単なる処置と是正処置の違いについて



「是正」を辞書で引くと「誤ったことを正しく改めること」とでている。
私自身も、ISOに携わる前は「是正をしとけよ」と言われれば、文書であるなら間違っている箇所を直して再提出したり、
態度であれば以後そのようなことが無いよう改める。
ということを行ってきたし、それでよいと捉えてきた。
ISOの是正は、それとは大きく異なる。

規格要求事項の8.5.2項に「是正処置」という項目がある。
ここには、次のように記されている。
「組織は、再発防止のため、不適合の原因を除去する処置をとること。」
つまり、是正処置とは、不適合が発生したら、同じ不適合が二度と起こらないように、不適合の発生原因を取り除く処置のことと規定している。
しかし、実際に行われる是正処置は、不適合を取り除くだけ、つまり、辞書に書かれている「誤ったことを正しく改めること」だけの処置で終わりにしている場合が多いのではないだろうか。

こんなことがあった。
内部監査のためA支店に行った。
この時、3ヶ月前に改訂したはずの品質マニュアルが、ファイルされていないで、旧版がそのままになっていた。
大した不適合ではないのだが、決められた文書管理の手順を逸脱していたので、是正をするよう依頼した。
後日、提出された是正処置報告書を見て目が点になった。
その是正報告書には、次のように書かれていた。
不適合の原因:「ファイルをするのを忘れたこと」
是正処置:「最新の品質マニュアルをファイルした」
ISOを導入してはや3年。
いまだにこのような是正処置報告書が出てくる。
あわててA支店の責任者と連絡をとり、是正処置とは・・・・と説明をしてきた。

是正処置を辞書の文言どおり行っている組織は、いたるとことで不適合の再発が起こっているのではないだろうか。
不適合が発生したら、直ちに不適合を除去するという処置は必要である。
とるものもとらず、食べるものも食わずに、応急処置を行うことが必要な時もあるだろう。
しかし、不適合が除去できたことで満足し(又はホットし)、それで全てが終わったと勘違いしてはなんにもならない。
応急処置に引き続き、是正処置を行うことを頭に入れておいてほしい。
是正処置を実施するうえで重要なことは、不適合の
真の原因をつきとめることである。
真の原因を見つけ出すときに注意すべき点がある。
それは、原因を担当者のミスとか、理解不足とか、誤解、教育・訓練不足などの人的要因に求めることをできるだけ避けることである。
人的要因に原因を求めると、是正したつもりでも、いずれ何らかの形で再発することになるからである。
不適合の真の原因は、システム的な不備や弱点にあると心得、是正はシステムの見直しにつなげると再発防止につながる。

繰り返しになるが、大切なことは、真の原因にたどり着くことである。
そのためには、「なぜ」「なぜ」「なぜ」「なぜ」「なぜ」となぜを5回繰り返すと根っこにある真の原因に突き当たると言われている。
上記A支店の場合も、まずは真の原因を探ることだろう。
「ファイルをするのを忘れた」が真の原因とは思えない。
なぜ、忘れたのか、それはどうしてか、何が原因だったのかと、なぜをもう少し繰り返し、真の原因を突き止めてほしい。
そうでないと、本当の是正処置は行われず、また、同じ不適合を繰り返すことになる。


(2004.01.21:boar)