古希の上り坂、人生の下り坂(佐阪) 短歌の部

惰眠を貪るという言葉があります。 NTT退社後16年の小生が丁度これにあてはまります。が、ある事をきっかけに俄然、短歌・俳句の整理を始めました。  (峰岳 hougakuの短歌集)2018年12月24日

2020年3月18日更新 お知らせ

本ホームページに掲載しています峰岳の短歌・俳句集が文庫本になって世の中にお披露目することになりました。佐阪峰岳こと佐阪通久氏が自費出版した「浮子の戯れ」が文芸社出版から2020年3月15日初版第1刷として発売されました。
孤高の世界観を秘めた静寂、歴史ある地の叙景歌、追善と寂寞が綯い交ぜとなった挽歌など、人生を余すところなく表現した味わい深い歌句集。
絵画のような美しい情景を想起させる短歌123首に俳句86句を織り込んだ作品集です。

浮子(うき)の戯れ
佐阪 峰岳  2020/3/15発売 文庫本108頁
定価600円(本体600円+税)
出版社: 文芸社 2018年12月24日更新
あいのりて せにはまかぜの
ここちよさ ぎっしゃのゆれも
ときのあゆみも 相乗りて瀬に浜風の
心地良さ 牛車の揺れも
刻の歩みも
no.35 八重山諸島周遊
あしばやにすぐるもさびし
わがはるは はなもみぬまの
ちりあくたかな 足早に過ぐるも淋し
我が青春は 花も見ぬまの
散り芥かな  かぜうけて
きくさんしんのひきがたり
あゆみはうしのゆくにまかせて
風受けて
聞く三線の弾き語り
歩みは牛の行くにまかせて 
no.33 no.34  八重山諸島周遊
こもれびはなぞえにいりて
やわらかに まつりまぢかの
ふみづきのもり  木漏れ陽は斜えに
入りて柔らかに
祭り間近の文月の杜  あもりくるはるべのみずの
したたりは ねがはばかなふ
あかしとぞみる 天降り来る依瓮の水の
滴りは 願はば叶ふ
証とぞみる
no.31 在所 種河神社 no.32 在所 種河神社 
くもこめて
おとなくかかる こぬかあめ
さとにふゆよぶ しぐれなりけり 雲こめて
音なくかかる 小糠雨
里に冬呼ぶ 時雨なりけり ちるとみせ
まふともみえて うくもみじ
ゆぶねのけらく きわまりてあり 散ると見せ
舞ふともみえて 浮く紅葉
湯船の快楽 極まりてあり 
no.29 大原の里 晩秋 no.30  
みちゆきの
かげもおぼろに おのがすみ
つつむあたりの おおはらのさと 道行きの
影も朧に 小野霞
つつむ辺りの 大原の里 わけいりて
みちなほふかき おくざしき
けふふるあめの おとのおもたさ 分け入りて
径なほ深き 奥座敷
けふ降る雨の 音の重たさ
no.27 大原の里 春 no.28 大原の里 晩秋
おちばはく
やしろのもりに きぶくれの
せなかおす かみのねぎらいのこえ 落葉掃く
社の杜に着脹れの
背中押す神の 労いのこえ はくほどに
かぜたちさわぐ かみのにわ
すぐるあとより まうおちばかな 掃くほどに
風立ち騒ぐ 神の庭
過ぐるあとより 舞う落葉かな
no.25 在所 種河神社 ボランティア no.26 在所 種河神社 ボランティア
なきやみて
まごはしずかに おさまりぬ
きねんしゃしんの つかのまのえみ 泣き止みて
孫は静かに おさまりぬ
記念写真の 束の間の笑み じんせいゲーム
かってわずかに もれるえみ
ほこらしげなる まごのつらつき  人生ゲーム
勝って僅かに 洩れる笑み
誇らしげなる 孫の面付き
no.23 六人目の孫 七五三 no.24 平成29年正月
こころもち
こくびかしげて あるまごの
ひとみにゆれる こすもすのはな 心もち
小首傾げて 在る孫の
瞳にゆれる 秋桜の花  ゆかたがけ
ぬりげたかろき いしだたみ
みまもりつゆく まごのあとさき 浴衣掛け
塗り下駄かろき 石畳
見守りつゆく 孫のあと先
