| 開店時間に合わせたように三人の男が現れた。 瞬間、「ヤバイ奴等がいらしたぜ」と、覚悟した。 体格よろしく、眼光鋭い。 口調が横柄で居丈高。 ところが、身なりがかなり地味で野暮ったいのが少し俺の認識とずれていた。 たいがいの人達は高級なブランド品を身につけ、金色の指輪なんかをしているのであるが、三人の男は百円ライターで煙草を吸い、芋焼酎のグラスを握る指にはごく普通の結婚指輪がおさまっていた。 次第に三人の口調が軽快になる。 やがて話は、やっぱりヤバイ話になっていく。 誰々が「ヤラレタ」の、立川方面に「ツカマッテイル」や「あのヤマは」などなど。会話の単語が一般社会で使用されないものが飛び交っている。 おれは、全くの誤解をしていたのである。 三人の男は、「ヤバイ人達」を追い詰める側の男達だった。 仕事でアウトローばかりとお付き合いせねばならぬとなれば、互いの垣根は低くなる。あるいは、己の立場を隠して敵の懐に潜入するわけであるから、身なりもさとられないよう自然とそうなるわけである。 「朱に交われば赤くなる」 そのまま交わって、戻らなかった者を思い出した。 ゲイの世界の犯罪を追いかけるためにゲイになりすました男が、そのままゲイの世界にどっぷりつかってしまったという。 人間の闇は果てしなく深い。 マル暴の方々、どうかいつまでも無事でご活躍されることを祈っております。 |
