暗い真夜中などに突然あらわれては、人の髪の毛をばっさりと切ってしまうおばけ。
☆ 莱莉垣桜文 附注
一鵬斎芳藤『髪切の奇談』曰
「諺に野暮と化物なしといへども夫[そ]もまた奇怪珍説なきにしもあらず頃は四月廿日の事なりしが所は番町辺[へん]のさる御屋敷に年ころ奉公せし女中或[ある]夜半の頃 寝所[ねところ]よりおきて厠[かわや]に行しに何者共しらず真黒[まっくろ]なるもの突然と来りて頭[かしら]に当ると覚ゆるが否[いな]俄[にわか]に倒れて人事を知らず此物音に驚きて人々集まり介抱せしかば漸[やや]正気に成たり然るに髻[もとどり]は落て 二 三間はなれたる処にあり其真黒なる物は猫の如くにして恰[あたか]も天鵞絨[びろうど]のごとくなりしとぞ是は正しき書に出たるを爰[ここ]にあらはすもの也」
和漢百魅缶│2005.11.06
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