「絆」 |
なんなんやろなー?夫婦って?夫婦をつなぎとめとく絆って? ワシらは結婚してまだ半年。ホンマやったら、らぶらぶなはずやけどな・・・。 あいつには忘れられへん男がおる。 ワシの前では、なんでもないような顔して笑っとる。 けど気づかないわけないやろ? 時々、ワシを見ながら、ワシやない遠くの誰かを見とる、あいつの淋しげな目。 自分の無力さに情けなくなる。抱きしめてもすりぬけてくあいつ。 「買い物行ってくるね。」そう言ってあいつが出かける。 「ああ・・・」そう答えながら、ワシはパーカーをはおっとった。 初めてあいつの後をつける。 なにしてんねんなー、自分。こないなことしてどないするっちゅーねん?! あいつはいつものスーパーに入る。 そやな、夕飯の買い物やから・・・と思っとったら・・・なんや?2階か? ワシのパンツでも買いに来たんかいな?! それにしてもワシ、不審者やなぁ・・・。これやったらストーカーか?! あいつが棚の前で止まった。 ん?手にしとるのは・・・・・・・・・? ワシは思わず走り出しとった。 「夏菜!!」 「あれ?なに?なんか買うものあったの?」 「・・・あ、ちょっとタバコ・・・。それより何、それ?」 「これ?・・・・・・・ちょっと見たくなって・・・。」 手には小さな小さなクツ下。 「え?!」 「うん・・・できたの・・・まだ2ヶ月だけど・・・。」 「なんでもっとはよ言わんのやっ?!」 ワシはスーパーの2階で、人目もはばからずこいつを抱きしめた。 「ごめんね・・・・・ごめん・・・。」 こいつの「ごめん」にこめられた深い意味を感じた。 こないな小さいクツ下をはく人間が、産まれてくるんやなぁ。 こいつはもう、遠くを見てへん。ワシを見とる、この子を見とる。 ワシらの絆は・・・小さな生命やったんかもしれへんな。 |