「本質なきISOブーム」などど言わせない 



上記の表題は、昨年、10月14日付、日経産業新聞の特集記事「日本の品質」のタイトルに使われていたものです。
国土交通省は、昨年4月、直轄工事に対する建設会社の入札要件を改定し、品質管理に関する国際規格ISO9001の認証を取得していることとしていた条件を撤廃しました。

なぜ、撤廃したのか?
国交省は、「認証未取得でも品質に優れた会社はあり、そうした企業を排除すると逆差別になる」
との理由で撤廃に踏み切ったと説明しているようです。
ISO9001を入札要件にすると閣議決定をしたのが2001年3月ですから、わずか3年で方針を転換したことになります。
この原因は、ISOさえ取得すれば入札に参加できると安易に考えた建設会社と、そのような会社にこれまた安易に認証を与えた審査機関にあると言えます。
その結果として、ISOを取得していても、品質管理が形だけで優れた品質を保証できないという会社が多数生み出され、「本質なきISOブーム」と揶揄される結果になったわけです。

ISOの規格を一読するとわかることですが、規格は、品質マネジメントシステムに関する、ミニマムスタンダードを規定したに過ぎません。
つまり、ISOを取得すれば、経営における品質や施工に関する品質が劇的に改善するそういう仕組みを規格として持ち合わせているわけではありません。
規格の要求していることを、それぞれの会社の仕組みとしてひとつひとつ構築し、それを実践し、不都合な部分について継続的に改善していくことでマネジメントの仕組みが向上していく、そのような仕組みです。
つまり、ISOの取得は、品質を向上させる仕組みを持ち、スタートラインに立ったと理解すべきでしょう。
取得で安心してしまうとスタートラインに立ち止まったままという状態になってしまいます。
それどころか、後退することにもなりかねません。

そこで、審査機関による審査が重要になるわけです。
審査機関は、受審企業のお客様の代表として、受審企業の品質に関するマネジメントの仕組みや運用状況を審査し、安心して取引ができる企業かどうかを評価します。
スタートラインで足踏みしていた企業も、この審査制度によりアクションを起こさなければならなくなるわけです。
審査機関が仕組みの監視人というわけです。

ところが、審査機関の認定を取り消される審査機関が出てきています。
日本適合性認定協会(JAB)は、国際標準化機構(ISO)の認めた、日本で唯一の審査機関を認定する元締め組織です。
目的意識の不明確な企業がISO取得に走り、それにこたえて形式的な審査で安価に認証する審査機関が増えてきました。そのことに対する警鐘といえると思います。

思い返せば、昨年は、50回以上にわたるタイヤ脱輪事故を引き起こし、度重なるリコール隠しで経営危機に陥った三菱ふそうトラック・バスについても、財団法人日本ガス機器検査協会の審査でISO9001の認証を受けていました。
世論の批判もあり昨年8月にその認証を剥奪しましたが、これも、遅きに失した感があります。
ISOがこのような状況ですので、ISOの仕組みを活用しなくても、既に、世界的な品質管理を実践しているトヨタなどはISOは既に卒業したと宣言しているわけです。

お隣の韓国では、既に何年前に、今の日本と同じような状況になったと聞いています。
その結果、ISOブームが去るどころか、ISOを放棄する企業が多く出て、審査機関が淘汰されたそうです。
昨年の韓流ブーム。
このままでは、ISOまで乗ってしまいます。

ISOの規格は、ミニマムスタンダードです。
しかし、品質マネジメントに関する仕組みを構築し、品質に関する方針や目標を設定し、その目標に向かって継続的に仕組みを改善していくことで、普通の会社がトヨタのような品質管理システムを持つことも可能になる仕組みでもあります。(boarはそう考えています)

ISOをブームとして終らせるのではなく、定着させ、さらに良いものに育てていくことが、低迷久しい我が国の産業界の復活につながるものと考えています。
そのためにも、審査機関は直ちに自ら襟を正す必要があると考えます。

(2005.01.08 boar)