「絆」 〜夏・浴衣・花火〜



隣の市で花火大会があるというので、3人で出かけることにした。


美羽は、いつものごとく、帯とリボンの色を気にしている。

「ママー、これでばーーーーっちしだよね☆彡」
「いつにも増して気合入ってるね?」
「だって、クラスの子に会うかもしれないじゃん!!」

なるほど・・・男の子に会ったら、かわいく、女の子に会ったら、
さらにかわいくいたい、というわけか。
小さくても女だなぁ、美羽は・・・。(^^ゞ


「こんなんでええんかー?」

パパはいつものように、テキトーに浴衣を着て帯を締めてる。

「もうちょっとこう、帯は下で締めるとさー、粋に見えるんとちゃう?
 それにほら、出っ張ったおなかも隠せるし」
「腹出てんのはオマエの方やろ?!」
「はい・・・」

返す言葉もございません。(-_-;)


なんだか久々に見たなぁ、パパの浴衣姿。浴衣を着てる男の人って
みんなかっこよく見える。パパでさえも。(^_^;)


はぐれないように、そう、はぐれた刑事にならないように・・・あ。
もとい。
3人で手をつないで歩いた。横3人は通行の邪魔だから、縦3列。

川原の土手は、もう人がいっぱい。橋の上は交通規制。
どこかいいとこはないかと探していると、美羽が手を振りながら
急に駆け出した。

「急に走ったら危ないってば!!」と止めようとしたけど、

「ナオキくーん!!」

美羽、小さくても女だ。最近翔太の話が出てこない。
いいなずけだったはずの(そんなのは決めてないが(^_^;))翔太。
ナオキくんの一団に、美羽は囲まれて、満面の笑み。
末恐ろしい・・・。


「あら、美羽ちゃんのママ?いつもナオキがお世話になっております」
「こちらこそお世話に・・・」
「美羽ちゃんのママって、とってもきれいなんだよって、いつもナオキが」
「やだそんな・・・オホホホ」

ナオキ、できる!!最近の子供の恋愛事情は発達している!!
ナオキを筆頭に、ゆー、タケル、etc・・・
まるでイケメン写真集が出来上がりそうなメンツだ!!


「美羽ちゃんのパパも、浴衣お似合いね」
「そんなことないんですよ〜、もうおっさんで・・・」
「そーなんです、おっさんなんです、て、オマエもおばちゃんやんかー!!
 ほーら、アメちゃんあげるさかいって、すぐ配るんやろ?」
「すみません・・・ちょっと・・・」

「私のどこがおばちゃんで、アメちゃん配るってのよ?!」
「こらすんまへん。つい口がすべってもーた」

「仲がおよろしいのねぇ。いつまでも若くていいわぁ、
 美羽ちゃんのパパとママ」

ナオキママがお上品に笑う中、パパと私は引きつって笑っていた。


大きな花火大会じゃないから、花火は時々ぽつんぽつんと上がった。
東京で初めて見た、ビルの屋上の花火よりずっと小ぶりな花火だけれど、
穏やかで幸せな気持ちになった。


あと何年、美羽はこうやって手をつないで、花火を観に行ってくれるかなぁ?
あと何年後には、隣に誰がいるのかなぁ?

花火の赤が、美羽の頬に映るのを、ちょっぴり切なく見ていた。







BGM : aiko 「花火」「瞳」


勝手にすぺしゃるさんくす : 茂さん、雄&直、たけるくん、あいこっち