●奇才アンディ・・ジョージ・シャピロとの出会い 

 アンディ・カフマン(Andy Kaufman)というコメディアンをご存知だろうか?
日本ではほとんど知られていないが、アメリカでは伝説と化したコメディアン
である。もっともアンディ自身、自分をコメディアンと位置づけられるのを拒
んでいたが・・・。
 アンディ・カフマンは1949年1月17日ニューヨークで生まれた。子供のころ
から外で他の子供達と遊ぶ事は少なくスポーツも苦手だった彼が唯一没頭
したのがテレビのコメディショウだった。幼い頃から家族や友人の前でパフォー
マンスをして見せ、そのうち自らネタを書くようになる。20代前半の彼はクラブを
回りネタを披露する日々が続くがその独特なパフォーマンスはオーディエンスの
心を掴むには時間がかかった・・。わざとヘタな物まねをしてみせたり、外国訛り
で話をしたり・・・時には客を欺いたり、不快な気持ちにさせたりといった具合だ。
(実際アンディは長い間、外国人だと思われていた。Latkaというロシア(?)訛りの
キャラクターは彼の十八番のネタだった)ところが、とあるクラブでE.プレスリーの
物まねを演じていたアンディを観て彼のパフォーマンスに感銘を受ける人物が現
れる。有名なプロモーターであるジョージ・シャピロである。彼のマネージメントで
NBCの超人気番組「サタデー・ナイト・ライブ」にゲスト出演を果たす。アンディ26歳の
秋の事である。その後、彼の人気は徐々に高まり、その人気はABCの「TAXI」の
出演で決定的なものになる。その番組中でアンディが演じていたキャラクターが
前述したLatkaである。

ジム・キャリー演じるアンディ・カフマン
            〜映画「マン・オン・ザ・ムーン」より

●早咲きの才能と早過ぎた死期 

 コメディアンとして確固たる地位を築いたアンディだが、彼は一つのネタやキャラクターに
固執することを頑なに拒んだ。自ら新境地を開拓し、半ば暴走しているかのように聴衆
には感じられた。その代表的なものがアンディ演じるキャラクター、トニー・クリフトンであった。
またこの頃「男女混合プロレス」なるものTVで行い、女性相手に罵倒し技をかけるという
当時としては思いもよらないパフォーマンスを行い大ひんしゅくを買う。遂には本物のプロレ
スラーに果し合いを申し込まれリングに立ちその模様が全米生中継される。(もちろん全て
ヤラセではある)そして、とうとう番組本番中に喧嘩をしてしまい、番組を降板させられる事
態にまで陥った。彼の人気はもはや失墜寸前、早咲きとも言える彼のパフォーマンスは理
解者があまりにも少なかった。精神的にも苦渋の日々が彼を悩ませていたが、そんな中、
追い討ちをかけるかのような出来事が起こる。彼は自分がガンに侵されている事実を知る。
肺ガンであった。しかし彼の妻をのぞき誰も自分がガンである事を信用してくれない・・・・
アンディのパフォーマンスの代償とも言えるが、その事は彼を深い失望に陥れた。そして彼は
念願だったカーネーギーでのショーを敢行。舞台は全てアンディ自身の演出によるもので、
観客全員にはクッキーとミルクが振舞われた。このショーはアンディの集大成ともいえる舞台
であり、同時に最後のパフォーマンスとなった。
 

 1984年3月16日、ロサンゼルスの病院で死去。アンディ・カフマン、35歳の春であった。
葬儀では、生前、彼が自らに参列者に向けて撮っていたビデオが流され、全員でFriendly Worldを歌って彼を天国へと送った。

●マン・オン・ザ・ムーン・・・

 1999年、アンディ・カフマンの伝記映画が作られた。「Man On The Moon」がそれだ。アンディを
演じるのはジム・キャリー、監督には「カッコーの巣の上で」のミロシュ・フォアマン、製作総指揮
にアンディを発掘したジョージ・シャピロ本人が当たっている。日本では、あまりヒットしなかったが、
アメリカでは批評家、マスコミ、一般観客に大いにうけた。一度でもアンディ・カフマンのパフォーマ
ンスをTVやビデオで見た事がある人なら、ジム・キャリー演じるアンディが驚くほど似ている事がわ
かる。そして細部に渡って忠実に当時のショーが再現されている・・。そしてこの映画は最初にいき
なりエンド・クレジットが流れたりする。実にアンディ流な作りになっている。見ている者を欺く事を自分
の芸の基本としていたアンディが、ガンの治療の為に最後の望みを託してフィリピンに心霊治療を受
けに行くが・・・それがインチキだとわかったた時のアンディの笑う声が何とも悲しかった。

最後にアンディの葬儀で流されたビデオで彼が歌う「Friendly World」の歌詞を載せておこう・・・。

In this friendy friendly world
With each day so full of joy
Why should any heart be lonely

In this friendy friendly world
With each night so full od dreams
Why should any heart be afraid

[talking]
It's a friendly world
We should all teat each other like brothers and sisters
So everybody put your arm around the person sitting next to you..
and sway back and forth in rhythm to the music
Come on! Everybody...even if you don't like the person sitting next to you.
Okay?

The world is such a wonderful place
To wander through
When you've got someone you love
To wander along with you

With the sky so full of stars
And the river so full of songs
Every heart should be...
So thankful

Thankful for this friendly friendly world...

{talking]
Thank you....for this friendly friendly world
Thank you...and Good Bye.

【 も ど る 】