「オアシス 〜Bittersweet〜」



  「今日はごちそうさまでした」

  君はいつものようにチャーミングに笑った。

  「この後、少し飲まない?」

  俺は勇気を出して誘ってみた。

  「えぇ、少しだけなら・・・」

  君のちょっぴり憂いを帯びた顔にドキッとする。

  重い扉を開け、薄暗いフロアへと君を導く。

  「素敵〜☆いろんなお店ご存知なんですね」
  「いや、そんな・・・(^^ゞ」
  「一緒に来られたかた、たくさんいるんだろうなぁ」
  「・・・」

  チクッと刺すようなことを、君はさらっと言いのける。

  「いや、飲む時は友達との方が多いよ」
  「ふふっ☆優しいんですね。優しい嘘」

  天使なのか悪魔なのかわからない言葉と微笑み。

  「今日のオススメを」
  俺はバーテンダーにオーダーした。
  「じゃ私も同じもの」
  君は俺をチラッと見ながら言った。

  グラスに注がれる琥珀色。ちょこんと飾られたチェリー。

  「おまたせいたしました。ビジュー・カクテルです」

  「ビジューって、宝石という意味の、ですか?」

  バーテンダーにたずねる君の瞳も、宝石のごとくきらめいている。

  「はい、そうです。あまりポピュラーではないカクテルですが、
   甘さの中にもオレンジ・ビターが効いていて、お客様のお好みの
   テイストではないかと思いまして」

  バーテンダーの声も甘めだ。

  口に含むと・・・確かにスイートでビター。おっとりしているかと
  思いきや、時々ピリッと辛口なことを言う君のようだ。

  「なんだかもう酔いが回っちゃったみたい・・・」
  「君お酒強いのに?」
  「歳取ったせいですよ〜だ」

  俺の肩にちょこんと触れる君の頭。

  「酔いつぶれたら朝まで介抱してくれます?」
  「・・え・・朝までって・・・・・」
  「もぅ〜、冗談ですよ。でも・・・ちょっと意気地なし・・・・・
   なーんてね」

  天使なのか悪魔なのかわからない言葉としぐさ。
  君の手のひらの上で、俺はころころ転がされ続ける。

  意気地なしじゃない俺も、たまには君の前で見せてみようかな。
  今夜。







  参考文献 : 稲 保幸 著 「カクテル」(新星出版社)
           カクテルサイトのみなさま

  勝手にBGM : ARASHI 「Bittersweet

  勝手にすぺしゃるさんくす : 櫻井様(*^。^*)