「絆」 〜やっぱええなぁ、これ☆〜


天気ええし、めずらしく日曜休みやし、どっか行かなもったいないわー。
っちゅーわけで、今日もマイカーでお出かけですよーん。

「よし!ほな、成ちゃんまんカーブで行くで〜?」
「なんなの?その成ちゃんまんカーブって?」
困惑した夏菜を尻目に、ワシは愛車をスタートさせる。
最近かわいがってやってへん成ちゃんまん1号、よろしゅうたのむでー?

「今日はこんなにいい天気だから、あの公園はけっこう混んでるんじゃない?」
「せやなー。でもええやん、ドライブと行きましょうや、奥さん」
「いったい誰なんだよ、それはァーっ?」
夏菜のツッコミがやたら気持ちええわ。

公園の入り口近くから、あれれれ・・・。
「並んでおります、並んでおります・・・こりゃーもはや渋滞かー?!」
「今度は実況かよ?」
「この後一体どーなってしまうのかァァァーーーーーっ?!」
「・・・終わったよ、その番組は・・・」
夫婦漫才をかましつつ、ようやくパーキングに駐車できた。

「駐車はええけど注射はいやよー」
ジェスチャー付きでワシが言うと、
「今日、あなた、ヘン!」
呆れ顔で言い放った夏菜が、間髪入れずに言い直した。
「ヘンなのはいつものことか、あははっ」

しっつれいやなー、オマエ!?
ヘンやないで?アホなだけやで?

「いいから行くよ、ほら!」
夏菜に背中をポンポン叩かれた。
ハイハイ、参ります。

公園内には屋台も出ていて、親子連れやカップルで賑わっとる。

「こんなに屋台が出てるなんて思わなかった。お祭りかなにかあるの?」
「みたいやな・・・。市民祭りとか書いてあるわ」
「お弁当持ってこなくてもよかったんじゃない?」
夏菜が苦笑いする。
「いやいや、やっぱり愛妻弁当がいちばんやで☆夏菜ちゃん☆」
「今日、本当にテンション上がりっぱなしじゃない?」
と、夏菜に笑われた。

なんやろなー、日曜休みってなんや、妙にウキウキするんよ。
他の家庭と違って、日曜にどこか出かけるいうのは、ふだんできんからなー。

「ほんならこの辺に・・・」
ワシはバスケットの中からシートを取り出し、芝生の上に敷いた。
暑からず寒からず、陽だまりが気持ちええ。

美羽はベビーカーに乗せた時からネムネム状態、ぐっすり寝てもうたわ。
「もうごはんなのに・・・。美羽、美羽!」
美羽を揺り起こそうとする夏菜の手を、ワシはそっと止めた。

「?」
「気持ちええんやから、しばらくそっとしときぃや」
「うん・・・」
「それより・・・・・☆」
にこやかに笑ったつもりが、
「なに、ニヤけてんの?!」
と、夏菜に言われてもうた。
「ニヤけてへんて!せっかくの時間を楽しまな☆」

夏菜のひざの上に、ワシは頭を乗せた。
「しばらく貸してな☆」
「ちょっとー!もう〜!」
そう言いながらも、夏菜の声は怒ってへんかった。
やっぱええなぁ、これ☆ひざ枕☆

「すっかり秋の空やね。高く感じるわぁ」
「こうして見上げると、空がまーるく見えるよね。宇宙に吸い込まれてく
 感じ・・・」
「ホンマや・・・なんやワシらも宇宙に浮かんどる気がするわ」
「・・・宇宙から見たら、人間ってホーント小さいよね?」
「せやな・・・」
「こんな小さい人間たちが、みみっちく争って、愚かよねー。
 私、争うことほど愚かなことはないと思う・・・」
「・・・・・」
「・・・?」
「ZZZZZ・・・・・・」

「ったくもう!」っていう夏菜の声が聴こえたけど、ワシは眠った。
いや、寝たふりをした。
しばらくこのままにして〜な。たまにはええやろ?

女心と秋の空。
変わりやすいものの例え。夏菜の機嫌も変わりやすいけど、でもこれだけは
はっきりと言える。
夏菜のワシに対する想いは、決して変わらん思うんや。
うん!
え?そう思ってるのはワシだけ?そんなー、夏菜ちゃん、見捨てんといて〜?!

「ったく・・・寝てる顔は、子供みたいね・・・ふふ」
夏菜の笑う顔が見えるようや。
はいはい、ワシは子供ですぅ。男は子供なんですぅ。

夏菜に髪をそっと撫でられながら、ホンマにうたたねしてもうたワシやった。