肉食 その2

 息子の菅平合宿も今年の夏で4回目となった。
 厳しい練習と試合に明け暮れる毎日の様子を、眺めに行くたくさんの親御さんと同じように我等もまた、いそいそと出掛けて行く。 だが、どうにも空しく、もったいない気持ちがあった。

 そんな頃、エッセイストの玉村豊男さんが開拓したワイナリーのことを知った。
 菅平の一つ手前の湯の丸とというインターで高速を降りて15分ほどの高原に、ワイナリーはある。我等はビラ・デストというそのワイナリーで、1本のブドウの木のオーナーになった。

 はじめ、30cmほどの小さな苗木だったブドウの木も、4年目のこの夏には人の背丈をはるかに超え、幹も太く育ち、見事なブドウの実をつけるまでに成長した。そして、いよいよ来年にはそのブドウから造られる白ワインが我等の元に届けられるというわけである。

 ブドウの畑を眺め、木の成長を確かめ、すぐに菅平に向かうつもりだった。
 ところが、女房がそこのレストランの昼食を予約していたのである。
 俺は、菅平高原の入口のすぐ右手前にある地味なドライブインの、素朴な「中華そば」が食べたかったのに(行きと帰りでいつも2回食べる)、豪勢な肉の昼食となった。

 冷たいモモのスープ、野菜たっぷりのサラダと手作りのパン、主菜は信州産豚肩肉のハーブ焼き、そしてケーキとアイスクリームのデザートである。

 主菜の豚肉は4種のハーブでじっくりと焼きこんでいる。パセリ、セージ、ローズマリー、タイム、何で4種かというと、これはサイモン&ガーファンクルの「スカボロフェア」の歌詞にある、実におしゃれな肉料理なのである。
 直径が8cm程のロール状にまかれ、焼かれた肉が来た。
 大きめにナイフで切り、口に含んだ。うまい!塩味と香草のバランスが絶妙なバランスに保たれている。噛み砕きながら、大きく肯定のうなずきをした。なおも噛んだ。野菜もたくさん噛んだ。半分も食べていないところで、ワインかビールがたまらなく欲しくなった。肉を食べながらの水はまったくよろしくない。喉の渇きをいやし、味覚の再生をはかるには、水以上のものはない。だが、肉食を増進する力はない。しかたなく、発泡性の水をいただいた。

 ワイン片手に肉をほうばっている女房を一瞥しながら、再び気合を入れて肉に挑んだ。ロール状にした肩肉は並みのトンカツ2枚分と見た。スープ、パン、野菜、そして肉を、水を飲みながらというのは、俺の人生にとって不具合であるというのがはっきりした。
 めし、みそ汁、キャベツの細切り、ロース肉のトンカツだったら、こんな悪戦苦闘はしないで済んだことだろう。

 玉村豊男さんの眼先と感性が隅々までいきとどいている料理とそのレストランの方々には申し訳ありませんでしたが、だいぶ残して降参しました。

 明るい、きれいなレストランで昼間からワインをたっぷり飲んで食事の楽しめる方、食の快楽を堪能できますぞ〜!

【ブドウ畑とレストランの前景】


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