〜第三話 (上へ、上へ。その3)〜
教習所に入所した俺は、2週間という限られた時間の中で免許を取得しなければいけないというプレッシャーを背負いる。
しかし、早くバイクに乗りたいっていうワクワク感も強かった。
教習所を見渡すと、真っ赤なCB400SFが並んでいる。
あれに乗れるのかと思うと胸が高鳴った。
実はぶっちゃけ俺はもともと乗りたかったバイクにZZR400があった。
RFに引け劣らない大柄な車体に、兄貴分であるZZR1100の世界最高速(当時)の看板に魅了されていた。
決してZZR400は最高速ではないのだが、ZZRと名が付くだけで速そうではないか。
しかし、その考えは第一段階実技講習が始まったときに簡単に覆された。
一段階の最初のほうなんて、引き起こし、取り回し、クラッチの練習、乗車姿勢の確認・・・つまらないもんである。
しかし、俺にとっては何もかもが初めての世界。
人間、興味があることには脳みそと肉体を最大限に活用できるものである。
難なく一段階をクリアし、次へと進むのだが、一番厄介なのは学科講習である。
これも今現行の免許種別に変わるときに一緒に変わってしまったのだが、
車の免許を持っている場合、二輪の学科試験は免除されたのだが、
二輪免許を持っている場合、車の免許取得時には通常の学科試験があるのだ。
今は、二輪を持っていれば車の学科なんてないのにねぇ・・・
まぁ当時の俺は車なんて取れる年齢に達していないので普通に学科も受けなければならないということですわ。その後車取得時にも学科を受けたけど・・・(T.T)
学校の授業と同じで、学科講習では教官によって講習の面白さがぜんぜん変わる。
ある教官は講習前に
「講習中に寝ると単位をあげません。」
「もし寝る人は、あらかじめ手を上げてください」
そこまで言われたらなかなか寝れないものである。
その教官は
「私も長いこと教官やってますが、最近始めて手を上げた人がいました。」
「そのあと本気で寝ていましたが、ちゃんとハンコはあげましたよ。」
ものすごいやつはいるもんだ・・・
その時手を挙げたやつがコウヘイであったことを俺が知るのは一ヶ月後である。
前にも書いたが、強引なスケジュールのため、休み時間が3時間ほど空くのは茶飯事。
周りに時間をつぶすところもなく、移動手段もないのでしかたなく教習所の中の問題集とかをクリアしながら時間をつぶす。
今、考えればその問題集をやりまくったおかげで学科試験は問題なく合格したのであろう。
それでも時間はあまる。
寂しがりの俺はしかたなくポケットから小銭を出し、あたりかまわず電話する作戦に出た。知り合いという知り合いに電話しまくるのだ。
当時、携帯電話なんて高貴な人しか持てない時代。やっぱ公衆電話でしょー。
そういえば最近、公衆電話みなくなったねー・・・。
いっちゃんに電話する・・・。
いっちゃんにはあらかじめ、高校で補修をくらってしまって、学校に通っている、と話していた。冷静に考えれば高校に居ながらそんなに長電話できるものではないが、平気で1時間くらい話し込んでいた。
その時チャイムがなり、アナウンスが流れる。
「キーンコーン・・・・ただいまから講習がどうのこうの・・・・」
俺はまずい!ばれる!と危機を感じたがいっちゃんはそれが高校のチャイムと思い込んでいたみたいだ。
矛盾だらけの技ではあったが、無事ばれずに暇をつぶすことに成功。
いっちゃん・・・
君の偏差値に乾杯。
そうこうだらだらと教習所生活は続くのだが、特に面白いこともなにも無いので書いてもつまらんだろう。
しいて話せば、最後卒業検定。
俺が17番だったかな・・・
その時は検定車両が数台あり、ヘルメットが色分けされており、それにより乗る車両が違う。
簡単に言えば、コースの中を数台のバイクが走っているわけだ。勿論、試験管は1台に付き一人着いている。
俺の色は青色。
青の何番だったか忘れたが、俺の前のやつがバイクに乗り込んだので(試験開始)おれも出発点でそいつの帰りを待つことにした。試験はだいたい5〜10分程度で終わる。
前のやつが過程をほとんどこなし、最後の外周走行〜急制動に移ろうとしていた。
そこでとんでもないことが起こった。
急制動とは、決められた速度で、決められた場所からブレーキングして、決められた距離内で止まらなければいけないという結構難しい課題である。
中型免許(当時)の場合はたしか、速度を30キロに保たなければいけなかったはずである。そこの教習所は結構せまく、40キロも出そうものなら怖くて仕方ないような所である。そこで、30キロを出すのは初心者にとっては難題である。
俺の前のやつは、最後30キロを出すために無茶してコーナー中にアクセルを開けたらしい・・・。コーナーを曲がりきれずに、そのまま壁に突っ込んでいった・・・。
セナを思い出させるアクシデントである。
