散華(さんげ)

友人の息子の賢大が事故による不慮の死から2カ月がたった。私達は車で志賀高原に向かった。行った先は深い緑と美しい白樺の林に囲まれた山荘であった。
かって、賢大が夏休みの度に手伝っていたアルバイト先である。 その日は薄曇りでした。
 散骨の儀は静にとり行なわれました。こまかい粉にされた賢大のお骨は五つの小さなカゴに分けられていました。そこに集った皆でカゴの中を花びらでいっぱいにしました。そして、緑いっぱいの白樺の林にむかいました。それぞれの人がおもいおもいの場所で緑の中にまき散らしました。それは文字どうり散華でした。両親もまた静にまいていました。そして、白樺の深い緑の森をながめているのか、あらぬかなたの一点を見つめたままうごかなかっのを覚えています。
 帰路、一人で車の中で彼の心の中を想った時なつかしい曲が現れました。そして、何回も何回も(月の砂漠)を歌い続けました。

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