「絆」 〜女心と秋の空〜
「なんであなたっていっつもそうなのっ?!」
「いっつもいっつも、て何やねん?!」

朝から、夏菜のキゲンが悪い。

「だいたいあなたは、女のキモチがまるでわかってないのよ!」
「女のキモチがわかってないーーー?!」
「そうよ。こんなこと言ったら相手がどう思うか、そう、女心ってモンが
 まるでわかってないのっ!」
「なんでソコまで言われなアカンのや?!」

なんなんやろ?更年期か?生理前か?(失礼・・・)

夏菜とワシの間にすわっとる美羽が、かわるがわるワシらの顔を見比べとる。

「ワシが一体何したっちゅーねん?!」
「ホラ、わかってない!自分でよーく考えてみることね!」

・・・・・・・・。ワシが何した?
朝起きて、顔洗って、歯みがいて・・・
おっと、美羽がワシに抱きついてきよった。ほーら、美羽かて心配して・・・

「パーパ!だめっ、よ?」

オイオイ、美羽までワシを悪者扱いかぁ?!
女はやっぱり女の味方なんやなぁ・・・。
ショック・・・淋しい・・・。

話を元に戻して。

歯みがいて、ソファで横んなって、新聞読んで、
キッチンにいる夏菜のケツさわって(失礼・・・)、朝メシ食って・・・。

!!
ビデオテープ巻き戻すみたいに、ワシは記憶を逆回転した。

キッチンにいる夏菜のケツさわって(しつこい・・・)、

「お?オマエ、少し太ったんとちゃうかぁ?どーせ美羽と一緒にお菓子
 食うてんのやろー?」

・・・・・・・・。
コレか?!?!

ワシは夏菜の方を向き直った。

「なー、別に太ってもええやん?ぽっちゃりしたオマエもかわええでー?」
「何よ、今さら」
「そんなん怒んなやー?シワ増えるでー?かわええ顔が台無しや」
「誰がシワ増えるってェッ?!」

アカン!逆効果や。
こういう時は・・・

「ごめんなぁー、許してぇなー?ね?ね?夏菜ちゃん。夏菜ちゃーーーーん?」

ワシはベタベタと夏菜にまとわりつく。

「あーもー、しつこいっ!!くっついたら暑苦しいでしょーーーっ?!」
「ええやん、ええやん、仲良うしよーーーーー?」

すると、ワシらの足下にすわっていた美羽が、立ち上がって、二人の足にぴとっと
くっついた。

「みうもなかよしー☆」
「せやなー、美羽も一緒に仲良しやなぁ?」

ワシは美羽を抱っこした。
夏菜は、まったくもー、という顔をした。

でもワシにはわかるで?
これでもずっと夏菜を見てきたんやからな。
しょーがないなぁって、ワシを許しとるっちゅーコトを。

あー、外はええ天気や。

窓を開けて、うーーーーーんと伸びをすると
「空が高いね」
と、夏菜が隣りで空を見上げる。

ずっとずっと一緒にこうやって並んで生きてこ。
ワシは夏菜の肩をぎゅっと抱いた。

夏菜はチラッとワシを見て、くすっと笑った。

「何がおかしいねん?」
「別に・・何にも・・・」

女心と秋の空かぁ。
ホンマに変わりやすいわ。(笑)