no.21 初孫三歳の散歩 no.22 在所 種河神社 夏祭り 
ゆめうつつ
まどいにはしき ひとありて
さめてみじかや まどろみのうち ゆめ現世
円居に美しき 女人ありて
醒めて短や まどろみのうち  みはすでに
ひとのつまかや あきなひの
ものごしにみる おちつきのほど  身はすでに
他人の妻かや 商ひの
物腰にみる 落ち着きの程 
no.19   no.20  於 谷町筋自然食品店
くずのはの
うらみにうかぶ かげもなし
おだひにすごし きたるものかな 葛の葉の
裏見に浮かぶ 影も無し
平穏に過ごし きたるものかな はるうらら
けひのうらみに こととへば
えがおおさなき おおがきのひと 春麗
気比の浦廻に 言問へば
笑顔おさなき 大垣の女人 
no.17 生駒 暁峠越え no.18 越前 気比の松原
くらがりの
とおげもすぎて なくとりの
すがたはみえず まつかぜのこえ 暗の
峠も過ぎて 啼く鳥の
姿は見えず 松風のこえ くだりきて
いこまのさとに みかえれば
しろあざやかに くずのうらかぜ  下りきて
生駒の里に 見返れば
白鮮やかに 葛の裏風
no.15 生駒 暁峠越え no.16 生駒 暁峠越え
まどちかく
のもせにくれて ふるゆきの
つもるうえより こなゆきまへり 窓近く
野面に昏れて 降る雪の
積もる上より 粉雪舞へり  このゆきを
いずくにむかふ たびごろも
たなかをいそぐ におのむらだち  この雪を
何処に向かふ 旅衣
田中を急ぐ 堆の群発ち
no.13   no.14 近江湖東をゆく車窓より 
くれかねて
ひとなきのべの あきないは
かぜがこのばの あるじなるらし 暮れかねて
人無き野辺の 商いは
風がこの場の 主人なるらし なもしらぬ
ほしまつかたへ もちづきの
いそぐとみえて ほのもどかしさ 名も知らぬ
星まつ方へ 望月の
急ぐとみえて 歩のもどかしさ 
no.11 山の辺の道 no.12 平成29年10月仲秋の名月 
かしきりの
ゆやにみまごふ もみじおく
いわまのめぐみ ひとりじめおり 貸し切りの
湯屋に見紛ふ 紅葉おく
岩間の恵み ひとり占めおり からまりて
かぜにおもねる はぎのえの
しなりにとおき ゆうばえのそら 絡まりて
風に阿る 萩の枝の
しなりに遠き 夕映えの空
no.9 山形県秘湯の露天風呂 no.10
へらぶなの
あたりかかぜの いたずらか
かぼそきかろき うきのたわむれ へら鮒の
魚信か風の いたずらか
か細きかろき 浮子の戯れ つりいとを
たれてながむる こはるびの
みなもをぬらす ひとむらのかぜ つり糸を
垂れて眺むる 小春日の
水面をぬらす ひと群の風
no.7 在所 芦谷池 no.8 在所 芦谷池
たのしみは
ともとのかたり そのともも
われもおひきて あすのあやうさ 楽しみは
友との語り その友も
我も老ひきて 明日のあやうさ あかつきの
かがみのおもに うきたちて
つりびとひとり あるがしずけさ
暁の
鏡の面に 浮子立ちて
釣人ひとり 在るが静けさ
no.5 親友との月例会 no.6 在所 山の池
ゆるやかに
ときはながれて このあたり
うねりにまかす いにしへのみち ゆるやかに
刻はながれて この辺り
うねりにまかす 古昔のみち かすがのは
このみちはるか よこしぐれ
いまさいがわを すぐるなりけり  春日野は
この径遙か 横時雨
今狭井川を 過ぐるなりけり
no.3 景行天皇陵付近 no.4 狭井神社付近
みもろつく
みわのやますそ ゆきめぐり
めぐりてくるる さとやまのみち 御諸つく
三輪の山すそ ゆき巡り
めぐりて暮るる 里山の径 のどかさや
かぜはほのかに つつみきて
たどるともなく やまのべのみち 長閑さや
風は仄かに つつみきて
辿るともなく山辺の道
no.1 no.2

峰岳の短歌集(36首)