ああ「Hanako」的
       花咲く乙女たちよ

 俺の女房も、老いたお袋も、かっては見目麗しき 清らかで 控えめな はじらう乙女であった。 乙女は神秘であり、我ら男の側からは容易に触れてはならぬ憧憬と畏怖の対象であった。

 そんな乙女が二人、夕暮時の場末の飲屋に現れた。 うすいピンクに白い花柄が散りばめられたワンピース。 もう一人の乙女はクリーム色のスカートに真っ白なブラウスという清楚な装いだった。

 煙草と肉の焼ける煙が立ちこめる店には もったいない乙女の登場であった。 その瞬間、酔いにざわめいていた店の中に奇妙な沈黙が走った。
 「来る場所が違うだろ」
 「ここはフレンチレストランじゃねぇぞ」
 「オイラ、酔っ払いの縄張りだぜ」
とばかりに。

 だが、乙女はすまし顔で座った。
 店なのだから誰が来ようと受けなければならぬ。 泥棒であろうと、殺人者であろうと、はたまた総理大臣でもだ。

 乙女たちは、通いなれた店に居るような自然な口調で「モツ焼」「煮込み」「シメサバ」「ポテトサラダ」と注文していく。 心を込めて注文の品をお出しする。

 乙女たちは「洋菓子」をお召し上がりになるようにパクリ、パクリとやっつけていく。
 何だか、、違和感があるなあ。
 どうして酒飲みの王道を心得ているような品々を注文していくのか。 それはベテランの酔っ払いの好みである。 とどめは「イカワタ」であった。 ゴロと呼ばれるイカワタを味噌とたくさんのネギで包み焼きにする料理だ。 酒との相性は抜群である。

 乙女たちはクリームをなめるように、おいしそうに口にはこぶ。 何でこんな料理を知っているのだろう。
 「イカワタとジンジャエールはミスマッチでしょう」
 「お酒 飲まないから」
 「飲めないなら 仕方ないな!」
 「いいえ、飲まないんです。」
ああ、それで乙女たちはイカワタとジンジャエールなのか。 俺は急速に乙女たちへの憧れがしぼんだ。

 男なら誰だって、乙女がこわれ、くずれ行く様をのぞいてみたいのに、「いいえ、私たち 飲まないんです。」などと、聞きたくねぇ。
 「そんなに酒飲みは邪魔かよ!」と、愛らしく かよわい乙女に こうぜんとからみたくなりました。


 さて、今年も カナダから松茸がやってきました。
 ほら、こんなに律儀な松茸が---。


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