「絆」 〜春・三月・卒園〜

「今日はおとーちゃんとお風呂はいろか?」

美羽に言うてみた。

「えー、おとーちゃんと?なんでー?なんでおとーちゃんとはいらなあかんの?」

また美羽はこまっしゃくれた口をきく。(=_=)

「ほら、おかーちゃん、まだお片づけしとるやろ?そやから、今のうち美羽は
 お風呂入って、出てきたらおかーちゃんのお手伝いするくらいやないと」

「でも、おふろからでたら、はやくねなさいって、おかーちゃんいうで?」

「そうやね。でも美羽が散らかしたおもちゃ、お片づけするのかて、
 おかーちゃんのお手伝いになるんやで?いっつもおかーちゃんがほとんど
 片付けとるやろ?美羽も幼稚園卒園して、4月からもう1年生なんやから。
 自分のこと自分でせな」


そうや。美羽が産まれてから、もうそんな月日が経ったんや。
長かったようであっという間のようで・・・いつの間にかワシにも夏菜にも
シワが刻まれた。
こころにも年輪みたいにシワが刻まれんとちゃうやろか?脳はシワが取れてく
みたいやけどなぁ。
髪も抜けるわなぁ。なんや淋しくなってもーた。


「おとーちゃん、みうあつくなっちゃったよ。もうでる」

「まだつかっただけやないかい」

「やだ、あつい。でるーーーーーー!!」

「おとーちゃん、あっついおふろはいると、おはだ、よけいかんそうするねんて、
 だれかがいうとったで?」

「ホンマ?でもぬるいのはさっぶいやないか」

「さっぶいのはおとーちゃんのおやじギャグやんか」

「そやなぁー、美羽ええこと言う・・・ってちゃうわ!!ボケ!!」


こんな会話も風呂も、あと何年美羽は付き合うてくれるんやろなぁ?

「お父さん、マジうざ!!」って言われるんかなぁ?


「みーう、でるもーん☆」

あ!そんな感慨にふけっとったら、美羽がさっさと逃げ出した。


「園児逃亡中、緊急逮捕願いまぁす!!」

「園児、逮捕いたしました!!」

そう言いながら風呂のドアを半分開け、夏菜がぶつくさ言う。

「山丘刑事、ちゃんと見ててもらわんと困るんだよ?
 いつまでも新人の気持ちのままじゃ、後輩に先越されるぞ?」

「はい、もうとっくに後輩に先越されてます・・・。
 そうそう、関係ないけど、カツーンってかっこええね。こんなん腰に巻いて」

「山丘刑事、カツーンの踊りは完全に間違っております。よって、
 至急風呂交代お願いします。後がつまっております」

「了解いたしました・・・ってまだ洗ってへん・・・」

あわててごしごし洗い始めた。おかーちゃんはやっと引っ込んだ。


「おかーちゃん、おとーちゃんとなにおはなししてたの?たのしいおはなし
 してたでしょ?カツーンがどーしたの?みう、かめむしくんすき☆」

「かめむしくんじゃなくてかめ・・・っていうより美羽の好きなのは翔太くんでしょ?」
「だってそれはべつぅ〜☆べつなんだもん☆でもやまぴもすき☆」

「あ、そう、じゃ美羽は、将来女優さんにでもなって、かめむしくんややまぴと
 競演してみたら?」

「えぇ☆どーしよー?!みう、かめむしくんとやまぴ?どーしよー?!しょうたくんに
 おこられちゃう!!」

「そうね、美羽は翔太くんと結婚するんだもんね?」

「うん。やっぱみう、しょうたくんのおよめさんになる」


あー、やっと洗い終わった、やれやれ・・・とワシがバスタオル巻いて出て行くと、

「やだー、おとーちゃん、バスタオル落ちそうだよ」

「腰に巻いてみた。カツーン」

「いいから早くふいてあがりなさい!!」

「おかーちゃん、おとーちゃんのおかーちゃんみたいだね?」

「そやなぁ、田舎のおかーちゃんに似てきたわ」

「おかーちゃん、おばーちゃんや」

「誰がおばーちゃんだって?!」

待てーーーーー!!きゃーーーーーーー☆

相変わらずにぎやかやわ。でもにぎやかがいちばんやな。

「おとーちゃん!!いつまでカツーンやってんの!!」

「すんません・・・・・」


鏡の中のぞいて、白髪の有無を確認。よし、まだない模様。

「あれぇ、夏菜、ワシのくるくるドライヤー知らん?」

「もー、いつものとこにあるでしょー?」

「ないからきいてるんやないか」

「おとーちゃん、このくるくるどーやるの?」

「あー、美羽、おとーちゃんのドライヤー返しなさい」

「みうもくるくるするぅ〜」

「返しなさいって!!」

「やだぁ〜、みうもくるくるするの〜!!」

「山丘刑事、美羽の身柄及び、くるくるドライヤー確保いたしました!!」

「了解!!」


ホンマに騒がしい家。でもこの騒がしさが幸せなことなんやろなぁ。





BGScene : 某ライヴにて不動産屋の話してた茂さん☆勝手にThanks