主 題 「自立生活センター新発田での活動報告」
副 題 〜 はじめなければ変わらない 〜
所 属 自立生活センター新発田
役職名 代表
氏 名 高木浩久

・はじめに
 身体障害者の領域での実践報告と言う原稿依頼でしたが、私たちはできるだけ障害種別を問わずに利用してもらおうと考えていますので、内容に御不満を持たれる方もあると思いますがお許し下さい。また、誤字脱字をお許しください。
・地域のたまり場として
 地域に住む障害者の「たまり場」として1999年11月から自立生活センター新発田の活動をはじめました。障害を持つ人が、職業もなく、やることもなく、家で1日を過ごすことはとても苦痛です。私がそうでした。将来への夢や希望があってもどうすることもできません。人は社会的な動物なので人とのつながりが必要です。しかし、世間のなにげない視線が気になって外出に抵抗のある人がいます。同じ課題がある人ばかりであればその抵抗は小さくなります。また、物理的に外出がしにくい人もいます。
 開設の目的は、@障害のある人やボランティアが集まるたまり場として。A地域の中で地域の人に障害者のことを知ってもらうため。B障害者の相談援助の場として開設しています。地域の中にとけ込むことを目指して、予算の都合もあり知り合いに紹介していただいた商店街の小さな空き店鋪を借りました。3年を過ぎた今は、事務所の前を通り過ぎる町内会の方が挨拶して下さったりします。
 開設当初は、週に2回午後だけで仲間もなく私ひとり事務所を開けているだけでした。知り合いや、介助者、自立生活センター新潟の会員さんに声をかけ、チラシを印刷し、配付したりしました。新潟のみなさんの御協力で「自立生活セミナー」を開いてもらうと言うことで新聞にも取り上げてもらったりしました。
 はじめる前に考えていたことは「何も自分でやらずに現状を批判しているのと、何かやってみて失敗するのとどちらが良いのか?」でした。私は優柔不断なのでとても迷いました。現状が嫌だしいくら考えても答えが出てこないので、「やってみて駄目ならば止めよう」とはじめました。また「新発田市は8万人の人口がある。すぐに仲間も援助者も出てくるだろう」という根拠のない考えもありました。
 はじめて3ヶ月が過ぎても新しい仲間は増えません。気持ちはあせりました。お金は持ち出しなので何とかしたかったですし、「仲間が増えないのはここが必要ないのか?」とも考えました。(今も存在意義はあるのかどうか悩んでいます。)そうした日が続いてくると「集まらなければ仕方がない、じわじわゆっくりと仲間を増やしていけば良い」と開き直りました。会社だって1年や2年は赤字が続く、3年目が黒字になればいいだろうと。今も実質的には赤字です。
 いろいろなことをやりたいができません。仲間と援助者は増えたり減ったりです。2002年12月では週に5日午前10時〜午後3時まで開設しています。会員は、正会員と賛助会員をあわせて32人です。どう評価して良いのやら。困ることは、お金、人、環境です。お金はあまり期待していないから気にならないです。人は期待してしまうから、期待と現実が違うと悩んでしまいます。ここは自立生活センターであり、単なるしんぼく団体ではありません。楽しくないこともやらなければならないです。選択には責任がともないます。それぞれがそれぞれの役割を果たさなければ効果が出てきません。人任せのまま後からついていくだけではどうなのだろう?少しでもできることはやるべきだろう。環境は、2002年度日本財団の助成金をいただいてトイレのバリアフリー化を行いました。要望がありながらお金がなくてできませんでしたが、やっと車椅子でも利用できるようになりました。次は送迎サービスをはじめることが求められています。他の不便なところはこれからの課題です。
 先日、指摘を受けました「集まってくる人の目的は十人十色だ」と確かにそうです。それぞれの目的を明確にし、援助することが求められます。こうした中で、人に期待してもがっかりさせられるだけなので、自分が壊れない程度にやって、共感してくれる人がひとりでもいれば良いと思うようになりました。こうなったら持久戦なので「成功するまで続ける」そうすれば失敗しません。
・パソコン教室の開催
 世間で「IT」という言葉が聞かれるようになり、障害のある人も興味を持ちます。障害があると一般向けのIT講習が受けられないことがありました。特殊なソフトや機器が必要だったり、講師が障害の知識が必要だと考えたり、遠慮して一般向けの講習に申し込まない障害者もいました。情報機器はうまく使うことによって障害を補うことができます。全国的には仕事につなげられている人もいます。
