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宮城の四季
2004 Autumn 紅葉

南蔵王登山と山麓に流れる尺八の音色、そして、『峠』の出来事
                                           
(04.10.16)
  コース:南蔵王登山口〜前山(1,684m)〜杉ガ峰(1,745m)〜芝草平(1,652m)〜
       屏風岳(1,825m)〜南屏風岳(1,810m)〜不忘山(1,705m)
◆南蔵王の登山計画

10月16日、南蔵王の前山、杉ガ峰、芝草平、屏風岳、南屏風岳、そして、不忘山まで縦走してきた。
週末は、久々に良い天気に恵まれるという予報や蔵王山麓の紅葉は、刈田岳山頂から不動滝まで下りてきているという情報もあり、この機会を逃すと楽しみを来年まで持ち越すことに成りかねないと思い計画を立てた。
朝、午前5時15分起き。早速、マンションから蔵王山麓を見た。まだ薄暗い時間、遠く蔵王連邦がうっすらと見えた。今日は、最高の山登りになるに違いないと思った。
午前5時45分には出かける準備もできた。もう、すっかり夜も明けていた。

◆国道286号線から村田町、蔵王町経由

朝早いため、車の通行量が少なく順調に車を走らせた。ひんやりとした朝の空気が心地よかった。
東北自動車道を右手に、先週、烏帽子岳に行く途中、写真を撮った現場に差し掛かった。前回は、蔵王山麓に雲がかかっていたが、今回は、くっきりと見えた。一日快晴の天気になると喜んだ。

◆いよいよ蔵王エコーラインへ

蔵王の空気は、一段と冷たくなった。フロントガラスが曇りだしヒーターをつけた。
蔵王エコーラインの麓は、紅葉もこれからという感じだったが、登っていくに従い色づき始め、不動滝付近は、見ごろになっていた。朝早い時間帯にもかかわらず通行している車が多かった。登山をする人たちかと思いながら走った。
紅葉の始まった山並は、朝日に照らし出されて美しい姿を見せていた。暫し車を停めて写真を撮った。

◆駐車場に着いて登山の準備

午前7時、南蔵王登山口に着いた。既に7〜8台の車が駐車していた。登山の準備をしている夫婦がいた。先週の烏帽子岳登山とは違い、他に登山する人がいることに安心した。
トレッキングシューズに履き替え熊除けの鈴をつけいよいよ登山道へと入った。

◆南蔵王登山口から前山(1,684m)へ

午前7時40分、熊除けと単独登山の心細さを解消するためラジオにスイッチを入れ、南蔵王登山口から前山へと向かい暫く下った。高山植物の保護のため登山道は敷板で整備され比較的歩きやすかった。刈田岳非難小屋への標識が見えてきた。それを右に分け前山へと登った。どんどん進むと最初の登りになった。
眺望もよく、振り返ると登ってきた山道が延々と続き、刈田岳の刈田嶺神社や熊野岳が見えた。
山麓は、紅葉と雲海に浮かぶ墨絵のような山並が何処までも続き静かな朝を迎えていた。

◆前山から杉が峰(1,745.3m)へ

前山から軽く下り、今度は、杉ガ峰への登りにかかった。汗かきの私は、ここで一気に汗をかいてしまった。ハァハァ言いながら登った。山登りはきつい。目的に向かって一歩一歩登った。
杉ガ峰の頂上に着いた。頂上は、平らな砂地の広場になっていた。山頂には、誰もいなかった。秋風の吹く音だけが聞こえた
眺望は最高だった。遠く雪化粧をしたように雲がかかり月山が見えた。屏風岳、烏帽子岳、熊野岳が眼前にあり、蔵王エコーラインも見渡せた。

◆杉ガ峰から芝草平(1,652m)、屏風岳(1,817.1m)へ

杉ガ峰から芝草平までは、緩やかな下りだった。芝草平の湿原は、茶褐色となっていた。春には、緑一色になり色とりどりの高山植物を見ることができるだろうと思った。
高山植物保護のためロープが張られ注意を促す看板があった。付近の道は、湿りがちの道で泥だらけになった。いよいよ屏風岳の登りになった。山道が沢状にえぐられ、大岩がごろごろし、朝露に濡れた道に足をとられた。
屏風岳山頂に着いた。遠く水引入道の紅葉が綺麗に見えた。南屏風岳から不忘山までの稜線が青空の下に流れるようにくっきりと見えた。

