「絆」 〜うるわしき夫婦よ〜 「ねぇねぇ、ちょっと聞いてよ?」 私は、ソファでぐだっと寝ころんでいる彼に話しかけた。 「なんや?」 「今日、公園で何て言われたと思う?」 「あー、今日もあっついなァ。こんなんで夏んなったら、どんだけあつーなるかかなわんわー」 「そんなことで、イラッとするワケないでしょっ?!」 「じゃ、何やの?」 「山丘さんの旦那様って、優しくていいわねぇ」 「誉められとるやん?」 「続きがあんの!!」 「やっぱトシが離れてると違うわねーって言われたの!」 「え?ワシのトシ言うてなかったん?」 「うちの、34歳なんだけど?って言ったら、ウソーッ!?!もっと行ってるのかと思った!って 言われたのよ?!」 「フケて見られんのはいつものことや」 「って、それで平気なの?!」 「あんまりコーフンせんと・・・美羽が起きるで?」 「ほら!生え際だって後退し始めてる!あなたが時々リーゼントなんてするからよ?!」 「男らしゅうてええやないかい!」 「それでハゲたらどないすんねん?!」 「ハゲハゲ言うな!オマエはワシがハゲたらイヤなんか?!」 「・・・・・そりゃー・・ハゲるよりはハゲてない方がええやん・・・山丘さんの旦那様、若くて ステキねって言われたいやん・・・」 「夏菜・・・」 ソファに二人並んですわって、しばらくじっとしていた。 彼の肩に頭をもたれかけて。 「ワシは、オマエがデブんなっても、シワ増えても、かまへんで?」 「うちも、ハゲでも許したるわ。じゅうぶんええパパやし旦那様やし」 山丘夏菜でよかったと思った、蒸し暑い梅雨の夜。 |