文蔵から婆娑羅へ

  高倉健さん、加藤登紀子さん等の出演によって「居酒屋 兆治」という山口瞳さんの小説が映画になったのは、かれこれ25年も前のことになる。

 そのモデルになったのが、国立の谷保にある「文蔵」という名の小さな酒場である。
  「文蔵」は八木さんご夫婦が30年にわたって、仲良く、静かに、ひっそりと営んできた店である。
 多くの文人、墨客も又、普通に暮らす市井の人も、夜々集まっては口角泡を飛ばし、酔狂とモツ焼きの煙が店の中いっぱいに渦巻いていた。

 しかし、時が流れ 月日が変わり、多くの酔客は酒をやめ、夜遊びが出来ない年齢になった。 そして八木さんご夫婦も同じように歳を重ねた。

 八月のはじめに奥さんのカオルさんから電話があった。
 「何とか店の灯を消さずに続けていただけないか」と言う。
 さて、困った。
 「文蔵」という店を継承するには、あまりにも若輩故に 一旦はお断りした。八木さん夫妻は 大きく譲歩してくれた。婆娑羅として その店をお譲りいただけるということで、話が決まりました。

 しかし、国立の谷保は 酒場商売には決して良い所ではない。それでも30年に及んで その地で「文蔵」は生きてきた。沢山の常連客が店を支えてきたことだろう。

 婆娑羅という店に生まれ変わって、再び提灯に灯がともるのは九月の末になるはずだ。
「文蔵」という店の歴史、それを支えてきた人々の心を裏切ることのないよう、店づくり、商い、を心がけたい。

 結果、国立の店の片隅で 味わいのある酒場をはぐくむことが叶えばと念じている。

        国立市 谷保駅 北口歩1分
        電話 042 576 4741

 追記、尚、三鷹の婆娑羅はそのまま変わらず続行であります。

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