 障害者がパソコンを使えるようになるように新発田市と相談してパソコン講習を開催していただきました。気軽に参加申し込みをしてもらえるように講習の名前は「障害のある超初心者のためのパソコン教室」としました。募集定員は5人です。講師は、自立生活センタ−新発田の障害のあるスタッフです。全10回で毎月第2第4水曜日の午後1時半〜3時半までを前期と後期で2回行っています。会場は、新発田市総合健康福祉センター(いきいき館)2階の「ふれあいルーム」で行っています。駐車場、障害者トイレ、エレベーターがあるので身体障害者でも利用できます。講習のために新発田市ではボランティアを募集しました。5、6人のボランティアが手伝ってくださいます。そのため、講師とボランティアとが受講者にマンツーマンで教えられるようにしています。障害者でも使えるようにひとつのボタンで操作するためのボタンとソフトを用意しました。画面を拡大するものや文字を読み上げるものも用意しました。はじまってみると特別なものを必要とする人は1人だけでした。重度の身体障害者の参加は少ないです。また、視覚障害の方は数年前から違う場所で、週に1回、音声ワープロのサークルに参加しているので、今のところこちらへの申し込みはありません。
 内容は、自己紹介、名称説明、電源の入れ方切り方、マウス操作、お絵書き、保存の仕方、文字入力、ワープロソフトの使い方等です。本当に簡単な事柄です。
 注意したことは、進み方にこだわらずにゆっくりゆっくり受講者のペースにあわせました。外出する切っ掛けにしてもらえるように楽しい雰囲気になるように心掛けました。知らないものどうしですので声をかけるようにしました。しかし、私は気が短くて同じことを何度も聞かれるとイライラして自己嫌悪に陥っていました。私以外の講師やボランティアのお陰で続けることができています。
 また、パソコン教室が終了しても興味を持った人がさらに続けるためにパソコンクラブ(毎月第1第3水曜日の午前10時〜12時まで)が自主的に生まれました。会場は同じ場所です。今も続いています。2002年はパソコンクラブの方達と自立生活センタ−新発田の会員とが合同で忘年会を開催しました。3回のパソコン教室が終了してパソコンクラブの人数が増えてきました。上達してパソコン教室を手伝ってくださる方もいます。このところパソコンクラブ参加者の興味と目的がさまざまになってきたので、希望に答えることができなくなってきました。そろそろ次の段階を検討する時期にきています。そのため、パソコンボランティアを募集をしていますので、興味を持たれた方は遊びにお出でください。飛び入り大歓迎です。
・障害者の講演会の開催
 障害者といっても、多種多様の人がいます。障害者が地域でどのように生活しているのかを違う障害の人、同じ障害の人、市民に知ってもらうことで、障害のことを想像してもらったり、工夫していることを生活に利用してもらったりすることで地域での生活が変わるきっかけになればということで、新発田市に開催していただきました。2001年度は9回、2002年度は5回行われました。障害は、脊髄損傷、視覚障害、盲導犬使用者、聴覚障害、リウマチ、脳性麻痺、知的障害、精神障害などでした。児童、生徒、学生にも参加していただけるように、第4土曜日、または、第4日曜日の午後1時〜3時半くらいまでに行われました。残念ながら期待ははずれてしまいました。学校の授業で福祉の勉強はしても自主的に学ぶ人はまだ少なかったようです。話は1時間くらいで、休憩を挟んで気軽に質問ができるように30分間くらい茶話会というかたちで行われました。障害者は同じ障害のある人の話には来られましたが、違う障害にはあまり興味も感心もないようで参加は少なかったです。同じ障害の人の参加はありました。市民の参加は興味と宣伝でばらつきがありましたが、今まで障害者の生活のことを知らなくてショックを受けていた人もいました。毎回、20人くらいから40人くらいの参加者でした。私は責任上、すべてに参加しましたが大変勉強になりました。これだけのことを学べる機会はないのにもったいないです。
 活動をやっていて感じることは、市民の理解を広げる活動を続けていかなければならないこと。障害者どうしがお互いの障害のことを知らないために、障害者どうしが協力できないこと、そのために制度が進歩しません。障害者どうしが差別しあっています。意見交換をしてお互いの理解を深めて協力できるところは協力していかなければならないと感じます。そのため、今後もひとりづつ仲間を増やしていきます。新発田市では、2001年度末より、障害者どうしの理解を深めるために障害者団体の代表が集まって意見交換していくという取り組みがはじまりました。効果が出るか出ないかはこれからの活動次第です。
