「ぬくもり」 〜Flash in Tokyo〜


打ち合わせの帰り、一人、夜の公園を歩いた。
外灯がところどころポツリ灯ってるだけ、
辺りはひっそりと暗い。

桜もいくつか花を残すのみで、新緑の葉をのぞかせている。
風に一ひら二ひら、桜の花びらが舞い落ちてきた。
すると後を追うように、次から次へと降り注ぐ花びら。

その中を抜けて歩くと、渋滞気味な高速の向こうに、
淡く光る東京タワーが見えた。
流れる車のライトが光の軌跡を描き、なんだか幻想的だ。

ふだんは、こんな都会の夜景とはほとんど無縁に、
原稿用紙の海の中で溺れてる。
たまには、こんな時の流れもいいかもしれない。

そして、彩られたこの風景をいちばん早く、
君に伝えたいと思った。

僕は君に電話をかけた。

「もしもし?栞」
「あ、瞬介?もう打ち合わせ終わったの?」

君の声が温かく僕の耳を包み込む。
この東京の真ん中、僕たち二人だけの声が
響いているような気がした。




BGM : ポルノグラフィティ 「東京ランドスケープ」