Maximum Speed Training
最大スピード系トレーニング
はじめに | ||||||||
最大スピード系のトレーニングは、加速度や等速でのスピードレベルがトレーニングの中でも最も高くなります。最大スピードを追求するには、リラックスした状態で走らないとかえって運動効率が悪くなり、その結果としてスピードが最大値まで到達しません。 また、スピードレベルの上昇にともなって、筋にかかる負担(特にハムストリング)も大きくなりますので、故障の防止には十分に注意してトレーニングを行ってください。 最大スピード系のトレーニングは、最大加速力・最大スピード・オーバースピードのトレーニングがあります。 |
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最大スピード系トレーニングの体系 | ||||||||
1.最大加速力のトレーニング | 最大スピードまで効率よく加速するためのトレーニング | |||||||
2.最大スピードトレーニング | 最大スピード、までの加速技術とスピード維持のトレーニング | |||||||
3.オーバースピードトレーニング | 自分の能力以上のスピードを体験するトレーニング | |||||||
1.最大加速力のトレーニング | ||||||||
@スタートダッシュ(直走路) | ||||||||
スタートダッシュは、レースの要素を含んだトレーニングですから、常にレースを意識して行うことが大切です。最大加速力のトレーニングですので、ここでは100mレースのスタートからの組み立てを意識して行います。 30mや50mのダッシュをするときに、フィニッシュ動作を入れてレースを完結させてしまっている選手はいませんか? ダッシュ1本で勝った負けたを一喜一憂しているようでは、それは「小学生以下のかけっこ」となんら変りはありません。スタートダッシュは、その距離のためのトレーニングではなく100mレースの途中までの組み立てが目的です。実際のレースではその続きがありますから、そこで完結させてしまうことは、レースのためのトレーニングではなくその距離のためのトレーニングをしているにしかならないのです。トレーニングにおいては、例えばスタートから20mまでの区間を、30mダッシュをやっても100mレースをやっても同じように走ることが大切です。日常のトレーニングにおいてできないことは本番のレースにおいてもできません。フィニッシュ動作の練習なら、テンポ走などで取り入れればよいことです。 |
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スタートダッシュの距離と目的 | ||||||||
距 離 | トレーニングの目的 | |||||||
20m | 号砲に対する反応とスターティングブロックを押す反作用を利用してローギアで引っ張る感覚を養うのが主目的です。 HSIではドライブフェーズ(Drive Phase)と位置づけている区間です。 |
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30m | 20mまでの要素にセカンドギアへのギアチェンジが加わります。このつなぎ目がわからないようにギアチェンジするのが大切です。 20mを過ぎたあたりから徐々に上体を起こし始めます。 HSIでは20〜40mの区間をトランジッション(Transition)と位置づけています。 |
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40m | セカンドギアのサードギアへの移行区間です。 この位置ではまだ最高スピードには達しません。 |
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50m | 40mを過ぎたあたりからトップギアに切り替えていきます。 前区間同様につなぎ目がわからないように徐々に切り替えていきます。 HSIでは40m〜100mをスプリントフェーズ(Sprint Phase)と位置づけています。 |
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60m | 50mよりもスピード維持区間を長くした距離になります。 走る意識の上ではここまででトップスピードに達する区間です。 |
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スタートダッシュの距離は、主に30m・50mを採用します。これは、ギアによる一つの区間の終了で終わるのではなく、区間をまたいで走ることでギアチェンジをスムーズにすることによるものです。 | ||||||||
Aスタートダッシュ(曲走路) | ||||||||
上記の内容をコーナーにおいて行いますす。リレーの第1走者や200mのトレーニングとして行うものです。 | ||||||||
2.最大スピードトレーニング | ||||||||
@加速ドリル(直走路) | ||||||||
加速ドリルは最大スピードに到達するまでの「加速区間」と、最大スピードを維持する「スピード維持区間」から構成されています。 主目的は加速技術の修得ですが、最大スピード区間があることで、分類上は最高スピードに属します。 トレーニングの目的に応じて加速区間とスピード維持区間の距離を調節します。 雷管を使ってレースに近い形で行うとより効果的なトレーニングになります。 スピード維持区間は、あくまで最大スピードに到達しているかを確認する目的でこの区間のタイム計測を行います。 例 : 60m+20m は60mをかけて最大スピードまで到達し、20mはリラックスを心がけててスピードを維持します。 |
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加速ドリルの設定距離と目的 | ||||||||
加速+維持 | トレーニングの目的 | |||||||
40m+20m | スピード曲線に近いのでレース前の調整などに実施します。 | |||||||
60m+20m | スタートダッシュのトレーニングではスピードの立ち上がりが早くなりがちなのでこの距離を通して加速できるようにスピードの立ち上がりを抑えます。 特に女子選手はスピードの立ち上がりが早すぎて後半の失速するので、矯正するのに適しています。 |
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70m+30m | 通常よりも加速区間が長いのでスピードトレーニングに移行する専門鍛錬期〜試合準備期などに採用します。 | |||||||
A加速ドリル(曲走路) | ||||||||
上記のトレーニングをコーナーを利用して行います。400mRの第1走者や200mのトレーニングとして用います。 | ||||||||
3.オーバー・スピード・トレーニング | ||||||||
オーバースピードトレーニングは、選手自身の能力で出すことのできるスピードを超えるスピードを体験させることで、そのスピードで走るための技術や感覚(接地技術・接地感覚)を修得させるものです。この種のトレーニングは、ある程度の高速重心移動下での接地技術を会得しているハイレベルの選手でないと逆効果になりますから、自分の技術のレベルを考えて取り組むようにしてください。 |
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@トウ・トレーニング | ||||||||
外的な力を競技者にはたらかせて競技者を引っ張ることで短い距離でオーバースピードを体験させることができます。 動滑車の原理を使った牽引やバイクによる牽引などの方法があります。 |
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Aダウンヒル(坂下り走) | ||||||||
坂を駆け下ることで加速度がつきスピードが増します。このトレーニングを行うときは、坂の傾斜が勾配3%以内の坂で行ったほうがよいと思います。坂を下るとバランスを保とうとして後傾しがちですが、接地点が重心よりも前になると、平地を走ったときより大きなブレーキがかかるので、重心を前にかけるように注意してください。 |
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