「ぬくもり」 
    〜朝5時のブルー オレンジ色の君のこころ〜




夜明け前のような海の底のようなブルーの、ソファにからだを沈めていたら、
いつの間にか眠ってしまったらしい。
リビングテーブルの上には、読みかけの本が数冊と、走り書きのメモが
散らばっている。
あぁ、また今夜もこうして時を過ごしてしまった。


カーテンを開けると、窓の外は深い青に煙っている。
少し痛む頭を押さえながらコーヒーを淹れ、テレビのスイッチをONにする。
朝いちばんの天気予報が、今日も一日はっきりしない天気であることを
告げていた。
連載小説の原稿を煽られ、文章に行き詰まる僕は、時にこの部屋から
逃げ出したい衝動に駆られる。
せめて天気くらい晴れやかであってほしいものだけれど。


軽やかな音を立てて携帯が鳴り、着信のオレンジ色が
栞からのメールであることを知らせている。
”おはよう。(^_^)/
 またソファでお目覚め?
 朝晩は涼しくなってきたから、
 風邪なんかひかないように
 気をつけてね。
 全国のファンが、瞬介の文章を
 楽しみに待ってるんだから。
 それに私も・・・。(*^o^*)

 それじゃまたね。
 私も今日は朝一で会議だー!(^_^;)”
栞・・・。
誰かが僕の文章を読んでくれる限り、僕は書き続けられる。そして・・・
君がいる限り・・・。
”おはよう。
 ソファの寝心地がよすぎるせいかもしれない。(笑)
 さぁ、文章っていう苦しみの渦に巻き込まれるとしますか。   
 栞って名前のいちばんのファンのために・・・。
 ははは。”
返事を送信し終えて、思わず顔を赤らめながら、僕はデスクに向かう。

窓の外は、淡いブルーからモノトーンへと変わり始めていた。