◆屏風岳から南屏風岳(1,810m)へ

屏風岳から下ったところで水引水道へのコースがあった。それを左に分け、なだらかで真っ直ぐな道を南屏風岳へと向かった。ハイキング気分で登れる登山道だった。這い松の緑と紅葉のコントラストは素晴らしかった。南屏風岳へ向かっていくと不忘山がよく見えた。南屏風岳の山頂は広かった。頂上から不忘方面を見ると、両脇が切れ落ちた稜線が広がり注意が必要と思った。
不忘山から来た登山客に声をかけた。どのくらいの時間で行けるのかと・・・。約40分位ということだったので行くことにした。岩場が多いので気をつけてと言われた。

◆南屏風岳から不忘山(1,705.3m)へ

南屏風岳から不忘山までは目と鼻の先のように見え、間もなくして急な下り坂になり足場も悪くロープやチェーンが張られていた。滑らないようにと細心の注意をしながら下った。
延々と続く稜線にこれぞ山登りの醍醐味と思いながら歩いた。左には、白石平野を右手には遠く飯豊連邦を眺めながらの山道だった。
不忘山頂の手前には不忘神社があった。賽銭箱があっので、無事登山が出来たことに感謝することにして財布を取り出したが、生憎、小銭の持ち合わせが無かった。仕方なく手をあわせてお礼を言った。
山頂は、目の前だった。細い道でゴツゴツした岩場を一歩一歩注意をしながら最後の登りに挑戦した。

◆最終到達点不忘山(1,705.3m)へ初登頂

午前11時40分、南蔵王登山口から歩いて約4時間、ようやく目的地の不忘山頂に着いた。途中、写真を撮るなど時間をかけての登山だった。また、俄か登山客なので余計に時間がかかった。
山頂は、岩山だった。既に10人位の登山客で賑わっていた。食事をしたり、写真を撮ったり、帰り支度をしたりと、皆、思い思いに休憩をしていた。休憩もそこそこに360度の大パノラマの写真を撮り続けた。遠く月山や飯豊連邦、朝日連邦、白石平野、長老湖、七ヶ宿湖、阿武隈川などが見えた。眼下に見下ろす自然を見ながらのおにぎりは美味しかった。山で食べる食事は言葉に言い尽くせないほどの美味だった。

◆同じ道を通りながら

午後1時30分。そろそろ帰り支度をしなければと思った。登ってきた道をそのまま帰るルートだったが、簡単に見積もっても駐車場に着くのは、午後4時を回るのではないかと思った。陽が落ちないうちに駐車場に戻らなければと思いながら先を急いだ。道中、下りが多いので足を取られないように気をつけた。暫く歩くと足に負担がかぶさってきた。大腿部が痛くなってきた。脹脛も痛み出してきた。足のつま先も吊ってきた。途中でリタイアしては大変と思いながら注意して下った。後ろからきた登山客があっという間に通り過ぎていった。登山に慣れているのであろうか瞬く間に見えなくなった。一人黙々と下りた。

◆前山付近で女性の登山客と・・・

〔尺八を持った登山客〕
前山付近で女性の登山客に会った。これから登るにしては時間も遅いのではと思った。一期一会と思いながら女性の登山客に話しかけた。ふと女性の手許を見ると、ステッキにしては太い竹のようなものが目に付いた。登山に尺八と不思議に思いながら、「それは、尺八ですか。」と聞いた。女性は、「そうです。練習に来ました」と答えた。

〔尺八の思い出〕
私は、今まで経験した尺八の思い出をいろいろ話した。尺八の音色が好きなこと。秋田出身の私は、小さい頃から民謡を聴く機会があった。田舎のお祭りには、紅白の幕が張られた舞台が設けられ、そこでは、必ず尺八や三味線つきの民謡が歌われていたこと。また、新入社員研修の際、尺八を吹く教官がいて、教室で尺八の演奏を聴いたこと。更に、今年の夏、『瑞厳寺灯道』のお祭りで虚無僧が吹く尺八の演奏を聞いたことなどを話した。

