女 二人 ラグビーを語る

「あなた この間 安保法案の反対集会に行って どうだったの。 そんなところに行く人だったっけ。」

「会社の先輩に どうしてもついて来てってたのまれちゃったのよ。 だから付き添い。 まあ少しはヤジウマ的 心かな。」

「国を思ったり 憂えたりの心はないの。」
 
「その先輩は二人の小さな男の子のお母さんだから、真剣に戦争への心配をして、大きな声で 〜反対、〜やめろー なんて叫んでいたけど、私はとても とても そんな声出せなくて、あたりをただ ながめていただけ。」

「だめじゃない。 せっかく出向いていたのに、ありったけの力こめて、なんだっていいから シュプレヒコールを叫ぶのよ。」

「何に それ、なんだっていいからって 不キンシン。 真剣な先輩がとなりで 日本の母親魂でもって叫んでいるのに。 なんだっていいってわけには いかないわよ。」

「そういう 煮えきらない態度の人間が多いから、戦争に巻き込まれてしまうのが いままでの歴史でしょ。」

「だったら あなた 叫びなさいよ。 カラオケであれだけ ドスのきいた声でうたっているのに 安保法案 ハンターイぐらい アサメシ前でしょ。」

「わたしは あなたがハンターイに行ってるころ、映画館で戦争を体験していたわ。 もう おそろしくて、こわくて、ホコリとアセまみれで クタクタにされて、戦場なんてところは絶対行くもんじゃないし、行かせたくないところだと 心底 思った。」

「その映画って、 アメリカンスナイパーでしょ。」

「戦場で戦う兵士を賛美する映画だと思っていたら大間違い。 戦場とはいかに酷いとこであるか、殺すということは する側にも される側にも 忌まわしく 嫌で嫌でたまらない悲しみをもたらすという、つらい戦争映画でした。」

「160人も敵兵士を狙撃したクリス・カイルという人のヒーロー映画じゃないの。」

「そのクリス・カイルが二人の息子に語るのよ。“お前達は弱い羊になるな、弱い羊におそいかかるヤツから羊を守る 強い男になれ”と。 もう男って可哀想よね。 小さい子供のときから戦うハメに強いられて、そのヒーローがやがて心病んで悲劇的な死を迎えるとことになるんだけど、もうもう たっぷり反戦的な映画でした。」

「その わたしをデモにさそった先輩母親も二人の息子さんには、いつも強くなれ、たくましくなれ、親孝行であれ、なんて いずれは戦場ヒーローになるんじゃないか みたいな教育方針をいつも述べている。」

「だったら そのお母さんに一言助言。 スポーツやらせるならラグビーって言ってみたら。」

「だめよ、あんな汚らしい汗くさい、かっこ悪いスポーツ。 すすめるなら サッカーでしょ。」

「たしかに、サッカーの方がかっこいいし、いい男が多いし、スマートで人気もある。 だけど ラグビーは思いやりがあるわよ。 仲間を大切にするって ラグビーやってた人は 必ず口にするわ。」

「だけど戦争スポーツじゃない。 軍隊と軍隊が衝突しているようなブツカリごっこのスポーツじゃ ケガが心配になって 世の優しい母親達はひるむわよ。」

「でも礼儀正しく、ひかえめで たのもしいわよ。 何により丈夫で力もち、それこそ戦争になったら なんてったってラガーマンよ、肉弾戦できたえ上げているから。」

「だけど、あんなデカい、むさくるしい、汗くさい男に抱かれたいと思う。 私はごめんこうむるわ。 ヤッパリ サッカー青年のスマートにかけるわね。 オール for ワン、ワン for オール なんて標語におだてられちゃって 単純素朴肉体派だからすぐに軍隊にとられちゃう男達ね。」

「いいじゃないの、戦場の前線で体を張ってくれる。 何んてたのもしい。 国家の担い手なのです。 そこいくとサッカー青年はスマートでイキかもしれないけど 女の子にもすぐ手をだしそうで。」

「その軽快なフットワーク大好き、私なんていつでも待っているわ。」

「そんな軽薄に国家をたくせるの。」

「バカねぇ、サッカー青年は国を憂うなんてこと、これっぽっちも思ってないわよ。 スタンドでもってワイワイ一緒になって大さわぎできればいいのよ。 だから旗ふりまわして ピョンピョンとびはねているのよ。」

「あなた サッカーファンじゃないの。」

「あえて言えば、サッカー的男子の方が好きかなの程度で、世俗的な欲望に弱いたちだから、ラグビーのかもし出すひたむきとか いちずとか 菅平の汗とか言う バカ真面目が嫌いなだけ。 でも南アフリカチームに勝利は もう、うれしくて うれしくて 涙がとまらなかったわ。」

 女二人 どうやら その後は対南アフリカ戦 勝利の美酒に酩酊。

トップページへもどる

直線上に配置