柏の酔っ払い

 張り切ったり、頑張ったり、気合いを入れたり、事あるごとに大騒ぎをして周囲を困らせたり、本人も意気消沈して、ああ 又、失敗してしまった、と 反省する。 人間、生きてりやその繰り返しだ。 まして、酒のみならなおのこと 反省条件が深く、雑多になる。

 先日、千葉の柏という所から、ワザワザ三鷹くんだりまでやって来たハリキリ旦那と御婦人のカップルがいた。 なんだかバサラもずいぶん有名になったもんだなぁー、と 少しあきれた。 ハリキリ旦那、すでにバサラの情報はネットで探りを入れているから「この店は これと、これと、これがうまいんだ!」などと昔から知っているなじみ風の口調で同伴の御婦人に解説している。 ハリキリ旦那がエライのか、「ハイハイとだまって解説を聞き流している御婦人がエライのか、おぼろげながらこのお二人さん 危なっかしいなあとにらんだ。 まあ、いいや、寛容、寛容と俺は深呼吸した。

 しばらくたっても ハリキリ旦那の解説は止むことなく、むしろ暴走していた。 御婦人は静かにうなづいていたかのようだったが、そうではなかった。 お面白くねぇはなし、一方的な解説行為、もう酔いしれるしかない。 ハリキリ旦那の肩にしなだれ、危険水域どっぷりである。

 もし、その婦人が絶世の美女で白く輝くうなじが妖しく艶めかしいのであれば、酔態を覗き、媚態をひそかにながめたいなあと思うところだ。
だが、その御婦人はそうではなかったから、ハリキリ旦那にトイレに行くよう促した。

 「身を整えて、帰りましょう」
すると、「せっかくうまい酒を飲んでるのに台無しだな!」

 「それは違う。台無しに酔わせるような酒はアンタの責任です。」
 「わかった、又、出直してくるよ。」
 「いいえ、カンゲイしません。」
                     おわり

トップページへもどる

直線上に配置