「絆」 〜 盛夏 〜




開け放った窓から、湿った風が吹き込んでくる。

風に乗って響いてくる、遠くに踏み切りの音。うるさいほどの蝉の声。

虫取り網を振り回す、近所の男の子。暑さに少しうなだれて見えるひまわりの花。

今年も夏が来たんだなぁって実感する。


今年の花火大会は、あいにくの空模様でよく見えなかった。

それでも例年のように、ゆかたを着て、3人で川原まで見物に出かけた。


美羽は、町内のおまつりで、男の子たちに会うのを恥ずかしがっていたけど、
「金魚すくいやるよ」と言う誰かの声に、元気よくついて行った。


ちょこっとずつお姉さんになっていく美羽。いつの間にか届かないところに
行ってしまうのだろうか。


「ママ、何してるの?」と言う美羽の声がした。

縁側で外を眺めながらぼーっとしてしまった。

「もうお昼だよ。美羽おなかすいちゃったよ」
「ごめんごめん。すぐにお昼にするからね」

よっこいしょと腰を上げた。私も年取ってきたなぁ。


パパは相変わらず。おしりをぼりぼりかきながら、ごろんと昼寝している。


「今日はなに?」
「冷やし中華だよ」
「美羽も手伝う!!」


あっという間に過ぎてしまう短い夏を、家族でこうして楽しめることを
めいっぱい感謝したいと思う午後だった。






なんとなくBGM : aiko 「ウミウサギ」