監督:ビットリオ・デ・シーカ
脚本:チェザーレ・サヴァティーニ
    アントニオ・グラ
    グオルギ・ムディバニ
    ジュゼッペ・ロトゥンノ
音楽:ヘンリー・マンシーニ
出演:ソフィア・ローレン
    マルチェロ・マストロヤンニ
    リュドミラ・サベリーエワ
1970年 イタリア 上映時間:1時間47分

戦争の辛さや悲しさは、どれだけの言葉を並べようとそれを経験した人にしか理解できない。この映画が描いてる悲哀も、戦争を潜り抜けてきた人たちにこそ真の意味で理解できるのであろう・・・。ジョバンナ(ソフィア・ローレン)は恋人アントニオ(マルチェロ・マストロヤンニ)と結婚するが、アントニオは徴兵でロシア戦線へと行ってしまう。しかし戦争が終わっても彼は帰国せず何の連絡も来ない。そこでジョバンナは夫の生存を信じ、ロシアへ夫を探すたびへと出かける・・・。タイトルの「ひまわり」は女性を現す。大地に根を根を下ろしいつも太陽の光を求めながら大輪の花を咲かす。もちろん「太陽」は男性を意味する。この映画に出てくるひまわりはとても切ない。かつて自分の夫や数多くの兵士が力尽きて倒れたロシアの雪原は、ジョバンナが訪れた時には見渡す限り一面のひまわりに畑に姿を変えていた・・・・。ため息が出るほど美しい映像であるが、そこに写る無数のひまわりは何故か悲しいのだ。主人公ジョバンナは人前では涙を見せることを嫌うとても勝気な女性だ・・・ソフィア・ローレンはそんな「ひまわり」を実に高いレベルで演技している。そしてこの映画はあまりのも有名なヘンリー・マンシーニのテーマ曲によって一層の悲哀感を醸し出している。先にも述べたが、この映画はわれわれ戦争を体験していない世代にはその切なさを100%理解する事は不可能である。しかし32年前の公開当時には数多くの人達が大粒の涙を流しながらこの映画を見たのであろう・・・。時代が残したあまりにも深い傷跡を美しい映像と音楽、切ない脚本で描き出した不朽の名作である。

この作品の舞台はイタリアとロシア(旧ソ連)だ。特にロシアのロケシーンの美しさは圧巻である。面白い事にこの映画に出てくるモスクワの街並みは何故かとても雰囲気が明るく人々が裕福な暮らしをしている。まるで資本主義社会の栄華を象徴しているかのようだ。この映画が作られた1970年は冷戦の真っ只中・・・。そんな時期にロシアでロケをした事自体、大胆な行為と考えられるが、もしかしたら当局の圧力でプロパガンダ的要求があったのかも知れない。当時のロシア(旧ソ連)の人々がこれほど裕福な暮らしをしていたとは少々考えにくい。またこの映画はイタリア語版と英語版があり、今回スクリーンで見たのは英語版のほうだ。イタリアにおけるイタリア人を描いた映画なので、最初、英語にはやや違和感を感じた。ぜひともイタリア語版も見てみたものである。

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