあった、パパのパイプ枕を持ち出したらしい。
そして、枕カバーをはずし、枕のファスナーを上手に開けることができた様子、
部屋一面に、パイプ枕の中身、ブルーの小さなプラスチック片がばらまかれている
ではないかーーーっ!?!
枕は・・・?!袋だけが、虚しく床に横たわっていた。

「ホンマ、ブルー一色できれいやねー・・・なわけないやろがーーーーーっ?!」
思わずパパのように怒り出してしまった。

「えっ・・えっ・・・・・」
美羽が泣き出した。
はーーーーーーーっ・・・泣きたいのはこっちだよ?!

「ママ、こわーい!!やーーーーっ!!」
足をバタバタさせて、泣きながらじだんだを踏んでいる。
だから、泣きたいのはこっちだってば・・・。

「わかった、わかったから、美羽。今度はもうこんなおいたしないのよ?いい?」
美羽をだっこして、頭をなでなでする。
「ママーーーーーッ!!」
「はいはい・・・」
泣きじゃくる美羽を、しばらくの間ぎゅうっと抱きしめていた。


「ただいまー」
ああ、パパが帰ってきちゃったよー。今日は早く帰ってくるって言ってたんだったっけ。

「こんなとこで何してん・・・・・ありゃ・・・ブルー一色できれいやなぁ・・・」
ちょっと絶句している。
「よっぽどおもろかったんやろなー?こりゃ片付けがたいへんやわ・・・」

「パパーッ!」
走り出したのは美羽だけではない。私もだった。
そして、美羽と一緒に彼のふところにすがったのであった。

「何してんねん?!美羽みたいに」
「だってぇ・・・」

あきれながらも彼は「はいはい、美羽ちゃん、夏菜ちゃん」と
背中をぽんぽんしてくれた。


仲良く3人で枕のパイプ片を拾い、枕に元通り詰め終わった頃には、
オーブンからケーキの焼けるいい匂いが漂ってきた。

さ、ママはまだまだ忙しい。
ちょっと遅くなっちゃったけど、急いでお誕生日の用意するね?


いよいよいたずら盛りになって、大暴れの怪獣・美羽、
今年もお誕生日おめでとう&メリークリスマス☆☆