| アヅサ−ノンに花束を
刀新報社説
「アルジャーノンに花束を」という小説をご存知だろうか。知的障害を抱え、不幸な境遇にいる20歳代の青年が、ある学者の脳手術を受けたことにより、一気に天才へと生まれ変わってしまう奇抜なストーリーだ。昨年テレビドラマの題材にもなったので、まだ記憶に新しい方も多いだろう。
天才になった彼は、IQも急上昇し、学会で脚光を浴びるなど、大きな名声を得た。しかし、ある日、彼は気付いてしまった。自分が受けた脳手術には、まだ未熟な要素があり、後に、退化現象が始まるという事実に。天才になったがゆえに、自らの手術の欠陥を発掘するという皮肉。神様は何という過酷な運命を彼に与えたのか。
その後、急激に退化現象が始まった。今まで解けていた計算問題が、彼には解けない。話せていた外国語が話せない、理解できない。焦る。IQも日を追うごとに低下した。知的障害者へと逆戻りしつつある恐怖、混乱、葛藤。わが身に思うと、切実に痛々しい。しかし、こうした逆境と戦いながら、それでも彼は、だれにヤツ当たりするわけでもなく、運命を全うし、強くたくましく生きていく。まさに愛と感動の巨編であった。
とはいえ、このストーリー、現実には有り得ない話に思われる。米寿を迎えた老人が大学院で学ぶような高度な知識を忘れてしまうのならまだしも、20歳代の若々しい青年が、せっかく学んだ知識を、それも小学生レベルの知識を、そう簡単に忘れてしまうものだろうか。個人的には、甚だ疑問である。若くして、退化する人間など、そう居るものではない。いくら忘れっぽくなったとはいえ、最低でも、簡単な足し算や引き算、掛け算くらいはできるだろう。
などと、考えていたら、居た。アルジャーノンを自で行っている人が。しかも、身近に。スギノキさん(仮名)家のあづさちゃん(種別:ホモサピエンス 年齢:24歳←自称 性別:弱酸性 出身:京都府←学説では北朝鮮工作員)だ。このあづさちゃん、現在、某医療機関で働き、それはそれは世のため、人のために尽くしている立派な公務員さんである。当然、その過去には、難関と言われる国家試験を余裕のよっちゃんイカで突破した実績があり、ご近所では頭脳明晰にして眉目秀麗なお嬢さんと評判だ。
が、しかし、本紙は気付いてしまった。彼女の退化現象に。以下の文面は、あづさちゃんが本紙の番記者に送った新年あいさつを兼ねた携帯メールの一説である。
「今年もazusa’yearになること間違いなしですので、よろしく18 正解!」。
最終学歴小学校以上の方なら、もうお気づきのことと思うが、これは、あきらかに退化現象の兆候である。というより、もはや末期的かもしれない。しゃれっ気たっぷりなのは、ほほ笑ましいが、わざとウケを狙ったつもりなのかあづさちゃん、本紙はそう信じたい。
「しく・じゅうはち」?「4×9=18」?
しかも自ら、「正解!」と、思いっきり豪語している。
オーマイゴーッ! とてつもなくインテリジェンスだったあのころの君は、どこへ行ってしまったんだぁーっ!あづさ、カムバーック!
来月、あづさちゃんは脳神経外科の名医タマッテルン・クソシタイン教授による退化防止手術を受けるため、単身でドイツへ渡るという。一刻も早い彼女の回復を、心から願わずにはいられない。
|