大麻取締法

 関東学院大学のラグビー部の学生が自室で大麻草を栽培して大騒ぎになった。 早稲田の学生も慶応の学生も捕まった。 息子が世話になっている明治のラグビー部の合宿所では、その頃、抜き打ちの部屋検査が行なわれたと聞いた。 幸い、らしき物はなかった。

 それぞれの大学の関係者はそろって、大学の名誉を汚し、法を犯した者として断罪し、学生を反社会的だとして退学処分にしていた。 学生は罪人にされ、前科者の烙印を背負い、親類縁者の冷笑をかい、世間からは疎まれ、太陽に背を向けて一生を送るのか。
 大麻というものが、それほどのものなのか。 極悪非道、悪への蟻地獄へと繋がっていくのか。 そのあたりの知識が全くない俺は、裏のルートから、ある男にめぐり会った。

 俺、奥多摩の里山歩きをしていると、そこかしこに大麻が生息しているけど、どうなの。

 男、あの大麻は繊維を取るにはいいけど、薬効は零だから、乾燥大麻にして吸っても全くだめ。

 俺、でも自宅に持って帰って、栽培したら捕まるの。

 男、ばかばかしいけど捕まる。 育てるのも駄目、あげるのも駄目、もらうのも駄目、無害でも大麻は駄目ということ。

 俺、精神作用をもたらしてくれる大麻はどう違うの。

 男、主に南方系の大麻でカンナビノールという成分を含んでいるもの。それが良いマリファナといわれている。

 俺、酒の酔いとどう違うの。 癖になっちゃうの。

 男、習慣性なんて全くない。 だいいち、手に入りにくいだろう。 それに比べりゃ酒はどこにいたって飲めるし、毎日飲んでいる人なんてめずらしくねぇだろ。

 俺、大麻から覚醒剤にステップアップして行くって、そうなの。

 男、そんなことあるわけねぇだろ。 じゃあ、酒飲みが酒やめて、覚醒剤やるか。 やらねぇ。 個人の問題だ。 マスコミ連中がもっともらしく考えた根も葉もない屁理屈だ。

 俺、捕まった学生が育てていた大麻って、もしかしたら、その辺にはえている草かもしれないね。

 男、この国じゃ大麻にさわっちゃいけねぇってことさ。 あいつら悪法にひっかかっちゃたんだ。

 退学処分され、正業から遠ざかり、世間の裏道をとぼとぼ歩いている若者を思うと、大麻取締法というやつはまことに不条理だ。 法律は人間社会の営みに欠かすことが出来ないが、こんないい加減な法律で罰せられた若者が、俺には不憫でならない。 酒に酔っ払って、不祥事を起こしても、たいがいは一晩ブタ箱で寝て起きれば放免となる。 もちろん、それで済まない事もあるが。 大麻では、とんでもない刑罰が待っている。 大麻は色々な生活用品として、あるいは神事の品々として密接に暮らしの中にあるのだが、遊戯の妙薬としては、この国では認められていないのである。

 男、インドにでも放浪の旅に出るしかねぇな。 あそこはいいぜ。 ベナレスが待ってるぜ。

国立高柳農園の野菜


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