Power Training

パワー系トレーニング



はじめに
 
パワーとは単位時間あたりの仕事の割合(動力あるいは仕事率)のことで、(力×スピード)という公式で表すことができます。筋力トレーニングが絶対筋力の向上に重点を置くのに対して、パワー・トレーニングは筋の収縮スピードを重視します。
 
1.プライオメトリックス
プライオメトリックスは、このパワーを追求するパワー・トレーニングの一つです。もともと、「plyo」は「もっと」とか「一層」を、「metric」は長さという意味があり、プライオメトリックスは筋を長く伸ばした状態を指します。例えば、高所から跳び降りると、大腿四頭筋・下腿三頭筋・大殿筋に大きな負荷がかかり、これらの筋が Eccentric な収縮をし、このときに多くの筋線維が動因され強力なパワーが生じます。このパワーを利用して連続してすばやく跳び上がる動作をしていくのがプライオメトリックスなのです。
特にスプリンター・ジャンパー・スローワーは瞬発力が要求されますので、必要不可欠なトレーニングといえます。

このリバウンド系の運動は、空中における重心の最高到達点を運動開始位置と考えます。これは、「地面から上がって落ちる」のではなく、「最高点から落ちて弾んで上がる」という意識で行ってください。
 
 @バウンディング
 
空中で脚を前後に大きく開き、1歩1歩しっかり踏み込んでいく運動です。単なる大股走にならないように注意してください。膝は股関節の前方屈曲(大腿の振り出し)のときには閉じ、重心が最高点から落ちてくるときに股関節を後方伸展(大腿の引き戻し)と同時に膝を開いて足底全体で地面を捉えて接地点上に重心を乗り込ませて地面を押して進みます。バウンディングを行うときに注意することは以下の通りです。
 
1.上体を前傾させず地面と垂直姿勢保持 前傾すると腰が引けて接地点上に重心を乗り込ませることができません。
2.脚を前方に出すときに膝は閉じたまま 膝の開くタイミングが早いと接地でブレーキを起こします。
3.接地は足底全体で行う 下腿三頭筋を働かすには足底全体での接地が必要です
4.接地時間を短くする 接地時間が長いと筋収縮が遅くなり瞬発力の養成にはなりません。
5.接地点が左右に割れない 左右に割れることは接地点上に重心がのっていないので地面反力を十分得られません。
 
バウンディング系のトレーニングは、実施距離が30m以内なら瞬発力、それ以上になると筋持久力の養成が目的になります。
  
 Aホッピング
 
上記のバウンディング動作を片方の脚のみで行うものです。ホッピングでは、接地した脚と同じ脚でで次の接地をしなければならないので、地面を押して空中に上がったら、重心が最高到達点に達するまでに脚の引き付けを完了し次の接地の準備をします。空中から重心が下がっていくときは接地準備ができていないと接地で潰れてしまいます。筋力の弱い選手にはあまり勧められません。上体をまっすぐ保ってできない(斜めに傾く)選手はやめておきましょう。もっとも、跳躍・投擲選手は、これくらいのことはできないと困ります。
 
 Bミニハードルジャンプ
 
20cmくらいの高さのミニハードルを10台程度、両脚で連続して跳び越えていくトレーニングです。実施するときには、頭から足先までが一直線の棒状になるようにし、足関節のみの屈曲・伸展を使って弾みますので、膝が曲がったり、背筋を使って頭を前後に振ったり(サッカーのヘディングのような)しないように注意してください。両腕は重心の最高到達点で後ろに引き、接地から上方へ弾むときにコンパクトに前方に振って体が上昇するのを補助します。
 
 Cハードルジャンプ
 
50cm以上の高さ(体格や個人の能力に合わせて高さを設定)のハードルを5台程度、両脚で連続して跳び越えていくトレーニングです。
上体は常に地面に対して垂直に起こし、重心の上昇と同時に膝を引き上げてハードルを越えていきます。重心が最高到達点に達したときに膝の引き上げが完了していないと次の接地準備が整わないまま接地することになり、地面反力を上手く得られません。
 
 Dボックスジャンプ
 
跳び箱などの障害物を、2・3歩助走してから両脚でジャンプして上がります。箱の上にあがったときには、上体は垂直で膝関節は90°くらい曲がるほどの高さで行うようにします。このトレーニングはHSIでも行われています。
 
 Eデプスジャンプ
 
片方の脚で跳び箱などの対象物間の谷間へ落下しながら接地し、弾んで対面の箱に上がります。高低差のある分だけ負荷が大きくなります。プライオメトリックスの意識である、「上から落ちて弾んで上がる」をそのまま実践したものです。
 
2.ワンレッグダッシュ
  
片方の脚のみを使い、膝関節の角度は固定し、股関節を前方屈曲から後方伸展(脚の引き戻し)して地面をとらえ、そのまま後方へ引いて地面に力を加え、地面からの反力を受けて進みます。接地時にハムストリングには終動的な力がかかります。このときにハムストリングは、Isometric ないし、 Eccentric な筋収縮になります。レッグカールは Concentric な筋収縮ですから、ハムストリングの筋収縮もちがいます。ハムストリングの収縮が前方への推進力になる以上は、このようなトレーニングも必要になります。



(以下工事中)