〔山麓に尺八の音が〕
この機会を逃してはと思い、「尺八を聞かせてくれますか。」と問いかけてみた。少し躊躇されたが、私の尺八にまつわることを聞き、「それでは、力を込めて吹きます。」と言った。
吹く前の作法が感動的だった。尺八を両手の親指と人差し指に挟み手を合わせ山に向かって拝んだ。おもむろに両手で尺八を頭上にかざしながらお辞儀をした。山の神様に尺八の全霊を捧げる雰囲気であった。そして、吹き始めた。蔵王山麓に尺八の音色が響いた。風に乗って響き渡った。山麓には、尺八の音色と風の音だけが聞こえた。尺八の独特の音程が広がりなんと素晴らしい空間だろうかと思った。異次元の空間とはこういうことを言うに違いないと感動した。約10分の演奏だっただろうか、その後、風の音だけが残った。尺八を吹き始めた時とは逆の作法で、尺八をおし抱くように頭上に高く上げお辞儀をし、その後、胸まで尺八を持ってきて手をあわせて拝んで終わった。
蔵王山麓で尺八を聞くことはこれからも無いだろうと思った。尺八を聞かせてくれたことに感謝した。
演奏曲は、虚無僧が吹く「虚空」と説明してくれた。尺八を吹いて6年目と言った。尺八は、首振りで3年と言っていたが、それから3年の経験を積んでいる。それにしても素晴らしい演奏だった。

〔帰りの山道で尺八のBGMが〕
午後3時45分頃、そろそろ時間も遅かったので帰ることにした。帰り道、話が弾んだ。「登山するときは、尺八を持ってよく来ますか。」と聞いた。「蔵王には、1年で5・6回位くらい来るけど、尺八を持って来ることはあまり無いです。尺八の音が好きな人や嫌いな人もいるし、折角、気持ちよく登山しているのに下手な尺八を聞かせると登山客に失礼になるので。」と言った。
途中、練習をして行くと言ったので先に下りることにした。尺八の音色が山々に広がった。女性は、歩きながら練習をしていた。尺八の音色と風の音、熊除けの鈴の音が相互に広がった。尺八のBGMを聞きながら登山道を歩くことは贅沢すぎると思った。

〔鳥を呼び寄せる尺八の音〕
帰りの道は足も上がらなくなりきつかった。間もなくして女性に追いつかれた。
尺八の音が聞こえなくなった時、突然、鳥の鳴き声と羽ばたく音が聞こえた。一瞬、びっくりした。「尺八の音色は、鳥を呼び寄せるんですか。」と聞いた。「そうですね。鳥が同僚の鳴き声と間違えることがあるらしいです。前にも同じようなことがあったので・・・。」と言った。それだけに素晴らしい演奏と思った。後日、友人に聞いたところ、鳥を呼び寄せるための「バードコール」があると言っていた。成る程と納得した。尺八もそのバードコールの役割をしていたのかと思った。

〔獣の糞!?〕
いよいよ南蔵王登山入口の終点に近づいた。女性は、黒い糞をみつけた。女性は、「これは、獣の糞じゃないかな。」と言った。私は、「犬の糞では無いのかな。」と言った。ところが、犬を連れて登山した人がいるのだろうかと思った。「どうして獣の糞なんですか。」と聞いた。「糞に木の実がついているので。」と言った。熊の糞だったら大変と思いながら足早に終点へと急いだ。
駐車場に到着したときは、既に午後4時30分を回り、西の空は、茜雲が広がっていた。

◆ペンション&レストラン『峠』に寄って

蔵王エコーライン入口の『峠』に寄り、前回、食べ損なった「鴨そば」を食べて帰る予定だったが、時間も遅かったので次回にまわすことにした。『峠』のおかみさんに用事があったので車を停めた。車を降りると、「こんにちは!!」と大きな声がした。駐車場で少年が二人、バットの素振りをしていた。「野球の試合か。」と聞いた。「青森県弘前市の中学校の野球部です。」と言った。「東北大会が宮城で開催され、今日、試合があって勝ったので、明日が、準決勝と決勝です。」と言った。お店に入っていくと、テーブルは、夕食の準備で一杯だった。5・6人の学生が、「こんにちは!!」と大きな声で迎えてくれた。スポーツをしている学生は、元気で礼儀正しいと思った。私が、そこにいるのはなんとなく場違いな気がした。間もなくしておかみさんが出てきた。「今日は、弘前の中学生が野球の試合に来て、ペンションと別荘に50人が泊まっていて、別荘に父兄が、ペンションには、学生が泊まっているんですよ。」と話していた。夕食の準備で忙しくしていたので用事を終えて店を出た。先ほどの学生が二人、素振りの練習に一生懸命だった。「明日の試合は頑張るように!!」と話して分かれた。
蔵王山麓は、既にとっぷりと陽が暮れていた。
今日の出来事を一つ一つ思い出しては車を走らせた。
初めて走破した南蔵王山麓、大ハプニングで尺八の演奏を聞いたことなどを振り返りながら・・・。
疲れた身体だったがいつまでも心地良さが残った。


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