ピュイイィィィ・・・・・・。
青空に向かって口笛を吹いた。
空に吸い込まれていく響き。
息を思い切り吸い込む。
もう一度。
ピュイィ、ピュイイィィィ・・・・・・。
できるだけ長く、できるだけ遠くに。


この空と風の結ぶどこかに、あの人がいる。
もう一度会ったら、剣を交えるしかない人。
それでも思い出す、会いたいと願う、あの人がいる。

知らないままなら良かった。
仇として憎んでいられた。
なのに、あんな風に近くにいたから。
笑う声を聞き、怒った顔を見た。
一人で悩み苦しむ姿にも。
白い鬼人と恐れたあの人が、人として生きている姿を見てしまった。
素顔を。
あの綺麗な銀を、見てしまったから。


   『カラヤの曲なのか?』
    ――うん。戦士を送る歌。
   『清々しくて、気持ちがいい。』
    ――だから俺も好きなんだ。
   『私は不器用だから吹けないんだ。上手いな、・・・ヒューゴ。』
    ――名前を呼ぶ時、まだ躊躇うんだね。俺も、だけど。
   『・・・邪魔して悪かった。』
    ――邪魔なんかじゃ、なかったんだよ。


背中の下で柔らかい毛皮が動いた。
「キュイィ?」
「なんでもないよ、フーバー。」
覗き込むフーバーの嘴を撫でてやる。
気持ちよさそうに目をつぶって、フーバーはまた草の上に顔を伏せた。
寝そべった草の上。
目の前に広がる、青。

雲ひとつない澄んだ空。
青い蒼い風の匂い。
ここが俺の生きる場所。
ここに、あの人はいない。


ピュイィ、ピュイイィィィ・・・・・・。
泣きたくなるから口笛を吹く。
できるだけ長く、できるだけ遠くに。
音は、空に吸い込まれて、消えた。






戻。



戦いが終わった後。
綺麗な青空と草原、フーバーを枕に口笛を吹いているヒューゴ。
一応、「あの人」はクリスです。突然ヒュークリ風味が書きたくなりました。