・福祉マップの製作
 心と身体は一体のものです。身体的な障害が精神的な障害になることがあります。物理的な障壁がなくなると精神的に楽になることがあります。
 バリアフリーという言葉が広がり、当事者の長い活動が少しだけ社会の理解を広め、超高齢社会で「自分にも関係があるのではないか?」と考える人も増えてきて、福祉のまちづくりが聞かれるようになりました。新しい建築物の多くは障害のある人にも配慮されるようになってきました。一方、無知な建築家のこだわりでそうでないものもあります。
 通院するだけなど外出頻度が少なかったり、あきらめている障害者にとって口コミの情報ほど頼りになるものはありません。誰かが実際に利用して良かったものには、不安はあっても「行ってみようかなぁ?」と思うかもしれないです。この口コミの情報を集めてマップにまとめれば、これを見て外出してみる方が増えるかもしれないと期待をしました。そこで社会福祉・医療事業団から助成金をいただいて2001年度に、障害者とボランティアが調査、編集、印刷をして1000部を無料で配付しました。予想よりも好評で1ヶ月くらいですべてを配り終えました。障害者団体や学校でも利用して下さいました。見ても楽しく外出したくなるように、カラフルで写真を沢山入れて作りました。実際に利用して外出されている方がいるかどうかはわかりません。
 反省点は、調査員を確保することがむずかしかったことです。そのため、手分けしてより多くの施設を調査するように努力しました。また、口コミ情報もあまり多く集められませんでした。調査の依頼をしても市民の中で理解が得られないこともあり苦労しました。関心のない人には迷惑なようで、それが社会だと実感させられました。また、編集を行える人も少なく仕事が一部に片寄ってしまいました。一連の作業を通して苦労したこと勉強になったことが多かったです。少しでも手伝ってくださる方がいてつながりができました。最後まで自分達でやり遂げられて良かったです。また、調査に行った商店が簡易のスロープを設置して下さったりもしました。伝えることの大切さが良くわかります。
 街が変わるまで外出しないよりも、外出して「必要であるので変えて下さい」と伝えていくことが必要です。黙って待っていてはいつまでも変わりません。また、1人が頑張ったところで大して効果はありません。小さなことでも大勢の人が行うことによって変化は加速していきます。障害者は、消費者です。一般的なサービスの消費者であり、福祉サービスの消費者です。そのことを意識するべきです。みんなで街に出かけましょう。
・ピア・カウンセリング集中講座
 障害者のピア・カウンセリング集中講座を日本財団の助成を受けて、2002年8月3日〜5日まで行いました。私自身は受けたことがないので内容についてはまったく知りませんが、受講した人の様子を見ると、ほぼ確実に変化が見られるので以前から開催したかったものです。日程は、3日は午後〜夕方まで、4日は丸1日、5日は午前中で終了しました。会場は、新発田市総合健康福祉センタ−(いきいき館)です。参加費は3000円で、参加者は8名でした。ピア・カウンセラーは、自立生活センタ−新潟から2名を依頼して行いました。
 聴覚障害のある参加者がいましたので、「情報保障をお願いします」ということで手話通訳者と要約筆記者を依頼しました。あらかじめ予算を配分していなかったので十分なお礼ができない中、無理なお願いを受け入れていただいたことに感謝しております。真夏の暑い中、参加者、ピア・カウンセラー、通訳者、介助者、ガイドヘルパーのみなさんの御協力で無事に終了いたしました。
 参加者からは、「長期講座を受講したい」という声が出ていました。連絡先も交換されたようで、参加者には一体感が生まれていたとのことです。通訳など補助のみなさんはそこに入ることができずに、終了した充実感はあるが何かポッカリと満たされないものがあったようです。聴覚障害がある場合には、手話通訳も要約筆記も完璧ではなく内容を理解するためにはどちらも必要であるということがわかりました。
 ピア・カウンセリングを受けて、ピア・カウンセラーを目標の一つに加えていただけると幸いです。手の届きそうな目標があると人間は努力することがあります。生活のことを知り、自分に置き換えて考える。すると変わるかも知れません。きっかけになれば良いのですが。
・予算
