散歩の達人

 昨年の暮れに 「散歩の達人」 という雑誌の片隅に 小さく婆娑羅を のせていただいた。 他にも沢山の店がのっているから 婆娑羅は 目立つことはなかった。 きれいな しつらえの店や 主人の個性をおしだした店など 力強いものが 並んでいるなかで 婆娑羅は控えめであった。
 ところが 本が発売されるや 新顔のお客さんが 次々にやってくる。 一人静に酒を味わう人 夫婦で仲良く飲む人 悠悠自適な風の人。 その人達は いずれの人も 店の空気に溶け込んでいるように 見えた。 
 明けて 新年にも そのような人達が やってきてくれる。 かって 色々な雑誌にのったが その度に 俺は不愉快であった。 酒もろくに飲まないカップル{飲めない人を 揶揄するつもりはない。) 若い女の二人連れは 一杯のビールで何時間も 平気でお喋りをつづける。 酒場とコーヒーショップの 区別をないがしろにしている。
 今回は 明らかにちがった。 酒と料理を たのしみに来ている。 婆娑羅のような店を 探し求めていた 人達のように思える。 ファッショナブルな新しい業態の飲食店が いたるところに 出現しては消滅している。 だが 婆娑羅のような 家内手工業は 強い。 わざと理念を忘れないことだと つくづく思う。 流行 風俗におもねることなく 酒場の達人を めざそう。

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