勿論そいつは検定中止。不合格であるが、こまったのは俺である。
俺の前のやつが華々しく散っていった。しかし俺はそいつの怨念たっぷりのマシンとヘルメットを受け取るハメになってしまったのだ。
当然順番がそうだからわかってはいたのだが・・・・
せめてバイクはクラッシュしたんだから違うのに変えてほしかった・・・
試験管がちょっと触って、問題なし!と決め付けてしまったのだ。霊感が強い試験管なら怨念が憑いている、交換しよう。と言い切ってもいいぐらいのしなものなのに・・・
(ちなみに俺の前の人は死んでません。ちょっと痛々しい怪我をしたくらいです)
やむをえず、俺はしぶしぶ血まみれのメット(俺にはそう見えた)を被りフレームの折れ曲がったバイクに乗り込み(俺にはそう見えた)明日に向かって走り出した。
まぁ結果は問題なく合格だったんだけどねー
合格しても喜んでいる時間は無かった。
あさってには学校の始業式が迫っていたのだ。
学科試験を受けて、免許を手に出来るチャンスは明日一日のみ。まさに一発勝負である。教習所で卒業証明書をもらい、帰路につく。
帰って明日の予習をしなければ・・・。
予習・・・・・
そんなもの小学校の時に1,2回した程度であろうか・・・
しかし好きなものには580%の力を発揮できる俺はものすごい勢いで勉強をした。
そして当日・・・あの時は雨が降っていた。
おかんに(おやじに?)京都府運転免許試験場まで車で送ってもらい受験手続を終えた。後は試験を待つのみである。
試験が開始される・・・
問題用紙を見ると、なんじゃこりゃ。
教習所で暇な時にやっていた問題集(5000問くらい)と同じような問題だらけではないか。
その瞬間、俺は合格を確信した。
試験時間50分(だったかな)を10分程度でおわらせ、一応じっくりと問題を見返し、全問確認をする。
まぁ、こういうことをするかどうかがこうへいと俺との差だとは思うが。
試験が終了し、合格発表を待つ。
原付の時と同じ電光掲示板だ。
「ただいまより・・・・・・」アナウンスが流れビーという音と共に合格者の番号が表示された。
俺の番号が光っている。合格である。
その足で免許発行手続きをしに窓口へ向かうが、なんとそこでとんでもないことを聞かされてしまった。
未成年者は取得時に講習を受けてもらいますのでどこどこに行ってください・・・
なんと、免許をもらっておしまいではなかったのだ。
そこから2時間弱、事故の現場だとかスピードがどうとか、暴走族がどうとか・・・・
ねむたーくなる映画を見せられて、教官のあたたかーいお話をたっぷり聞かされて免許を渡された。
時計を見る。うげ、もう4時半やん・・・。
とりあえず、今日は木曜日だ。
木曜と言えばこうへいが休みの日である。休みの日はほっておいてもいっちゃんの家に来ているはずなので、いっちゃんとこうへい、ダブルで驚かしてやれるではないか。
どうやったら強烈なインパクトを与えることが出来るか、ずっとシミュレーションしながらいっちゃんに電話をした。
しかし、ここで俺の計算にズレが生じる。
なんと、めずらしくこうへいが来ていないと言う・・・
俺が計算した、いっちゃんとこうへいがだべっている所に突然現れ、ロッキーのテーマと共に免許所を投げつけるという作戦が出来ないではないか。
しかもそのままこうへいのバイクを奪い、公道デビューと行く事も出来ないではないか。いかん、これはいかん。
雨振る中、試験場前の公衆電話でおれは悩んだ・・・
そうしている間にバスが現れ、俺はとりあえず家に向かった。
たまにこうへいは夕方とか夜がけにいっちゃんの家に現れる。
おれはそれをじっくり家で待ちこうへいがいっちゃんの家に現れたころを見計らってロッキー作戦に出る準備をした。
日が暮れてもう夜になろうとしていた。
そろそろか、おれはいっちゃんの家に向かう。勿論できたての免許をポケットに忍ばせていた。
いっちゃんとこうへいは驚愕し顔がS字になるであろう(いちいたから ばいくな話から引用)なぜなら、奴らは俺が教習所に行っていたとは全く知らないどころか学校に補習で行かされていると思い込んでいるのである。
いっちゃんの家に到着。
が、しかし、こうへいのバイクが停まっていない・・・
完全に俺の作戦は打ち砕かれた・・・。
しばらくいっちゃんと話しながら時間をつぶしていたが、痺れを切らした俺はこうへいに電話してみる・・・
何度もいうが、当時携帯なんてないのでこうへいの自宅に電話する。
すると、こうへいが居たのは居たが・・・
元気が無い。
何でけーへんねん?と俺が突っ込むと・・・
弱々しい声で・・・
「タクシーと事故った・・・・・・」
うげ。
俺の1週間考えに考えた作戦はココに眠る・・・・
<予告>
免許を取ったがバイクが買えない俺が
こうへいのRFを駆ってついに公道を走り出す。
どきどきはらはらのスペクタクルロマンシングヤード
次回、第四話 走れ!RF! こうご期待!