「絆」 〜Sakura for You〜



「おかーちゃん、支度まだかいな?」

パパがせかす。

「ちょっと待ってぇなぁ。それとおかーちゃん言うのやめてくれへん?」

私は口紅を塗りながらちょっとむっとする。あ、はみ出してもーた。

「話しかけんといて。はみ出してもーたやん!」
「別に誰も気ィつかへんて!それに今日の主役は美羽なんやから」


確かに。今日は美羽の幼稚園の入園式。

あっという間のようでいて、さまざまなことがこの5年間にあって、
その中の4年間が美羽との歴史。


やっと支度が済んで玄関に行くと、いつもよりちょっとだけおめかし
&おすましの美羽が言う。

「ママ、おりぼんちゃんとついてる?」
「大丈夫、かわいくついてるよ」

美羽は、大好きな翔太くんと同じ幼稚園なものだから、幼いながらに
気合いが入っているらしい。


幼稚園へ向かう途中で、翔太くんたち家族に会い、お互いに挨拶する。

美羽は恥ずかしそうに照れるかと思いきや、翔太くんに駆け寄って
一緒に歩いている。

私たちママ同士は、思わず顔を見合わせてしまった。翔太くんのパパも
うれしそう。
美羽のパパだけが、哀愁の漂った背中、いや、淋しそーーーな
顔をしていた。


「さくら、まださいてるね」

美羽が、幼稚園の門のところにある桜を見上げて言う。

「ホントだ。はっぱがでてきちゃったけど、まださいてるね。
 きょうのみうちゃんのりぼん、さくらのはなみたい」

翔太くんが言うと、美羽は「えへへ」と笑った。

この笑い方、パパに言わせると私によく似ているらしい。


もう4歳、でもまだ4歳。美羽の未来にはどんな花が咲くのだろう?


桜のアーチが、美羽をあたたかく迎えてくれているようだった。




BGM : TOKIO 「花唄」 (桜の季節にはやっぱりこれ!)