リーダーシップを考える



ISOを導入し、運用管理を進めていく上で、リーダーシップは非常に重要である。
もちろん、ISOに限定されるわけではない。
あたらしい仕組(システム)を導入し、運用管理する場合、リーダーシップの有無が仕組の成否を決すると言っても過言ではないと思う。
そもそもリーダーシップとはどういうものなのだろうか。
品質マネジメントの原則の2番目に「リーダーシップ」がある。
そこには、次のように記されている。

「リーダーは組織の目的を統一し、その方向を確立する。」
「リーダーは人々が組織の目的の達成に十分に打ち込める内部環境を作り、維持すべきである。」

辞書を調べると、「指導者の地位」「指導者の任務」「その企画を指揮する」「指導性」「統率力」と載っている。
以前、社内研修会で講師からリーダーシップとは何か?を問われたことがあった。
受講生の多くは、辞書に記されているような答えをした。
そのときの講師は、リーダシップについて「人々に対する影響力」と説明した。
「なるほど、確かに」と思った。
ファッションリーダーとかオピニオンリーダーという言葉におけるリーダーとはまさしく影響力のことだろう。

指導者の地位にあるものが、全てリーダーシップを発揮しているわけではない。
最近よく指導者の条件として、「リーダーシップを発揮できること」などといった、本末転倒のコメントをまじめにしている評論家もいる。
「新しい総理に求めることは」とか「新しい社長に求めることは」とのインタビューに対し、「ぜひ、リーダーシップをお願いしたい」と応える市民が多いが、それほどリーダーシップとは得にくいものなのだろうか。
そういう意味も含めてリーダーシップとは「人々に対する影響力」だ。
と言った研修講師の言葉をいまでも忘れられない。

会社は組織で動いている。
だから、管理者(マネジャー)はそれなりにいる。
古きよき年功序列の影響か、組織の大半が管理職という組織もあるのではないだろうか。
マネジャーはたくさんいるが、リーダーが不在というわけである。
講師の言葉を借りれば、「影響力」のないマネジャーばかりということになる。
こう考えると、ある意味ではリーダーシップとは個人の資質と捉えた方が適切なのかもしれない。

マネジャーの大きな仕事は、「計画」と「成果」を一致させることと理解している。
計画を立案し、実施し(又は実施させ)、計画どおりに行かない場合は、その原因を追求し、是正を行ない、必要な場合は、計画の見直しを行う。
そして、最終的には、計画を達成する。つまり、所期の成果を出す。
そして、この成果をもとに、次の計画を立て、組織を継続的に「スパイラルアップ」に導く。
これがマネジャーの大きな仕事と捉えている。
PDCAをマネジメントサイクルと呼ぶこととも一致する。

リーダーは、「影響力」を武器に、ビジョンを表明し、その求心力によって人々のベクトルを同じ方向に向ける。
マネジメントサイクルによって、物事の管理を行うのではなく、モチベーションを刺激することにより物事を進めていく。
そして、多少の困難にも計画を変えることなく、結果を出す。
以上が私のマネジャーとリーダーの勝手なイメージである。

マネジメントとリーダーシップの違いについて、ジョン・P・コッター教授は、自らの著書「リーダーシップ論」の中で次のように語っている。 
複雑な環境に上手く対処するのが、マネジメントの役割である。
私たちがマネジメント経験を積み、その手法を身につけることができたのも、20世紀の偉大な革新の一つ、大組織の出現を見たからこそである。
マネジメントがお粗末では、複雑な企業はカオス(混沌状況)的な状況に陥り、自壊しかねない。
逆にしっかりしていれば、製品の品質や収益性といった重要な問題について、ある程度の秩序と一貫性をもたらすことができる。
これに対して、リーダーシップとは、変革を成し遂げる力量を指す。
近年リーダーシップの重要性が高まっている背景の一つに、ビジネスの世界での競争と変化が激しさを増していることが挙げられる。
こうした新しい環境を生き抜き、競争の勝者になるためには、これまで以上の大変革が求められる。そして変革は頻繁であればあるほど、リーダーシップ待望論が強まるのは必定である。
マネジメントは複雑さに対処し、リーダーシップは変革を推し進めるというそれぞれの役割から、両者の違いが明確になってくる。

ジョン・P・コッター教授の言葉を借りれば、優秀なマネジャーが多い企業は、複雑な環境に上手く対応することができるということになる。
しかし、マネジャーがお粗末であれが、カオスが生じる。
確かにISOという新しいマネジメントの仕組を導入した時を思い出すと、納得できる。
優秀なマネジャーがいる組織では、比較的早期にしかもスムーズに仕組が定着する。
しかし、そうでない場合は、組織は混沌として収拾がつかなくなる。
みなさんの組織はそんな状況には陥らなかっただろうか。
混沌として収拾がつかない、というところまでいかなくても、なかなか仕組が定着しない、とか、社員が仕組みに理解をしめさないとか、仕組みに従わないということはあるのではないだろうか。

新しい仕組に最初から積極的で協力的な人間は少ない。
業務が増える、余計なことが増えるのではないかと警戒心が働くものである。

しかし、そのような組織ばかりではないだろう。
しばらくすると、仕組が定着するだけでなく、仕組の改善が始まる組織がある。
しかも、仕組の改善に多くの社員が関わっていて驚かされることがある。
そういう組織では、リーダーシップを発揮する社員とマネジメント能力が卓越している社員を数人見つけ出すことができる。

リーダー不在がいわれるが、決してそんなことはない。
大変革を実現するリーダーは少なくても、組織を生き生きとさせ、社員のベクトルを同じ方向に導くことができるリーダーは結構いるものである。
新しい仕組を入れたときに、リーダーが浮かび上がってくる。
誰がリーダーシップを発揮したのかを見逃さず、その素質を育てていくことが組織にとっては重要だと思う。
ISOの導入には、リーダーを発見できるといった、付加価値もあるのである。

(2004.02.03 boar)