 運営費は、会費、寄付金、フリーマーケット収入、製作物販売収入、補助金、財団の事業助成金等です。2001年度は社会福祉・医療事業団から200万円の助成金をいただきました。2002年度は日本財団から100万円の助成金をいただきました。財団の事業助成金がないと採算が望める様な事業はほとんどないので活動が広がりません。助成金が助成されないと何もできないという不安定な運営です。今必要であり私たちでも出来そうな事業をさまざまな財団に申し込んでは落選しています。自分達で何が必要な事業なのかを考えながら来年度の計画を建てられるようになることが理想ですが、まだそこまでいっていません。活動しているとお金がなくてできないことが沢山あります。だからといって、お金があるときでもまだ十分に有効な使い方ができているかは疑問が残ります。また、手段と目的があやふやになっていく危険性があります。常に当事者の目線で、「何が必要か」「何ができるか」を問い続けていかなければなりません。
・課題
 私が出会った障害者の多くは家族と暮らしています。障害年金の管理はしていません。親からお小遣いをもらっているだけです。これではいつまでたっても金銭管理ができないでしょう。働こうと思っても実行できないでしょう。実は家族が搾取しているのです。みなさんもお気付きでしょう。養護学校卒の障害者は社会経験がありません。親と先生に守られていて決定ができません。それは守っていると言えるのでしょうか?逆だと思います。親の役割、存在意義を守るために決定できずに親の管理下にいるようにしているだけです。養護学校の先生は自分の仕事がなくならないように児童・生徒を守ります。しかし、社会に出たときに本当に苦労するのは障害当事者です。結局は「親なき後」の解決には逆行しています。社会性を持つ=責任の意味を知っている障害者は、親や養護学校から離れて世間にさらされた障害者だけです。これは誰にも否定できない事実です。
 障害者が、自ら福祉サービスを利用することが下手です。障害が軽く利用する必要がなかったり、親で足りているので利用しなかったりさまざまです。しかし、年令が上がれば障害は重度化することが多いです。家族の介護力が弱くなることも多いです。そうなる前に、使い方になれておけば、もしもの時に慌てなくてもよいです。しかし、問題に直面しないと問題を直視できないのが人間です。備えをせずに不安ばかりが積もっていきます。本人が将来のことを真剣に具体的に考えることです。家族が将来について真剣に具体的に考えることです。漠然としているままでは現実味がなくて問題を先送りにするだけです。また、福祉サービスも待っているだけでは増えません。利用することがさらなるサービスを拡充させます。行動なくして変化はありません。
 利用の導入は、無理のないペースで徐々に福祉サービスを利用すればよいです。介助者との人間関係を形成し、介助者の使い方がわかっていきます。利用する前の不安は、実際に利用することで変化します。うまくいかないことが多々あります。使って不便なところを伝えることで改善されていきます。介護する側も徐々に本人が何を求めているのか、どういう手助けが好みか、どういう人間かわかっていきます。関わる人間を増やすことでひとりひとりの負担が減ります。しかし、ここで注意しなければいけないことが、負担が減っても責任は減らないということです。本人を含めた関わるすべての人が責任を持ちます。それがなければ生活の質を保つことはできません。また、慣れた人間が変わるということは大きなストレスです。できる限り問題が起こらない限り相性のあう介助者は変えるべきではありません。
 活動の輪を広げるという課題もあります。基礎的な収入は会費ですので会員を増やさなければなりません。そのために自立生活センター新発田のことを知ってもらう。活動、ホームページ、チラシなどでお知らせしていますが、むずかしさを痛感しています。何が効果的なのか悩んでいます。活動を続け、きっかけを与え続けることが知ってもらい仲間を増やすことにつながると信じて活動しています。役割分担しながら、無理のないように、そして、人を育てることが課題です。
 明らかなことは、何が大切なことか?実践することです。研究していても本質は見えません。知っているならば、それぞれの責任を果たさなければなりません。近道はわかりませんが、当事者の自立が一番の近道です。
・おわびとお願い
 あまりにも文章技術が幼いために内容の薄い報告になったことをおわび申し上げます。起承転結もなく、思うがままにキーボードを打ちました。
 「自立生活センター新発田」では、仲間とボランティアを探しています。電話とファックスは0254ー23ー1599まで、あなたの電話を待っています。あわせて会員も募集しています。 URL http://www002.upp.so-net.ne.jp/cil-shibata/